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【映画と仕事 vol.15】ラブシーンに臨む俳優の尊厳を守る 日本初の“インティマシー・コーディネーター”浅田智穂が現場にいることの意味

Netflixの新ドラマ「金魚妻」において性的な描写や激しい露出を伴うシーンにおいて インティマシー・コーディネーターとして、俳優陣をケアする役割を担った浅田智穂。日本でも少しずつ認知されてきたインティマシー・コーディネーターの役割とは?

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今後の課題・改善点「いかに日本のやり方に合わせていくか」


――『彼女』「金魚妻」「サンクチュアリ-聖域-」とインティマシー・コーディネーターとしての活動する中で、浅田さんの中でインティマシー・コーディネーターの仕事について考えが変わった部分などはありましたか? また日本において、インティマシー・コーディネーターの重要性がより認識されるために必要なことは何だと思いますか?

いま、公式にインティマシー・コーディネーターは私を含めて2人しかいませんので、インティマシー・コーディネーターという職業の向上や成長という意味では、私が成長するしかないという状況なのですが…(笑)。

そもそもアメリカにおけるインティマシー・コーディネーターは、俳優組合という後ろ盾があって、そのルールを遵守して仕事をすればよいのですが、日本にはルールやガイドラインがありません。なので、私のほうから「こうしてください」とお願いすることはできても、相手がそれを聞かなくてはいけないというルールも罰則もないんです。

私自身、アメリカ式のトレーニングを受けてインティマシー・コーディネーターになったので、1本目の『彼女』のときは、アメリカ式のルールの下でインティマシー・コーディネーターをやらなければいけないという意識が強かったです。日本とアメリカでは映画づくりの慣習などでさまざまな違いがあるということは理解しつつも、どこまで日本の現場に合わせるべきなのか? ということがわかりませんでした。

その後、今回の「金魚妻」や「サンクチュアリ-聖域-」、他にNetflix以外の作品でもこの仕事をさせていただくようになっていますが「いかに日本のやり方に合わせていくか?」というのはすごく大事な部分だと感じています。とはいえ、柔軟性をもって日本の現場に合わせたいと思いつつも、柔軟過ぎて個々の現場によってあまりにも違いが出てきてしまってはいけないと思っています。「あの現場ではOKだったのに、この現場ではNGってどういうことなんだ?」となっても困ってしまうので、柔軟に現場に合わせつつ、やはり最も守らなくてはならないのは、俳優の尊厳であるという、そのバランスが大事だと思います。

確実に理解者は増えていますし、加えてオーディエンスのみなさんもインティマシー・コーディネーターの存在を知り始めたこともあって、「現場に入っていると安心する」という声を実際に耳にすることも多いです。それは嬉しい変化ですね。

――やはりガイドライン、共通のルールなどを策定することが必要となってくるのでしょうか?

そうですね。現場によって環境が違うので難しいですが、個人的にはどの現場においても「俳優の同意を必ず得ること。そこに強制が絶対にないこと」、「必ず前貼りをすること。それは衛生面や安全性も考えてのことで『着けません』というのは認めない」、そして「クローズドセットと呼ぶ最少人数で撮影するスタイル」の3点を現場スタッフに守っていただくよう心がけています。

この3つの点に関しては、既にきちんと機能し、守られていると言えますが、守るべきルールはそれだけではないので、そこは今後、改善を重ねていかなくてはいけないと思っています。

私自身、インティマシー・コーディネーターとして関わった作品はまだ多くはなく、いまの私の経験値では「こういうルールでやっていきましょう」と決められるところにまで到達していませんので、今後、インティマシー・コーディネーターが入ったことによって作品がより良いものになったという事実を積み重ねて、インティマシー・コーディネーターの需要が増えていくという流れになっていけばいいなと思っていますが、現状は自分が経験値を増やしているというところですね。

――最後に映画業界を志す人たちにメッセージやアドバイスをお願いします。

インティマシー・コーディネーターをする上で、やはり一番大切なのはスタッフや俳優とのコミュニケーションです。いかにきちんと話し合えて、お互いを理解できるか? というのが大事だと思っています。いろんな人と会って、いろんな状況で、いろんな話をするという経験が活きてくると思います。

もし、私が20代だったら、今のこの仕事はおそらくできていなかったんじゃないかと思います。俳優と話す時も表面的な話だけではなく、しっかりといろんなことを話し、こちらも相手が言うことを受け止めなくてはいけません。その土台をつくるためには、いろんな人と会い、いろんな経験を積むことが大事だなと思います。

それから、自分がこのような職業につくとは想像していませんでしたが、今までの経験とご縁でインティマシー・コーディネーターのお話をいただきました。振り返ってみると、本当に今までの経験すべてが活かせていると思います。その時その時に興味があることに全力投球した経験は、何かにつながるのではないかと思います。

《黒豆直樹》

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