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『万引き家族』と『ベイビー・ブローカー』は「つながっている」是枝監督ら、カンヌで記者会見

『ベイビー・ブローカー』の是枝監督やソン・ガンホらが、第75回カンヌ国際映画祭にてフォトコールと記者会見に参加。記者会見では鋭い質問が飛び交った

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『ベイビー・ブローカー』フォトコール (C)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
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  • 『ベイビー・ブローカー』記者会見(C)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED
  • 『ベイビー・ブローカー』記者会見(C)2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

是枝裕和監督ソン・ガンホカン・ドンウォンイ・ジウン(IU)イ・ジュヨンら韓国を代表する俳優たちと組み、作りあげた『ベイビー・ブローカー』。第75回カンヌ国際映画祭にて昨日の公式上映に続き、是枝監督らはフォトコールと記者会見に参加。海外のプレスからは、『そして父になる』『万引き家族』に続く3部作となる可能性について、物語のきっかけとなる「赤ちゃんポスト」や、初の母親役を演じたイ・ジウン(IU)らの役へのアプローチなどに鋭い質問が飛び交った。


>>『ベイビー・ブローカー』あらすじ&キャストはこちらから

公式上映の正装とはうって変わってカジュアルな装いでフォトコールに登場した是枝監督。白い爽やかなジャケットに身を包んだソン・ガンホと、涼しげで個性的なハーフパンツスーツでラフに決めたカン・ドンウォン、タイトな白いミニスカートのスーツ姿のイ・ジウン。

さらにクールな白いパンツスーツのイ・ジュヨンも揃って、世界から集まったスチールカメラマンたちの前で笑顔で撮影に応じた。

その後、会見場へ向かった5人。パルムドールを受賞した2018年の『万引き家族』以来4年ぶり参加となる是枝監督と、2020年パルムドールに続いて米アカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』のソン・ガンホの主演ということもあり、場内には多くのメディアが詰めかけ、作品への注目度が伺える熱気に包まれた会見となった。

なお、第75回カンヌ国際映画祭授賞式は、現地時間5月28日(土)20時30分ごろ、日本時間5月29日AM3時30分ごろから予定されている。


是枝監督「“家族”というものを捉えなおしたい」


Q:(監督へ)キャラクターたちはみな孤独です。それでいて親密なグループを形成する家族の話ですが、今回もまた自分たちが選んだ家族の物語を描いていますが、どうしてそういう作品にしたのですか?

監督:今回、車に乗り込む者たちの疑似家族の旅を描こうとおもって書き始めたプロットで、そこに乗り合わせる人たちが、あらかじめ色々な形で、一般的に考えられる普通の家族、親子という者から排除されている、切り離されて生きてきたという人たちが、ほんの短い間同じ車に乗るという話にしたいなと思って書きました。

そのことによって、わたしたちが考えている、考えて捉えている“家族”というものを捉えなおしたいという気持ちもありましたし、彼らが一瞬だけ手にすることで何かひとつだけいいことをする、すごく小さな悪人だったり、悪意をもって旅に同行した人たちが、ひとついいことをする、そんな物語を紡いでみたいと思って作った映画です。

Q:(監督へ)ブローカーたちが犯していることは重罪ですが、視点はとてもヒューマニズムであったり、彼らに対する視線が優しい。だから少し混乱しました。どういう風にどうしてこういうキャラクターたちを生んだのでしょうか?

監督:描かれるモチーフが深刻であればあるほど、ディティールの描写にはある種の軽やかさやおかしみのようなもの、コメディではないですが、人間が本来持っている存在のおかしみみたいなものを表現したいと思い、それを表現するにはソン・ガンホさんという役者さんは一番ピッタリだなと思いました。

Q:(役者さんへ)4名とも素晴らしかったです。是枝監督と他の韓国監督たちとの一番大きな差はなんですか?教えてください。

ソン・ガンホ:是枝監督と韓国の監督との違いは、是枝監督は食が大好きなところです。美食を好み、食べることが好きで韓国料理が好きです。他の韓国の監督との大きな違いでした。

カン・ドンウォン:監督と仕事して、他の監督はわからないですが、現場では本当にそこに一緒にいてくれた。それは本当に素晴らしかったです。役者と共にいてくださる。そして感情をディティールにわたって捉えて下さる。

イ・ジウン:私にとっては監督と違うのはまず同じ言語を話しません。なので努力をします。ちょっとしたディティールも見逃さないように。言語のバリアがあるから、より集中しました。他の参加した映画に比べて面白い体験でした。

イ・ジュヨン:監督との仕事はすばらしいもので、もちろん通訳は入れましたけども、それ以外はそんなに大きな差は感じませんでした。
国籍が違うというだけで、非常に監督はリラックスしてましたし、私たちといても、そして現場の雰囲気もリラックスしたものを作ってくださったので撮影も快適でした。

Q:(監督へ)釜山は映画人にとってとても大切な場所だと思いますが、その釜山を舞台にした理由を教えてください。

監督:釜山のロケーションについては、映画祭には度々参加しているのですが、いつも食べるのに一生けん命で、撮影を前提に街を見ていなかったというのもありまして、今回ロケハンで結構色んな場所を候補として回らせていただきました。その中でやはりあの町は坂道が多い。山が迫っている。その立地の高低差みたいなものを活かした場所を、撮影のホン・ギョンピョさんと一緒に探して、結果的にああいう場所を選んで撮影しました。とても魅力的な街で、ソウルとの違いもワンカットで出るという、とても面白い撮影でした。

Q:(監督へ)最も難しかった撮影シーンは? それはなぜ?

監督:基本的に撮影は、製作部、撮影部が本当に優秀で、スムーズに進みました。車のロケーションも合成を使わずに、基本的には全部実際の車を走らせて撮るというやり方をしたのですが、それにも関わらずとても順調だったんですけど…一番難しかったのは観覧車かな。

観覧車が狭くてですね、僕自身は乗れないので、僕はさっきドンウォンさんがおっしゃってくださったように、なるべく役者の側でお芝居をみて、ジャッジをしたいと思っていたんですけれども、あのシーンに限っては僕は下で待っていて、観覧車が上に行くにつれて音が飛ばなくなるので、どんなやりとりがあったのかっていうのは戻ってこないと判断ができないというような状況もあったりして、そこが一番不安でしたし、撮れたものに一番感動したのもあのシーンでした。

Q:(ソン・ガンホさんへ)監督はパルムドールを2018年に受賞して、フランスで、そして韓国で撮影されてこられてました。監督のチャレンジをどう思われますか?

ソン・ガンホ:監督は素晴らしい作品を手掛けられてきた。例えば『真実』。フランス映画です。今もいろんな作品企画を手掛けられていることを知っています。監督は常に挑戦を受ける方で、そこに感銘をうけます。あるいは感服しています。この作品もそうです。最もワクワクさせる作品の一つです。日本と韓国では文化的な違いがある。そういうことがあっても私たちはそれを乗り越えて幸せに一緒に仕事をすることができましたし、そのことが逆にこの仕事を面白いものにしてくれました。


ソン・ガンホ「出会うまでは幸福ではなかった」キャラクターたちへの思い明かす


Q:(監督へ)監督はトリロジー三部作をこの作品で完成させているような感覚はありますか?『そして父になる』、『万引き家族』、この作品で終わらせている感覚はありますか?またフランスで映画を作りたいと思っていますか?

監督:繋がりがあるといえばそうかもしれない。
『そして父になる』を撮って、こういうインタビューに答えていると、女性は子どもを産むとみんな母親になれるけど、男性はなかなか実感が持てなくて、父親になるには何か階段をのぼっていかないとなれないんです、というような実感を話したときに、友人から批判をされまして。女性でも産んだ人たちがすぐに母になるわけではない。母性というものが生まれつき備わっているのだということ自体が、やはり男性からみた女性に対する偏見であるということを指摘されて、それはすごく反省しました。

そのことから、『万引き家族』の安藤サクラさんが演じた産まないんだけど母親になろうとする女性と、今回イ・ジウンさんが演じた産んだんだけれども、色んな事情で母になることを諦める女性という、その2人の女性像というのが、自分なりにそこの反省から生まれた2人の女性像という形で。これは本当に姉妹として描いているんですね。だから僕の中でも直線的に『そして父になる』からこの『万引き家族』と『ベイビー・ブローカー』はつながっております。

Q:(ソン・ガンホさん、カン・ドンウォンさん、イ・ジウンさんへ)素晴らしい演技でした。とても強烈なキャラを演じつつも、社会背景だったり、複雑な部分を理解させなければならなかったでしょうからどんな風に役に命を吹き込みましたか?

カン・ドンウォン:ドンスは孤児です。でも彼は赤ちゃんを売っている仲介役です。なので、リサーチでそういう孤児院とか環境で育った方にお話を伺いました。
その方々の内に痛みを感じ、それを映画のなかで表現しようとしました。ソヨン(イ・ジウン)と会うときに、彼の痛みは少し和らぎます。それを表現したいと思いました。

イ・ジウン:私にとって初めての母親役。しかも未婚の母でした。なのでスクリーンで表現するのに自分が実際経験したことがほとんどなく緊張しました。またベイビー・ボックスについてはそれが何であるかを知るのに調べなければいけませんでした。シングルマザーという役は慣れ親しんだものではなく、シングルマザーに対しても知識がなかったのでお話をしたり、いろんなインタビューやドキュメンタリーを見たりして、ある程度理解することができました。彼女たちが強いこと、でも社会が彼女たちを見下しているということ。この経験で私の彼女たちを見る目がかわりました。

ソン・ガンホ:同じですね。この映画のすべてのキャラクターはいままで人生で幸せを感じていない。幸福だった過去もないし、今も幸福ではない。出会うまでは幸福ではなかった。監督が描いたのは彼らの日常。それは普通の日常かもしれないが、同時にそこにある暴力性やその恐怖心、苦しみも描いている。それぞれの人生でそういったことが積み重なってきているわけです。そして客観的な距離のある形でこの世界がどんなに冷たいものか描きつつ、私たちの心を同時に溶かしてくる。僕らはみなキャラクターのアプローチは似たようなものがあったと思います。


ベイビー・ブローカーを追う刑事の視点が映画の縦軸に


Q:赤ちゃんとの撮影はどうでしたか? 絆ははぐくめましたか? キャラクターが赤ちゃんに対して想いを描くことでどう変化していくか、そのあたりはどうでしたか?

監督:母親役のイ・ジウンさんに似ているとか、そういうこととは一切関係なく、音に反応する子ということで選びました。
それは正しかったんじゃないかと思っていますが、撮影の現場で、ソン・ガンホさんが動くと目で追ったり、目の前にいる養父母役の女性の顔に触ったりすることが、もちろん僕の演出ではなく起きていました。彼が電車の中でずっとカン・ドンウォンさんの手をずっと握っていたりして、そういうことが多分大人のお芝居にも活きてきているのではないかと思います。最後、ホテルで(赤ちゃんを)売りに行こうとするサンヒョン(ソン・ガンホ)に語り掛けるように赤ちゃんが大きな声を出してソン・ガンホさんの顔をみるとか、もう二度とできないと思いますが、本当にこういうことが起きるんだなって思う奇跡的な瞬間が、映画の中にはたくさんありました。

ソン・ガンホ:今監督がおっしゃったように最後のシーンですよね。赤ちゃんが僕を見ていて、「ソンもういいんじゃない? テイク数、十分だと思うから撮影もうここでいいんじゃない?」、僕も撮影はここで良いと思ったからまるで赤ちゃんと会話しているような気がしておりました。

カン・ドンウォン:ソン・ガンホさんとは僕は共演もしていて仲がいい。イ・ジウンさんのことはよく知らなかったんです。映画の中でも2人は仲がいいわけではなかったのですが、ロードムービーのような映画ですからすこしずつ仲良くなっていかなければいかない。その友情が映画と共に育まれていかなければない。そして加えて赤ちゃんの存在があった。赤ちゃんがアイスブレイカーになってくれた。赤ちゃんをきっかけにいろんな話をすることができたので赤ちゃんきっかけで仲良くなれました。

イ・ジウン:赤ちゃんのリアクションが素晴らしくうまかったです。困ったことはなく、すごくかわいくて。劇中では母親としてふるまわなければいけなかったけど。
本当にかわいくて何の問題もなく、役を演じるにあたり大きな助けになりました。

Q、(イ・ジウンへ)自分の子どもを捨てるという役柄で一番の挑戦はなんでしたか?

イ・ジウン:母親役は初めてのことでした。以前は、奇妙な話ですが、母親役をやったら面白んじゃないかと思っていたら、オファーが来たんです。すごい偶然でした。今回の母親役を演じるにあたって最善を尽くそうと思っていました。よくある母親ではなく複雑な過去をもち、すこし影がある。複雑な母親。母性もあるけど劇中ではその母性を持っていないかのようにふるまわなければいけない。赤ちゃんのことを愛に満ちた目で見つつ、その気持ちを隠さなければいけなかったり。

Q、(監督へ)捨てられる赤ちゃんについてデリケートな形で語られた映画だと思いますか? ベイビー・ボックスはすばらしい発明だと思います。そういう状況の見方は変わりましたか?

監督:日本でも韓国でも、この「ベイビー・ボックス」というものへの評価というのは定まっておらず、賛否色々とあると思います。多くは、この物語の冒頭でぺ・ドゥナさんが演じたスジンが発する「捨てるなら、産むなよ」というひと言のような、母親に対するバッシングが多分大半を占めるんじゃないかと思います。

あえて、そのスジンのセリフから始めつつ、彼女の目線を通して、車の外から見ていたら単なる犯罪者の集まりである彼ら、そして売られていく赤ん坊を見る目線を、2時間の映画を通して色々なところから揺さぶっていきながら、スジンの中で彼女の言葉や、考え方、目線、母親に対する意見がどういう風に変わっていくのか、それが、映画の縦軸になるのだろうなと思いながらつくっていました。何か、僕が意見を表明するというよりは、映画をご覧になった皆さんがスジンと同じようにあの旅に同行しながら、スジンがそうしたように、それぞれの今までの価値観をちょっとだけ見終わった後にもう一度見つめ直していただけるような、そんな映画であれば良いなと思っています。

『ベイビー・ブローカー』は6月24日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国にて公開。


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《シネマカフェ編集部》

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