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ライムスター宇多丸が熱弁! 科学軽視の言説、フェイクニュースが蔓延する“いま”「CSI:ベガス」が描く“ファクト”の快感!

映画や海外ドラマについて自身のラジオ番組やエッセイでも精力的に発信しているライムスター宇多丸さん。今回、「CSI」シリーズの最新シーズン「CSI:ベガス」をHuluにて見てもらい 、その魅力についてたっぷりと語ってもらった。

海外ドラマ インタビュー
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ライムスター宇多丸が熱弁! 科学軽視の言説、フェイクニュースが蔓延する“いま”「CSI:ベガス」が描く“ファクト”の快感!
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  • 「CSI:ベガス」 ©2022 CBS Broadcasting, Inc. All Rights Reserved.
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「ビギナーほど、海外ドラマは最新シーズンから見るべき!」――。ライムスター宇多丸さんは、そう語る。

世界中で愛され、いくつものシーズンを重ねた人気の海外ドラマのタイトルを前に「これだけ支持されてるのだから、面白いに違いない」と思いつつ、エピソードの多さがハードルとなってなかなか一歩目を踏み出せないという人も多いのでは?

そんな複雑な思いを抱える海外ドラマファンの心を軽くしてくれる“金言”のような冒頭の言葉だが、その真意とは――?

今回、海外ドラマ好きの著名人に、これまでタイトルは知りつつもきちんと見ていなかったシリーズに触れてもらい、“ビギナー”ならではの視点でシリーズの魅力や面白さを語ってもらうインタビューを敢行!

宇多丸さんといえば、映画や海外ドラマについて自身のラジオ番組やエッセイでも精力的に発信しているが、そんな彼が、これまでしっかりと見たことがなかったというのが「CSI」シリーズ。

科学の力で犯罪に立ち向かう科学捜査班の面々の活躍を描き、2000年から計15シーズンを重ねた「CSI:科学捜査班」。2021年にはその続編で、オリジナルキャストが再集結した「CSI:ベガス」が製作され、現在、Huluにて配信されている。今回のオファーを受けて、見始めたところ、全10話をイッキ見してしまったという宇多丸さんに本作の魅力、海外ドラマの楽しみ方についてたっぷりと話を聞いた。

――最初に宇多丸さんと海外ドラマの出会いについてお聞きしていきます。最初に見た海外ドラマを覚えていますか?

最初に見たのは「大草原の小さな家」とかNHKで放送してたやつですね。その中でも、メチャクチャ好きだったのが「刑事コロンボ」でした。子どもにはちょっと怖いんですけどね。当時、NHKがオリジナルで付けていたものだと思うんですけど、赤地にコロンボ(ピーター・フォーク)の顔の抽象的なイラストが浮かび上がっているタイトル画が、メチャクチャ怖かった(笑)!

あの当時のドラマって、結構長く続いているんですよね。「大草原の小さな家」も主人公の子どもたちが、わりと大きくなるまでやってましたし、「コロンボ」もずっと続いていたので、いろんな作品を見るというよりも、継続して見ていましたね。

――その後、大人になってからはどのように海外ドラマを楽しんでいらっしゃるのでしょうか?

実は我が家では、僕よりも奥さんのほうが海外ドラマをよく見ているんですね。しかもたくさんの作品を見ているってだけじゃなくて、それこそ今日のテーマの「CSI」シリーズは、8周してるんですよ(笑)。全シリーズの8周ですよ? 「CSI」だけでなく、2000年代初頭からずっと海外ドラマを見ているので、ものすごい量を見ていると思います。

いつも「もう仕事にしちゃえば?」って言ってるんですけど(笑)、奥さんにおススメされた作品など、話題の作品はわりと何でも見ていますね。

――ライムスターでの活動に加えて、ほぼ毎日、ラジオ番組があるなどかなりお忙しいかと思いますが、どうやって視聴時間を捻出しているんでしょうか?

基本は家に帰ってから、夜中になっちゃうことも多いんですけど、でもドラマって細切れで見られるのが良いところでもあると思うんでね。30分とか短い時間で少しずつ見ることも多いですし。

あと、決して「つまんないから」という理由ではなく、ひとつの作品のあるシーズンを途中まで見て、ある程度、全体像を把握した上で、いったん中断して別の作品を見て、しばらくしてまた再開するということもよくあります。

その日の気分で「今日はあんまり重たいのは見たくないな」とか「今日はこれの気分だな」とか“つまみ食い”ができるのもドラマの良さだなと思います。

もちろん、シリーズをイッキ見しちゃうこともよくあります。今回、取材に際して「CSI:ベガス」は初めて見たんですが、一気に全部見ちゃいました。

――これまでに、特にハマったドラマについて教えてください。

Huluの作品ですと「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」ですね。原作(「侍女の物語」/マーガレット・アトウッド著)がそもそも、強烈な小説ですからね。


「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」
カナダ文学界の巨匠マーガレット・アトウッドのディストピア小説をテレビドラマ化。妊娠可能な女性が人権を奪われ「侍女」として「司令官」と呼ばれる政府高官の元に派遣され、子どもを産む役割を強制される…という、恐ろしい世界で侍女として仕えるジューンの人生を描いていく。 シーズン1~4 Huluで独占配信中

ディストピアSFであり、フェミニズムに対するバックラッシュ(反動)をテーマにした作品ですが、「なぜこんな事態になったのか?」という1日をさかのぼって描いたエピソードがあるんですけど、それが「あぁ、決して現実にない話じゃないな」と感じられたんですよね。

特にアメリカって極端な部分があって、ものすごく先進的な部分もあれば、“遅れている”という表現は語弊があるかもしれないけど、多様な人々の権利を認めようとしない人たちもいて、そういう人たちが実際に銃を持っていたりするわけです。

このエピソードを見ながら「日常が崩壊していくってこういうことなんだ」と思ったし、僕は男性で、そういう(旧弊な)考えを良しとしていない人間のつもりだけど、そういう勢力が銃を構えてやって来て「これが体制だ」となった時、どうふるまうのか? ということを考えて、心底げっそりしました。もちろん、これはほめてるんですけど(笑)。

それこそ“産む装置としての女性”みたいな考え方というのは、家父長的なシステムがある社会には常にあるものだから、この作品は、デフォルメはしているけれどもそういう非人間的な現実を描いているとも言えると思うんです。「子どもを産め」「男の子を産め」という話はいまだにあるわけですから。本当に素晴らしい作品だし、このバジェットで、このクオリティでドラマ化されるってすごいことだなと思います。

主演は映画『透明人間』などでおなじみの、作品の中でひどい目に遭うことが多い(笑)、エリザベス・モスですが、彼女が本当に素晴らしいですよね。彼女自身、フェミニズム的な意識を持って作品を選んでいるとインタビューで語っていましたし、そういう意味で「ハンドメイズ・テイル」があるからこそ、(元恋人の束縛、DVと戦う女性を描き、フェミニズム的な要素が見られる)『透明人間』があるのかもしれないですね。

――ちなみに宇多丸さんがHuluに加入されたきっかけは…?

奥さんです(笑)。そもそも加入しているのは奥さんだし、僕よりも先にいろんな作品を見てましたから。僕は、いまお話しした「ハンドメイズ・テイル」も見てますし、あとは海外ドラマ以外のものを見ることも多いですね。

戦隊モノや特撮系の作品が充実していますし、あとは「サタデー・ナイト・ライブ」(※アメリカで1975年から続く、土曜の深夜に放送されるコメディバラエティ番組)ですね。ラジオのリスナーからのメールでかなりの年数分が見られることに遅まきながら気づいて、「えっ!? 最高じゃん!」って。最新のをバンバン見られるので、これは大きいですよ!

海外ドラマで言うと「ウォーキング・デッド」も見てますね。“ゾンビもの”というのは既に確立されているジャンルではあるんですけど、それを連続ドラマとしてあれだけのスケールの作品にしたというのはすごいことだし、スティーヴン・ユァンとか、あの作品から多くのスターも輩出していますよね。

――宇多丸さんにとって、映画と連続ドラマの楽しみ方の違いってどういう部分にあって、連続ドラマならではの面白さはどんな部分だと思いますか?

やはりドラマはいろんな要素が描けるということに尽きますよね。映画はある程度、整理して、2時間であれば2時間の枠の中に収めて描かなきゃいけないし、そこが良さだと思いますが、ドラマであれば、1話を使ってひとりのキャラクターだけを描くということもできるんですよね。それによってキャラクターの厚みが変わるし、見ている側の思い入れも強くなっていく。そこが一番の違いですよね。

スパンが長いゆえに、より生きている人間を描くことができる――見ていて“あいつら”という感じを強く感じることができるのがドラマだなと思いますね。「あいつらにまた会いたい」って気持ちになりやすいんですよね。

あとは、細切れで見ても楽しめるということが大きいですよね。そういう部分での入口のハードルの低さ…でもハマってしまった時の“沼度”の深さ(笑)。

――宇多丸さんも奥様も、本当に気に入った作品を何周もされるんですね。

奥さんはヤバいですね。好きなドラマは何周もして、なんなら音だけ聴きながら寝てますからね(笑)。

逆に「これは合わないな」と思った時の見切りも早いんです。でもドラマってそれで良いと思うんです。最初のシーズンの1話目…いや、なんだったら1話目の最初の10分で“掴む”ように作っているわけですから。

逆に言えば、そこで合わなければやめてもいいんですよ。“つまみ食い”感覚で見始めて、気に入ったものだけ見ればいいのがドラマであり、いまのサブスク時代の楽しみ方なのかなと思いますね。

――ここからは、今回のテーマである「CSI:ベガス」についてお聞きします。先ほどから何度かお話に上がっていますが、そもそも「CSI」シリーズを見るきっかけになったのは…。

奥さんです(笑)。とはいえ、奥さん抜きにしても「CSI」というタイトル自体は昔から有名ですから知ってはいましたし、タランティーノやロブ・ゾンビといった有名監督が演出しているエピソードだけ選んで見たりもしてたんですけど。

ただ、これに関しては奥さんに指摘されて「なるほど」と思ったんですが、奥さん曰く、有名監督による回が他のエピソードと比べて面白いかというと、そうとは限らないところがまた「CSI」の特徴であり、面白さなんだと。

「CSI:ベガス」 シーズン1 より

それは今回「ベガス」を見て僕も納得しました。「CSI」には「CSI」ならではの“文法”があって、その良さがあるんです。確かにタランティーノの監督した回(「CSI:科学捜査班」シーズン5最終話「CSI “12時間”の死闘」)はタランティーノらしくて面白いんですが、それが「CSI」らしい良さを持っているかというとそれはまた別の話なんです。「CSI」って良い意味で、テレビドラマらしい“軽さ”があって、それは“見やすさ”とも言えるものなんですけど、それを今回、痛感しましたね。

少し話がそれましたが、そういうわけで、奥さんが見ているのを横で一緒に見るなどしてこれまでも「CSI」はちょこちょこ見てはいました。あと、ギル・グリッソム役のウィリアム・ピーターセンは、僕も大好きな2本の80年代傑作犯罪映画に出ている人なんですよね。

ひとつはウィリアム・フリードキン監督の『L.A.大捜査線/狼たちの街』(1985)で、これは北野武が監督デビュー作『その男、凶暴につき』を撮るにあたって参考にしたのでは?とも言われているハードボイルドの傑作で、主演として参加しています。

もうひとつは『レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙』(1986)という作品で、これは『羊たちの沈黙』以前にレクター博士の物語をマイケル・マンが映像化した作品で、トマス・ハリスの小説「レッド・ドラゴン」が原作です(※劇場公開時のタイトルは『刑事グラハム/凍りついた欲望』)。

この2作においてピーターセンは、氷のような青い眼で見事な演技を見せているんですね。正直、映画では他にそこまで代表作と言えるような作品はないんですが、奥さんと一緒に「CSI」を見ていて「あれ? こんなところで活躍してたの!?」となりました。

『L.A.大捜査線/狼たちの街』と『レッド・ドラゴン』では、ちょっと冷たすぎるくらいの印象だったんですけど、年齢を重ねてちょっと丸みがついて、さらに良い俳優になったなと思います。「CSI」で大成功を収めて、エグゼクティブ・プロデューサーまで務めるようになって「良かったねぇ…」と(笑)。

グリッソムもデータ主義のクールな男なので、ピーターセンの良い部分が活かされた役ですよね。それで興味を持って、いくつかのエピソードは見ていたんですが、今回「CSI:ベガス」でようやく1シーズンをきちんとまとめて見ることができました。

――今回の「CSI:ベガス」を見ての感想、その魅力について教えてください。

一気に10話全部見ちゃいました。1話完結で非常に見やすいですし、先ほども話に出た「CSI」の文法なんですけど、場面展開がサクサクっとしていて気持ち良いんですよね。

最近の海外ドラマって、傾向として映画寄りというか、重厚になっているんですよね。でも「CSI」はいかにも(プロデューサーの)ジェリー・ブラッカイマー風味というか、場面転換も早いし、早回しの空撮もしつこいくらい入れてくる(笑)。それって言ってしまえば最近のトレンドとは違うんですけど、「CSI」はこうじゃないと! という魅力があるんですよ。近年のドラマから入った身としては「見やすっ!」「スピード速っ!」という(笑)。「あいつがキーポイントだ!」となったら、すぐに場面がそいつのところに転換しちゃう!

「CSI:ベガス」 シーズン1 より

あと、各エピソードの真犯人に決定的な証拠を突きつける時、一度はシラを切るんだけど、もう一度詰められたら、2回以上はしらばっくれない(笑)! これ以上ゴネられるとちょっとくどいし、そろそろ時間もね…というところで、気持ちよく終わるんですよね。そういう1エピソードあたりのサクサク感もありつつ、今回の「CSI:ベガス」に関しては、かつての仲間に着せられた汚名をそそぐという、シーズンを通じての大きな事件も描かれる。

これまでもシリーズを見てきた人にはすごく嬉しいだろうし、もちろん初見の人にもしっかりわかるように作ってある。あの伝説のメンバーが再集結して、しかも彼らが過去にやり遂げた仕事を全て無にするような陰謀が横たわっていて、これは何とかしないといけない! と。1話完結で楽しみつつ、でもそれだけじゃ終われない、という面白さがあって、しかもサクサク見れちゃうから、気づいたら一気に最後まで見ちゃいました。

――シリーズほぼ初見の宇多丸さんも、以前から大ファンの奥様もお楽しみいただけましたか?

奥さんの解説付きで見てたんですけど、第1話の終わりで、カメラがパンするとグリッソムがいる!というところ、奥さんはもう「たまらんねぇー!」って(笑)。いや、そうでしょうね、と。そのキター!感は、ビギナーの僕でもよくわかりました。

「CSI:ベガス」 シーズン1 より

あと、これは奥さんの解説でなるほどと思ったんですけど、今回、グリッソムとサラ(ジョージャ・フォックス)が一緒に捜査をしていて、それは実は過去のシーズンでもなかなか見られなかったんですよね。グリッソムは上層部にいて、サラは現場だったので。2人が並んで捜査している時点で、ムチャクチャ「萌え」だと(笑)。さらにグリッソムがエプロンを着けて捜査している姿もでてきて「ちょっと! グリッソムのエプロン姿、萌えるんですけど!」と言ってました(笑)。

そしてそのニュアンスは、過去のシーズンをちゃんと見ていない僕にも伝わってくるんですよね。汚名を着せられたホッジス(ウォレス・ランガム)とサラ、グリッソムの関係性の深さも、これまでのシーズンを見ていなくても、初見でちゃんとわかるんです。

だからこの「ベガス」は「CSI」を見始める入口としてちょうどいいんじゃないかと思いますね。

人気ドラマって、長いってだけで、それがハードルになっちゃう部分ってあると思うんですけど、つまみ食いで1話だけ見てもいいんだというのを改めて感じました。良い意味で“軽く”見れちゃうんでね。

もうひとつ、奥さんが強調していたんだけど、作品のテイストとして、むごたらしい殺人事件とかを描いてはいるんですけど、あまりエグイ感じがしないというか、“ニオイ”がしないんですよね。これはもしかしたら、制作陣があえて作りものっぽさを残しているのかもしれないですね。

起きる事件そのものは結構エグイんですけど、なんならごはんを食べながらでも見られるくらいの感じで…ノリが軽いからなのかな? 画面も明るいですしね。

――これは奥様に質問したほうがいいのかもしれませんが(笑)、「CSI」がこれだけ長く、シリーズとして愛されてきた理由はどこにあると思いますか?

奥さんもシーズンごとに好みはあるみたいだけど、何といってもグリッソムとサラのチームが素晴らしくて、シーズン1から素晴らしいスタートだったことが非常に大きいんじゃないですかね。

あとは、いまとなっては「CSI」のシグニチャーともなっているような様々な“発明”の数々ですよね。これまでの警察モノのイメージを覆すガラス張りでキラキラした職場だったり、映像も含めて「クールだけどポップ」なバランスなんですよね。当初は「映画に匹敵するような」と形容されていたけど、実は映画ともまた違って、どちらかというとミュージックビデオに近い感じかな? そこはまさにジェリー・ブラッカイマー風味というか、画のスタイリッシュさ、テンポの速さもMVっぽいですよね。

ヒットするドラマって、どの作品も独自の文法を持っているもので、「CSI」もご多分に漏れずしっかりと文法を確立していて、そういう意味では本当に偉大なシリーズだと思いますね。

――重ねての質問になりますが、今回の「ベガス」はシリーズ未見の視聴者が見ても、しっかりと楽しめるつくりになっていると?

そもそも僕は、長く続いてるドラマに関して、ビギナーほど最新シリーズから見るのが一番だと思っています。いくら名作と言われているものでも、シーズン1から順番に見ろって言われたら、その時点でハードルが高くなっちゃうじゃないですか?

その点、「CSI:ベガス」は最新シーズンであり、同時にシリーズを通じて一番素晴らしいオリジナルのキャストという魅力も揃っているので、最新の部分と本質的なシリーズの魅力のいいとこどりができるんですよね。さっきも言いましたが、1話完結の10話でサクッと見れますから、これでひと通りが理解できるって意味でもお得なシーズンだなと思いますね。

「CSI:ベガス」 シーズン1 より

――過去のシリーズを見てないと理解できない部分につっかえたりすることなく、すんなり入っていけましたか?

全く問題なかったですね。そもそもアメリカのエンターテインメントって、初めての人でもちゃんとわかるように作ってありますから!(笑)

登場人物たちの人となりについても、それとなくちゃんと伝えてくれるんですよ。例えばグリッソムが感情に流されないデータ主義の男であることも、説明ゼリフとかじゃなく、ちゃんとストーリーや会話の流れの中で伝えてくれますから。不自然な形じゃなく、さらっと伝えるところも上手いんですよね、説明的過ぎず。

さっきも、海外ドラマは最初の“つかみ”が大事だと言いましたけど、この作品はまさに初回の冒頭で「うわっ!」「え? どういうこと?」という事件が起こるので、何も知らなくても掴まれますよね。

この点に関しては、初めてしっかりとこのシリーズを見た僕自身が証人です。最近の人気ドラマをいろいろ見てきた僕が、自信を持って「イマドキのドラマとはまた違う、「CSI」ならではの面白さを一発で感じられるシーズンになっている」と言える作品だと思います。

「CSI:ベガス」 シーズン1 より

――ちなみに宇多丸さんが今回の「CSI:ベガス」全10話の中で、特に引き込まれたエピソードや事件はどれですか?

やっぱりバスタブドロドロ事件(第8話「ドロドロの真実」)かなぁ? オチもすごいし、あのゲストの役者さんも良かったですね。「イヤな笑い方をする男だなぁ」と思ってたら、まさにその部分がエピソードに活かされているし、“美少女コンテスト”という背景のなんとも言えない空気感含めて、面白かったですねぇ。

もうひとつ、心に残ったという意味では、ハワイアンホテルを舞台にした殺人事件の話(第4話「裁きの儀式」)もすごいですね。あれは正直、結末の凄まじさに驚かされました。

あとはやっぱり、仲間に着せられた汚名をそそぐというこのシーズンを通しての事件ですよね。最終話で、グリッソムがラスボスに対してバシッと言い返すところで、「気持ちいぃー!」ってなりましたね。

「CSI:ベガス」 シーズン1 より

これはちょっと穿ち過ぎなのかもしれませんが、コロナ禍以降にこのシーズンは作られていて、実際に社会は新型コロナウイルスに対して、ワクチンを作ったり、科学の力で対抗しようとしてきたわけじゃないですか。そんな中で、バックラッシュ的に科学を軽視する言説やワクチン陰謀論みたいなものが、感情や情緒に訴える形で広まっている。

作品の中でも「真実ではなく、より強く、面白い物語が勝つんだ」というような悪役側のセリフが出てきますよね。それに対してグリッソムたちは、知性や科学で地道に真実に迫ろうとすることを決して諦めてはいけない、という姿勢を貫いているわけです。これはいまの世相の中で、非常に意義深いメッセージだなと思いました。僕もやはり、知性や科学こそが人類の灯だと思っているので、グリッソムのセリフに溜飲が下がる思いがありました。

軽い気持ちで楽しめるドラマではあるんですけど、どこかでやはりいまの世相と関係なくはないんだなと。最後まで見終わって「あぁ、良い作品だったな」としみじみと感じましたね。

――最後にこれからHuluで海外ドラマを楽しもうと考えている人たちに向けて、メッセージをお願いします。

今回、改めて思い知ったのは、長くシリーズが続いているドラマというのは、やはりそうなるだけの魅力や独自の発明、そこでしか味わえない何かがあるんだなということ。

同時に、長く続いているドラマって、どうしても入っていくのにハードルの高さを感じてしまいがちだけど、やはり最新シリーズから入っていけばいいんだなというのを実感しました。

そういう意味で、Huluは老舗の人気ドラマも数多く揃っているので、ぜひ臆せずに見始めてみてもらいたいですね。


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※記事内で紹介している作品は、2022年11月1日時点でHuluにて配信されている作品です。

©2022 CBS Broadcasting, Inc. All Rights Reserved.

<提供:Hulu>
《text:Naoki Kurozu/photo:You Ishii》

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