物語の鍵を握る、母と娘の会話『あのこと』本編映像&監督コメント

ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作『あのこと』より本編映像が解禁。併せて監督コメントも到着した。

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『あのこと』© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINÉMA - WILD BUNCH - SRAB FILM
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  • 『冬の旅』©1985 Ciné-Tamaris / films A2
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ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作『あのこと』より本編映像が解禁。併せて監督コメントも到着した。


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本作は、本年度ノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの実体験を基にした小説「事件」の映画化。1960年代、法律で中絶が禁止されていたフランスを舞台に、望まぬ妊娠によって人生を左右されることとなる少女の苦悩と葛藤を描く。

主人公アンヌは貧しい労働者階級の家庭に生まれながらも勤勉で優秀、教師になることを夢見る女子大生。そんな彼女の日々の生活にある会話から、時代の女性像を浮き彫りにする、象徴的なシーンを捉えた本編映像が解禁された。

宿舎から実家に帰省し、両親が営むカフェに顔を出すアンヌ。「大学はどう?」と常連の女性客に声をかけられたアンヌだが、代わりに母親が「優等生でもうすぐ学士よ」と自慢する。女性客は「優秀なのは知ってる」とアンヌの手を見て答え、「肉体労働者とは違う。私はペンキ塗り、工場で働いていると手の色が分からなくなる」と教えてくれる。場面は変わり、家の中での出来事。ため息をつく父をよそに、母はアンヌにお金を渡し「本でも買って」と笑いかける。

階級の垣根を越えることなく労働者の道を歩む女性客。未来有望なアンヌ。優秀な娘が誇らしい母。3者のなにげないやりとりが意味深い。

監督のオードレイ・ディヴァンは原作小説を読み、「まず浮かんだのは<激しい怒り>です。妊娠を告げられた瞬間から、苦しみを受けたに違いない少女の体や、彼女が直面したジレンマに対する理不尽さに憤りを覚えました。そして、命をかけて中絶するのか、それとも子供を産んで自分の未来を犠牲にするのか。私はそれをイメージに変換しようとしました」と信念を持って映像化することを誓ったとふり返る。

また原作者のアニー・エルノーに実際に会い、話を聞いたことについて、「政治的な背景をより正確に理解した上で、女性たちが決意の瞬間に抱いた恐怖に触れることができました」と語っており、彼女たちの選択は当時の政治によっても大きく左右されていた事実を知ったと明かしている。

『冬の旅』©1985 Ciné-Tamaris / films A2

また、映像に登場するアンヌの母親役を演じるのはサンドリーヌ・ボネール。アニエス・ヴァルダ監督最高傑作といわれる『冬の旅』でヒッチハイクで放浪する少女を演じ、セザール賞主演女優賞を最年少で受賞している。かつて問題を抱えた繊細な少女像を演じた彼女が、本作では娘の夢を応援する母として登場するのも感慨深い。『冬の旅』は1985年製作の映画であるが、30年以上の歳月を経て現在順次公開中。自由を渇望し孤軍奮闘する女性像は本作にも通じるものがある。

女性の生き方の選択肢がいまよりももっと少なかった時代。彼女たちの姿を通して見えてくるものがきっとあるはずだ。

『あのこと』は12月2日(金)よりBunkamuraル・シネマほか全国にて順次公開。

『冬の旅』は全国にて順次公開中。


《text:cinemacafe.net》

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