満島ひかりの比類なき存在感、役者の枠を超え邁進中

「演技」という言葉の奥行きを改めて見せつけられるような、人物が生きた記録を画面に刻み付けてきた表現者・満島ひかり。満島ひかり出演作の公開・放送ラッシュとなった2022年、我々が“目撃”した彼女の姿を振り返ってみよう。

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Netflixシリーズ「First Love 初恋」
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  • 「First Love 初恋」 (2ショット)
  • 『TANG タング』(C)2015 DI (C)2022映画「TANG」製作委員会
  • 『TANG タング』(C)2015 DI (C)2022映画「TANG」製作委員会

佐藤健は、満島ひかりについてこう語る。「レアポケモンみたいになっていて、なかなか会えないし、なかなか共演できない人」と。Netflixオリジナルシリーズ「First Love 初恋」のクロストークの場でのことだ。

「演技」という言葉の奥行きを改めて見せつけられるような、人物が生きた記録を画面に刻み付けてきた表現者・満島ひかり。生活レベルから役に入り込もうとする彼女のアプローチは、それがゆえに“こなす”ことがかなわない印象を受ける。潜って、捧げて、搾り出す。その圧倒的な深度がため、乱発ができないのだ。

佐藤さんの評が言いえて妙だが、2022年は様々な条件が重なり満島ひかり出演作の公開・放送ラッシュとなったレアな1年であった。改めて、我々が“目撃”した彼女の姿を振り返ってみよう。

4月には春クールのテレビドラマ「未来への10カウント」に出演。木村拓哉扮する元ボクサーの主人公と共に高校ボクシング部を盛り上げる、まっすぐな性格の顧問教師に扮した。「本気の青春」をうたう本作では各々が思いの丈をぶつけ合うシーンも見どころの一つだが、意志が行動に直結している満島さんの芝居が実に効いている。

夏クールには、多くの作品で組んできた脚本家・坂元裕二の新作「初恋の悪魔」で物語のカギを握る女性を演じた。無実の罪で獄中生活を強いられ、かつほぼセリフがない特殊な役柄にもかかわらず、佇まいから立ち上るオーラで苦悶の歳月を感じさせる演技は、流石の一言。

『TANG タング』

8月には二宮和也と共演した映画『TANG タング』が公開。近未来を舞台に、迷子のポンコツロボットと出会ったことから運命が変わる男を描いたハートフルな一作。満島さんは、二宮扮する主人公の妻を演じた。有能な弁護士だが、家では引きこもり状態の夫との関係に悩み…というポジション。撮影時は、動かないロボット相手に芝居するチャレンジも行った。

9月には、公開延期されていた『川っぺりムコリッタ』がお披露目。様々な事情を抱えた住人達が集う安アパートの大家を朗らかに演じた。表面的なキャラクターと異なり、夫を亡くした喪失感を抱えて娘と生きる1人の人間の実像を生っぽく見せ切った。『かもめ食堂』や『彼らが本気で編むときは、』で知られる監督・脚本・原作の荻上直子による生活感とおかしみが同居する世界観の住人として生きており、相性の良さを感じさせた。

『川っぺりムコリッタ』

同月には、満島さんが「私にとってはホームのよう」と評する水田伸生監督とのコラボ作『アイ・アム まきもと』が公開。ドラマ『Mother』等で組んだ水田組に、舞台「鎌塚氏、すくい上げる」等の倉持裕が脚本家で加わるという満島さんにとって縁の深い座組。2013年のイギリス・イタリア合作映画『おみおくりの作法』を原作とする本作は、阿部サダヲ扮する市役所の“おみおくり係”の男性が独自ルールで突き進むも、振り回されるうちに周囲も救われていく物語。満島さんならではの「感情があふれてくる」→「涙があふれる」の凄みを堪能できる。

『アイ・アム まきもと』

そして、11月には「First Love 初恋」が配信開始。本作は、宇多田ヒカルの「First Love」「初恋」にインスパイアされたラブストーリー。不慮の事故や過酷な試練によって離ればなれになってしまった恋人が再会を果たすが、新たな問題が持ち上がり…という切ない物語が展開する。初恋をいまだ忘れられない警備員に扮した佐藤健、初恋を忘れてしまったタクシー運転手を満島さんが演じており、満島さんの観る者を感情の源泉に引きずり込むような魂の熱演はもちろんのこと、「頭は覚えていないが身体が記憶しており、ふとした瞬間に仕草が出て困惑する」といったさじ加減が難しいテクニカルな芝居も披露。少しずつ明かされていく過去によって登場人物の見え方が変わり、これまでのシーンの真の意味が分かるといった構成、かつての恋人たちが少しずつ歩み寄っていくグラデーションの縁(よすが)となる満島さんの微細な表現は、繰り返し観ることでより効力を発揮するのではないか。

「First Love 初恋」

実写作品に加えて、日本語劇場版『サンダーバード55/GOGO』では吹き替え声優も務めた満島さん。グッチのショートフィルム「KAGUYA BY GUCCI」では「それでも、生きてゆく」で共演した永山瑛太、「First Love 初恋」に続くアオイ・ヤマダと共に「かぐや姫」を新解釈したファンタジーに挑戦した。

表現方法が多岐にわたるのも満島さんの特長で、その透き通る声を使った仕事も多数。楽器の演奏やポエトリーリーディングがミックスされた「いとうせいこう is the poet with 満島ひかり」の活動も継続しており、野外フェス「朝霧JAM」等に出演。12月に放送された音楽番組「FNS歌謡祭」では、「Folder」のメンバーだった三浦大知と再共演。視聴者を大いに沸かせた。1月27日(金)に公開されるドキュメンタリー映画『ミスタームーンライト ~1966 ザ・ビートルズ武道館公演 みんなで見た夢~』ではナレーションを担当。

「First Love 初恋」

「First Love 初恋」では脚本開発からオーディションの立会い、若手出演者へのワークショップなど、ステレオタイプな「役者」の枠を超えてものづくりに邁進する満島ひかり。我々の「何を見せてくれるのか」という期待を更新し続ける彼女は、次にどこへ飛び込むのか。驚く準備をしつつ、発表の日を待ちたい。

《SYO》
SYO

物書き SYO

1987年福井県生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、2020年に独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説・漫画・音楽・ゲームなどエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。並行して個人の創作活動も行う。

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