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松永大司監督、吉野耕平監督らを輩出!「ndjc2022」選出監督インタビュー

岡本昌也監督『うつぶせのまま踊りたい』、成瀬都香監督『ラ・マヒ』、藤本楓監督『サボテンと海底』、牧大我監督『デブリーズ』の4作品が、2月17日(金)より角川シネマ有楽町他にて順次公開される。

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牧大我監督、藤本楓監督、成瀬都香監督、岡本昌也監督
牧大我監督、藤本楓監督、成瀬都香監督、岡本昌也監督
  • 牧大我監督、藤本楓監督、成瀬都香監督、岡本昌也監督
  • 牧大我監督、藤本楓監督、成瀬都香監督、岡本昌也監督
  • 岡本昌也監督『うつぶせのまま踊りたい』©2023 VIPO
  • 成瀬都香監督『ラ・マヒ』©2023 VIPO
  • 藤本楓監督『サボテンと海底』©2023 VIPO
  • 牧大我監督『デブリーズ』©2023 VIPO
  • 牧大我監督、藤本楓監督、成瀬都香監督、岡本昌也監督
  • 「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」©2023 VIPO

17回目となった「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。日本映画振興事業の一環として、文化庁から映像産業振興機構(VIPO)が委託を受け、2006年度からスタートした本プロジェクトでは、各映像関連団体から推薦を受けた映像作家たちが書類による一次審査を通過後、プロデューサーや編集技師、映画監督、脚本家ら講師のもとで行われるワークショップに参加し、5分間の短編制作等を通した最終選考に挑む。ここで選出された作家たちは、脚本指導やプロのスタッフとの製作実地研修を経て、オリジナル脚本の短編映画を完成させた。

これまでも、中野量太岨手由貴子中江和仁ふくだももこ三宅伸行堀江貴大など数々の才能を世に輩出してきた。2010年に本プロジェクトに参加した松永大司は監督作『エゴイスト』が、第35回東京国際映画祭コンペティション部門に選出され、2014年に参加した吉野耕平は、商業映画2作目となる『ハケンアニメ!』が、第46回日本アカデミー賞、優秀作品賞に選ばれ、3月10日の授賞式で最優秀賞に挑むことをはじめ、先日発表になったかわぐちかいじ氏の人気コミック「沈黙の艦隊」の実写映画のメガホンをとることが発表されるなど、大きな活躍を見せている。

2022年度は、66名の応募のなかから、岡本昌也監督『うつぶせのまま踊りたい』成瀬都香監督『ラ・マヒ』藤本楓監督『サボテンと海底』牧大我監督『デブリーズ』の4作品が、2月17日より角川シネマ有楽町、その後名古屋、大阪と順次公開される。各監督に、プロジェクトに参加して得たこと、さらには目指す監督像などについて話を聞いた。


なぜndjcに参加したのか


非常に実践的な「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。参加した経緯やきっかけには、監督たちの目指す道や個性が垣間見える。

牧大我監督、藤本楓監督、成瀬都香監督、岡本昌也監督

岡本監督「普段は京都に拠点を置いている『安住の地』という劇団に所属して作家と演出をしているのですが、演劇と映画の二刀流でやっていきたいと思って、プロジェクトに応募しました」

成瀬監督「私は映画美学校の修了過程で製作した『泥』という映画を、いろいろな映画祭で上映していただけたんです。次はプロレス映画を撮りたいと思ってTAMA映画フォーラム実行委員会さんに推薦していただきました」

藤本監督「普段は映画美術の仕事の他に、卒業した大学院(東京藝術大学大学院)で助手の仕事をしていて、学生たちのサポートをしています。そんななか自分でも映画を作りたいと思い、以前ndjcでスーパーバイザーもしていた桝井省志さんからプロジェクトのことを教えていただき、運よく参加することができました」

牧監督「僕は一昨年から友達を集めて低予算でどれだけ面白いものが作れるかということを研究していたんです。そのなかで、『ダボ』という映画がショートショート フィルムフェスティバル & アジアで入賞して、ndjcに推薦していただきました」

4監督が作り上げた作品は、それぞれテーマや趣はまったく違う。どんな発想から作品を作り上げていったのだろうか。

©2023 VIPO

岡本監督「常日頃から言葉とか生き方の違いみたいなもので分かり合えない中でも、通じ合えるものってあるんじゃないかなと思っていたんです。それを詩というテーマで描いてみようと思いました。僕自身、社会性があるタイプでもなく、“おとなこども”みたいな部分があるので、精神的モラトリアムみたいなところを映画にしたいと思ったんです。映画を観た人にある種の痒さみたいなものを感じてもらえたらなと思って作りました」

成瀬監督「私は元々シニカルなタイプで、元気な人が苦手だったんです。でも2年前ぐらいにプロレスに出会ってから突然オタクになるぐらい好きになり、一生懸命何かするということが輝かしいと思うようになって(笑)。そこでプロレス映画を撮りたいなと。いま日常で大変なことが多すぎて、あまり深刻なテーマの作品を観るのが苦手になっていたので、とにかく『これを観たら、明日も元気に頑張れるかも』というものを作りたいと思って取り組みました」

藤本監督「これまで低予算映画やミュージックビデオの美術を担当することが多かったのですが、初めてCMの現場に行ったとき、スタンドイン(撮影前に照明や撮影の位置決めのために俳優の代理をする役割の人)の存在を知り、面白いなと思って企画を考えました。その後、学生の実習作品のサポートをしているとき、監督が連れてきた役者さんが、顔が一切映らない役で。着ぐるみに入って一生懸命お芝居されて、休憩時間にマスクを取ると汗だくなんです。それでまた本番になると着ぐるみを被って演技をする。その姿を見てすごいなと思ったんです。その俳優さんが、今回の作品の主演を務めてくださった宮田佳典さんです。本人に無許可で当て書きしました(笑)。内容的にちょっとネガティブになりそうな題材だったので、そこは悲劇にならないように意識しました」

牧監督「元々SF映画が好きなのですが、僕がこれまでつくってきたような低予算で撮れるジャンルではないじゃないですか。そんなときndjcを知って、ぜひSFにトライしたいなと。もちろん、それでもそんなに(予算を)掛けられるわけではないので、衣装などは自分の知り合いのアーティストに協力してもらいました。意識したのは、10年後にこの映画を観たとき、こんな熱意を持ってやっていたんだな、もっと頑張ろうと思えるような作品にしようということ。そこは熱量を持って挑みました」


製作実地研修で学んだプロの映画作り


製作実地研修を経て、出来上がった作品は劇場公開される。商業映画を作るという工程を、現場のプロたちと共にリアルに体験した、彼ら、彼女らはこのプロジェクトでどんなことを感じ取ったのだろうか。

岡本昌也監督『うつぶせのまま踊りたい』©2023 VIPO

岡本監督「まず普段見ている映画があらゆる工程を踏んで劇場で流れているんだなということを実感できました。例えばグレーディングなどはめちゃくちゃ感動しました。僕は編集が終わった時点でほぼ完成したと思っていたのですが、グレーディングをすることで、映画の質感みたいなものがグッと上がっていったし、仕上げの重要性を感じました。あとは作家性と商業性のせめぎあいみたいなところもすごく印象に残っています。脚本開発の段階で、主人公が社会に出るとき、僕はあまり明確な描写をしなかったのですが、指導の方からスーツを着ると、それだけで多くの人に伝わるとアイデアをいただきました。最終的には自分の方法で描いたのですが、指導してくださった方は、僕の将来や作品の間口みたいなところも考えてアドバイスをくださったんですよね。そういう部分も含めて学びは多かったです」

成瀬都香監督『ラ・マヒ』©2023 VIPO

成瀬監督「2つ大きなことを学んだ気がします。一つ目は監督とはどういうものかということ。とにかくたくさんの人と会いました。しかもそれぞれの立場の責務を果たすために、意見をたくさんくださるんです。監督はその取捨選択をブレることなくしていく力が必要なんだなと思いました。以前映画美学校の特別講師で黒沢清さんが『僕は現場監督だから』と仰っていたんです。かなり作家性が強い監督だと思っていたから、当時は驚いたのですが、今回その意味が分かりました。監督はしっかり道しるべとなる、灯台であるべきなんだなと。もう一つは技術さんと助監督さんのスキルの高さです。岡本監督もおっしゃっていましたが、音を含めてプロの仕上げ作業のクオリティの高さに驚き、それが映画にとってとても大事なんだなと思いました」

藤本楓監督『サボテンと海底』©2023 VIPO

藤本監督「私もスタッフさんたちの力をすごく感じました。助監督さんの提案で何度救われたか…。学生映画や作家性の強いインディペンデント映画だと、監督がすべてで、そこに周囲が振り回されるイメージだったのですが、商業映画というのは、それぞれの役割と果たす仕事がひとつの映画を作りあげていくのだと実感し、すごく貴重な経験をしました」

牧大我監督『デブリーズ』©2023 VIPO

牧監督「僕もプロのスタッフの方々がとても心強かったなと。その意味で、重要だと感じたのがコミュニケーション能力。これまでは気心知れた友達と作っていたので、阿吽の呼吸でできている部分が多かったのですが、今回はしっかりと『分からない』と言ってくれたり、流さずに歩みよってくれたり。そこは大きな学びでした。もっと自分の思いを伝えられるように言葉が上手にならないといけないと思いました」


未来の映画監督たちの進む道とは


本プロジェクトを経て、数々の映画監督が世に羽ばたいていった。各監督たちは、どんな映画監督を目指しているのだろうか。

牧監督「作品にしっかりと熱量を込められる監督になりたいです。僕は岡本喜八監督に影響を受けているのですが、岡本監督の作品って、開始5分ぐらいで心をつかまれるというか、熱量が伝わってくる。そんな作品を作れる監督になりたいです」

藤本監督「いろいろなものを撮ることができる監督になりたいのですが、なかでも観てくださる人が疲れていても観られる、笑えるという作品を作りたいです。幼い頃に観た矢口史靖監督の『スウィングガールズ』が大好きで、あの映画を観て中学校で吹奏楽部に入ったぐらい(笑)。矢口監督には影響を受けています」

成瀬監督「私はエンタメのアイドル映画を作りたいです。キラキラしているってすごいことだと思うんです。私は本広克行監督の『幕が上がる』が大好きで。今回偶然、『幕が上がる』を製作したROBOTさんが制作会社に入ってくださったので、すごく縁を感じています」

岡本監督「創作活動を通じて一貫して思っているのは、作家としての探求や文学的な探求をすることと、興行として成立するということが、両立して活動できるかということ。他の国と比べることは無粋だと思うのですが、ヨーロッパなどに比べると日本はアーティストが下に見られているのかなと。例えば母の友達に会ったとき『仕事は何をされているんですか?』と聞かれて『演劇をやっています』と言うと、母が恥ずかしそうにするんですよね。それって文化の敗北なのかなと。僕は芸術作品として価値があるものに、しっかり対価をはらってもらえるように努力していきたいです」

2月17日(金)から角川シネマ有楽町(東京)にて、その後はミッドランドスクエア シネマ(名古屋)とシネ・リーブル梅田(大阪)で、4監督の作品が大スクリーンに映し出される。

牧監督「プロフェッショナルな言葉じゃないことは重々承知で言いますが、頑張ったので観てほしいです(笑)。特に衣装と音楽は相当気に入っているので、楽しみにしてほしいです」

藤本監督「アホらしさを感じるようなコメディを全力で頑張って作ったので、その辺りを感じて欲しいです」

成瀬監督「基本はプロレスを観たことのない人に向けて作ったので、格闘技に関心がない人でも、プロレスの情熱を感じてもらえたら。あとは映画館でしか体験できないのが音だと思っているので、ぜひジェットコースターに乗るつもりで映画館に来ていただければと思います」

岡本監督「映画って登場人物に感情移入していくことが一つの楽しみだと思うのですが、僕が描いた人物は、感情移入する導線がはっきりとしていない。なんで突然こんなことしちゃうの?と思うかもしれませんが、それは意図的にやっているんです。俳優さんからも『これってどういう気持ちで行動しているんですか?』と聞かれたのですが、僕は『人間ってそういうものなんです』と言い続けたんです。そんな登場人物の行動に、何か自分の思いなどを乗せていただければ嬉しいです」


「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」
劇場公開


<東京>
期間:2月17日(金)~23日(木・祝)連日18:30~
場所:角川シネマ有楽町

舞台挨拶:2月17日(金)4作品上映後

<名古屋>
期間:3月10日(金)~16日(木)連日18:00~
場所:ミッドランドスクエア シネマ

舞台挨拶:3月11日(土)4作品上映後

<大阪>
期間:3月17日(金)~23日(木)連日18:00~
場所:シネ・リーブル梅田

舞台挨拶:3月18日(土)4作品上映後


「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2022」公式サイト
《photo / text:Masakazu Isobe》

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