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監督としても注目を集めるイ・ジョンジェ、俳優経験が活きて生まれた『ハント』の魅力

「イ・ジョンジェ」という、新たな実力派監督の誕生を告げる快作『ハント』。その魅力に様々な角度から迫っていこう。

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『ハント』ⓒ 2022 MEGABOXJOONGANG PLUS M, ARTIST STUDIO & SANAI PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED.
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  • 『ハント』メイキング ⓒ 2022 MEGABOXJOONGANG PLUS M, ARTIST STUDIO & SANAI PICTURES, ALL RIGHTS RESERVED.
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韓国を代表する俳優イ・ジョンジェが、初監督作である『ハント』で華々しい第二のデビューを飾った。カンヌを筆頭に世界中の映画祭への出品を成し遂げ、韓国を代表する映画賞である「第43回青龍映画賞」では新人監督賞・編集賞・撮影照明賞の三冠を獲得 。俳優としてだけではなく、監督としてもその力量を見事に証明したといっていい。

そんな『ハント』は息もつかせぬスパイアクションであると同時に、それを通し韓国の近現代史に真正面から向き合った作品だ。スリリングなエンタメ大作でありつつ、政治的なメッセージを強く打ち出す姿勢には、韓国映画らしい魅力がたっぷりと詰まっている。

「イ・ジョンジェ」という、新たな実力派監督の誕生を告げる快作『ハント』。その魅力に様々な角度から迫っていこう。

イ・ジョンジェ、その驚くべきキャリア


『ハント』が話題を集めたのにはいくつか理由があるが、まずは主演・監督のイ・ジョンジェが何度目かのキャリアの黄金期にあるのが大きい。94年に『若い男』で4つの映画賞において新人賞を受賞した彼は、翌年には国民的ヒットドラマ「砂時計」で主要人物を演じ、瞬く間に韓国の若手スターの座へと上り詰めた。

その後も『イルマーレ』や『ラスト・プレゼント』などの恋愛映画から、『新しき世界』や『観相師 -かんそうし-』などのノワールや歴史ものまで、数多くの大作・ヒット作に出演。幅広い役柄を見事に演じきり、名優の座を確固たるものにしていく。

イ・ジョンジェ『ハント』来日記者会見

そしてそんな彼の存在を世界中が知ることとなったのが2021年のNetflixオリジナルシリーズ「イカゲーム」だ。この国際的に成功を収めたドラマで主演を務めた彼は、なんとアジア人の俳優として初のエミー主演男優賞(ドラマ部門)を受賞。『スター・ウォーズ』の前日譚ドラマ「The Acolyte(原題)」の出演も決定し、世界のスターへの道を邁進している 。そんな彼が満を持して監督に挑戦したのがこの『ハント』なのだ。

イ・ジョンジェとチョン・ウソン、24年ぶりのダブル主演


そんなイ・ジョンジェと公私に渡る盟友として並走してきたのが、これまた韓国の国民的俳優であるチョン・ウソンである。2016年に芸能マネジメント会社「アーティスト・カンパニー」を共同設立するなど、その仲のよさにかけては有名な2人。だが1999年の『太陽はない』以来、スクリーンでの共演は長らくなかった。

しかし『ハント』では、イ・ジョンジェとチョン・ウソンがなんと24年ぶりに共演を果たしている。そしてファンにとっては嬉しいことに、この映画の大きな推進力となっているのは、まさにこの2人の関係性なのだ。

激しく対立する男たちの運命が映す、軍事政権時代の暗部


この映画の舞台は全斗煥軍事政権下、80年代の韓国だ。安全企画部(旧KCIA)に所属する海外次長パク(イ・ジョンジェ)と国内次長キム(チョン・ウソン)は、大統領暗殺を狙ったテロ事件をきっかけに、組織内に“北”の二重スパイ「トンニム」が潜入したことを知る。捜査を進めていく過程で、お互いに対する疑いを深める2人。錯綜した状況が続き、死傷者も増えていくなか、とうとう決定的な瞬間が訪れる。

同じ組織・国家に属しながらも、互いを信用することができず、分断され対立するパク次長とキム次長。その背後には当時の軍事政権による市民への苛烈な暴力の存在がある。ヤン・ウソク監督『弁護人』やチャン・ジュナン監督『1987、ある闘いの真実』で描かれたような、国家機関による拷問が平然と画面に映るのが生々しくも恐ろしい。「ラングーン事件」 や「イ・ウンピョン大佐の亡命」 、「光州事件」などの史実を取り入れた脚本。そして80年代の雰囲気を色濃く再現した美術も、不穏な緊張感が高まる時代のリアリティを表現するのに貢献している。

暴力に満ちた世界のなかで、陰謀と疑念の泥沼にはまりこむ2人。映画はその様子を通して、権力に根本的な問題がある状況下では、誰も自由ではいられないことを痛烈に示す。

また作品を魅力的に彩るハードなアクションシーンの数々も見逃せない。ワシントンDCでの白昼の銃撃戦、東京の路上でのカーチェイス、ソウルでのガサ入れからの大立ち回りまで、『ハント』は傑出したアクションシーンの宝庫だ。スピーディーな編集と的確な空間設計に支えられたその堂々たる演出手腕は、新人離れしたものである。シリアスな政治的テーマを扱いつつも、それをアクションやサスペンスを通しテンポよく展開させる姿勢には、『暗殺』や『オペレーション・クロマイト』などの近現代史を扱った大作に出演してきた監督の経験が反映されているのかもしれない。

パク次長とキム次長、2人の運命は二転三転しながら、壮絶なクライマックスへとなだれ込む。暴政のなか、手段を選ばず自身の目的へ突き進んだ男たちがたどり着く結末は、深い余韻を残すことだろう。イ・ジョンジェとチョン・ウソンのファンはもちろん、韓国映画を愛する観客全てにとっての必見作だ。



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《セメントTHING》

セメントTHING

福岡県出身・在住のライター。専門分野は映画、ボーイズラブ、欧米ポップミュージック、クィアカルチャーなど。

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