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【映画と仕事 vol.23】インターンから映画業界に飛び込み、4年で独立し配給会社を設立!ウクライナ映画の公開に「ほぼ全財産」を賭けたワケ

勤めていた会社を辞め、自身でウクライナのアニメーション映画の配給権を購入し、「Elles Films株式会社」を設立して同作を配給することになった粉川なつみさん。彼女の背中を押した思いとは――? その決断の経緯と映画公開にいたるまでのお仕事について話を聞いた。

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粉川なつみ/「Elles Films株式会社」代表取締役
粉川なつみ/「Elles Films株式会社」代表取締役
  • 粉川なつみ/「Elles Films株式会社」代表取締役
  • 『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』 © 2018, SSVG EAST FUND INVESTMENT LIMITED © 2018, “ANIMAGRAD” LTD © 2018, Ukrainian State Film Agency © 『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』製作委員会
  • 粉川なつみ/「Elles Films株式会社」代表取締役
  • 『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』 © 2018, SSVG EAST FUND INVESTMENT LIMITED © 2018, “ANIMAGRAD” LTD © 2018, Ukrainian State Film Agency © 『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』製作委員会
  • 『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』 © 2018, SSVG EAST FUND INVESTMENT LIMITED © 2018, “ANIMAGRAD” LTD © 2018, Ukrainian State Film Agency © 『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』製作委員会

「Elles Films株式会社」代表取締役・粉川なつみさん。ウクライナで制作された1本のアニメーション映画を劇場公開するため、勤めていた会社を辞め「ほぼ全財産をなげうって」日本での配給権を獲得し、たった一人で「Elles Films」を設立。その後もクラウドファンディングの実施から製作委員会の設立、日本語吹替版の制作、宣伝業務など、映画公開に向けた作業の中心を担ってきた。

そんな粉川さんの情熱に突き動かされる形で、多くの賛同者が集まり、アニメーション映画『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』が先日より公開中だ。

もともと映画が好きで、映画業界で働くことを志し、その念願かなって宣伝会社で働き始めたという粉川さんだが、そんな彼女が20代半ばにして、自ら会社を設立してまで同作を公開しようと思ったのはなぜなのか? 粉川さんにたっぷりと話を伺った。

映画宣伝へ入社、配給会社への転職


――「Elles Films」を設立する以前から、映画宣伝会社で働いていらしたそうですね。映像業界で働くようになった経緯を教えてください。

大学時代、ゼミの先生のツテもあって、映画宣伝会社「ガイエ」でインターンをしていて、そのまま入社することになりました。

もともと、映画の美術監督になりたくて、それを学べる大学に進学したんです。ただ、実習で美術スタッフとして映画の現場に行くとものすごい激務で「これはちょっと自分には無理だなぁ…」と挫折しまして…。

ただ、大学では現場のことだけでなく、映画のビジネスについても学ぶことができて、その授業がすごく楽しかったんです。当初は映画ができるまでの仕事をしたいと思ってたんですが、徐々に完成した映画をいかにお客さんに届けるか? という部分に興味がわいてきて、ガイエでインターンをさせてもらうことにしたんです。

インターン初日に行ったのが、柳沢慎吾さんが『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の公開アフレコをするという現場だったんですが、イベントを仕切ったり、マスコミ向けのリリースを執筆したり、その様子をSNSで拡散している会社の先輩たちの姿がすごい大人に見えました。

インターンからその後、アルバイトになって、新卒のタイミングで入社しました。業務は映画のパブリシティ(※作品について、新聞や雑誌、テレビ、WEB媒体などのメディアで紹介をしてもらうための宣伝業務)、特にWEBを担当していました。公開される新作映画についてのリリースを作成して媒体さんに配布したり、マスコミ向けの試写会の対応、イベントの手伝いやライターさんやWEB媒体の編集者さんに作品をPRなどをしていました。

――実際に映画業界で働き始めて、いかがでしたか?

どんな業界、お仕事でもそうだと思いますが、中に入って、実際にやってみないとわからないことがたくさんありました。例えば、私はリリース(※作品の公開決定や、キャストの発表、舞台挨拶のレポートなど、マスコミなどに配布するための文書)を書くのがものすごく苦手でして(苦笑)。大学でも卒論を書いたりしていますし、文章を書くこと自体、決して苦手意識を持っていたわけではないんですけど、仕事のリリースが本当に書けなくて…。苦労して書いて、先輩に提出すると真っ赤になって戻ってくることの繰り返しでしたね。

パブリシティの業務は1年ほどやらせていただいて、その後、タイアップ営業の部署に異動となりました。結局、ガイエにはアルバイト時代も含めて3年ほど在籍していたんですが、人事、パブリシティ、営業といろんな部署に関わらせていただきました。

その後、2021年に映画の企画・制作からアニメ作品やアジア映画の配給・宣伝などを行なっている「チームジョイ」という会社に転職しました。

――お話しできる範囲で、転職することになった経緯についても教えてください。

コロナ禍で、映画業界もいろんなことがしばらくストップしてしまったんですよね。私がいたタイアップの部署も、全てのタイアップ案件が飛んでしまって…。会社も方向転換を余儀なくされた部分があって、どこまで映画に関わっていけるのか? という思いはありました。

その時期、コロナでヒマだったこともあって、私はなぜか「OCTB -組織犯罪課-」という香港ドラマにめちゃくちゃハマってしまったんですね(笑)。別に以前からアジア系のドラマや映画が好きだったというわけでは全くないし、キラキラの恋愛ドラマでもなく、香港警察とマフィアの攻防を描く渋いドラマなんですけど…。

そこから、中国語ができるようになりたいなと思って勉強を始めたりして「やっぱり、エンタメって面白いな」という気持ちになったんです。こういう作品に携われるような企業はあるかな? と思って、いろいろ調べて行き着いたのがチームジョイでした。

――アジア系の作品の配給・宣伝だけでなく、企画や制作、グッズの販売など幅広く行なっていますね。

まさにそこに惹かれました。映画の宣伝って、私がやっていたようなWEBの宣伝やタイアップだけでなく、本当にいろんな業務があるんですよね。それを最初から最後まで見られるのは配給会社だなと思っていました。

ちょうどその時期、コロナ禍にもかかわらず、チームジョイの担当していた『羅小黒戦記ぼくが選ぶ未来』も大ヒットしていて、勢いも感じて応募しました。

――転職されてみていかがでしたか? チームジョイではどんな業務を担当されたんでしょうか?

チームジョイでの日々はめちゃくちゃ濃かったですね。実質、在籍したのは1年半くらいだったんですが、5年くらい働いていたんじゃないかって思うくらい。

入社後は『羅小黒戦記』のグッズの輸入・販売に始まり、アニメーション映画『白蛇:縁起』の日本語吹替版制作パッケージ制作、宣伝と本当に何でもやっていましたね。

入社して驚いたんですが当時、チームジョイには私のほかに中国系の社長を含めて、4人の社員がいたんですが、社長が中国のテレビ局の日本支社でジャーナリストをしていた経験がある以外、過去に映画業界で仕事をしたことがある人はひとりもいなかったんです。

海外の映画を1本買うにしても、普通なら映画祭のマーケットに行ったり、セラーに連絡したりするんでしょうけど、そんなノウハウを誰も持っていない状況でした。そんな中、社長から「今日中にタイの映画で買えそうな作品をリストアップして」みたいなことを言われて…。私は英語もろくにできないし、日本に入ってきてないタイ映画をどうやって調べたらいいんだろう? という感じで(苦笑)。

スマホに「HelloTalk」という語学系のアプリをインストールして、タイ語に設定して、タイで日本語を勉強したいという人たちを集めて「最近、おススメの映画を教えて」と聞いたりしたり、現地の大使館に直接、電話してみたり…。

めちゃくちゃ非効率なんですけど、何とかやり方を探すという感じで、すごく鍛えられましたし、逆に通常のやり方を知らないからこそ、既存の方法にとらわれずにいろんな新しいことを試すこともできたのかなと思います。


《黒豆直樹》

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