第92回アカデミー賞最優秀国際長編映画部門オランダ代表作『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』より、日本版ポスタービジュアル、予告編映像、場面写真が解禁された。
少女アルマは、オランダ生まれのボスニア人。両親は戦火に揺れた祖国を離れ、オランダで彼女を育ててきた。やがて父はひとり祖国へ戻り、消息は遠ざかっていた。そんな父が入院したという知らせが届き、母に言われるまま、アルマはたったひとりでボスニアへと向かう。

出迎えたのは、終始ぶっきらぼうで何の手助けもしてくれない従兄のエミル。部屋に置き去りにされ、キャリーケースは壊れ、荷物も取り出せず、居場所のない空間に身を持て余す。そんな時、アパートの扉の前で眠り込んでいた彼女に声をかけたのは、エミルの“インターン”を名乗るデニスだった。彼だけが、彼女の話に耳を傾けてくれる。
ようやく父のいる町を目指し、小さなキャリーケースを引いてバスに乗り込むが、休憩の間にバスは彼女を置き去りにし、荷物だけを乗せたまま走り去ってしまうのだった…。
本作は、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のエナ・センディヤレヴィッチ監督の初長編作品で、自身のルーツを投影した半自伝的な作品となっている。経済的格差が途方もなく大きい西欧(オランダ)と東欧(ボスニア)の文化的対立や、移民といったテーマがさりげなく織り込まれた本作は、第48回ロッテルダム国際映画祭ではタイガーアワード特別賞を受賞し、国際的にも高く評価された。
1992年にユーゴスラビアから独立し、激しい内戦を経験したボスニア。いまなお悲惨な紛争の傷跡が残るが、監督はアルマという新たな世代のまなざしを通して、そのネガティブなイメージを刷新している。また、監督が心酔するジム・ジャームッシュの代表作『ストレンジャー・ザン・パラダイス』から多大なインスピレーションを受けているという。
ちなみにタイトルである『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』は、監督が愛するスコットランド出身のポストロックバンド「モグワイ」の楽曲名に由来している。

監督自身のルーツが色濃く投影されたアルマは「自分はどこに属しているのか」「本当の居場所はどこなのか」を問い続ける。監督曰く、アルマというキャラクターを「カフカ的な旅に出る現代の『不思議の国のアリス』」と表現し、その複雑で曲がりくねった旅路を、撮影、美術、衣装などの映像的なディテールにこだわり抜いて描いた。

解禁されたポスタービジュアルは、アルマがプールサイドで日光浴をしながら見知らぬ老婦人から“男とは何か”と指南を受けるシーンを印象的に使用している。パステルカラーを基調としたキュートなデザインとなっている。
『テイク・ミー・サムウェア・ナイス』は9月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開。


