第38回東京国際映画祭の「黒澤明賞」授賞式が11月3日(月・祝)、東京・帝国ホテルで行われ、今年の受賞者である李相日監督とクロエ・ジャオ監督が出席。授賞式には、李監督の『国宝』で主演を務めた俳優の吉沢亮がサプライズ登場した。
吉沢は「李監督とは『国宝』という作品で、初めてご一緒させていただきました。映画に対する覚悟と言いますか、執念のようなもの。それにものすごく大きな愛を感じ、それが僕らを引き上げてくださった」と現場をふり返った。

また、「僕のことを、僕自身よりも信じてくれているなとも感じた」そうで、「日々その思いに応えるのが非常に苦しくも、それ以上に幸せを感じる撮影期間でした。ありがとうございます」と李監督への感謝を新たにしていた。

そんな吉沢の祝福を受けて、李監督は「後ろから(吉沢の)背中を見ていて、もう女形の背中じゃないなと確認できた。ようやく役が抜けてホッとしました(笑)」と安どの表情。黒澤明という存在は「とてつもない大きな存在」だといい、「歌舞伎で言う大名跡に、僕のようなアウトサイダーが向かっていく。その怖さと重責を感じています」と背筋を伸ばした。

吉沢はジャオ監督との対面にも感激した表情で、ジャオ監督が2017年に製作した映画『ザ・ライダー』を、「本当に強い衝撃を受けました。荒野を生きる人々の、荒々しくも美しいリアルな息づかいを感じ、素晴らしい映画体験をさせていただいた」と絶賛していた。
第93回アカデミー賞で3冠に輝いた『ノマドランド』で知られるジャオ監督は、今回の黒澤明賞受賞に対し「私自身も、アジアの女性監督として、日本の文化や黒澤明監督には大きな影響を受けている。この賞をいただき、とても勇気づけられた思いです」と感謝の言葉。今年1月には人生初の歌舞伎鑑賞をしたそうで、「李監督の『国宝』を見るのを楽しみにしています」と笑顔で語っていた。
黒澤明賞は、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞。今年は、山田洋次監督、奈良橋陽子氏、川本三郎氏、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの4名が選考委員を務めた。

第38回東京国際映画祭は10月27日(月)~11月5日(水)まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。なお、ジャオ監督の最新作『ハムネット』(26年春公開)が、第38回東京国際映画祭のクロージング作品として上映される。



