『ハムネット』で第98回アカデミー賞主演女優賞を初受賞したばかりのジェシー・バックリー、変幻自在な演技で知られるアカデミー賞常連のクリスチャン・ベールが贈る映画『ザ・ブライド!』が、いよいよ4月3日(金)より公開。
監督デビュー作『ロスト・ドーター』で第94回アカデミー賞脚本賞にノミネートされたマギー・ギレンホールが、世界で最も魅力的な物語のひとつ『フランケンシュタインの花嫁』に着想を得て大胆で型破りな形に広げ、“声”すら持たなかった花嫁《ブライド》に主体性と、知性、欲求、魂を与えて、愛と解放をもたらす革命的な物語を作りあげた。
そんな唯一無二の花嫁《ブライド》を生み出したマギー・ギレンホール監督とジェシー・バックリーがお互いについて語った。

1930年代のアメリカ・シカゴ、伴侶を求める孤独な怪物“フランク”(クリスチャン・ベール)は、革新的な技術を持つユーフォロニウス博士(アネット・ベニング)に依頼、殺害された若い女性を蘇生させ、ブライド(ジェシー・バックリー)が誕生する。
やがてある夜を境に、2人の逃避行が始まる。それは情熱と好奇心、反逆と暴力、愛と破壊の《ハネムーン》。圧倒的なストーリーテリングと映像美で、観る者を引き込んでいく。
「この映画で私が書いた役柄には、本当に優れた女優が必要だったのですが、彼女こそがその役柄にふさわしい女優でした」と、マギー・ギレンホール監督はジェシー・バックリーへの絶大な信頼を明かす。

ジェシー・バックリーとは前作『ロスト・ドーター』に続くタッグ。監督は「彼女は本当に素晴らしい。一緒に仕事をする中で、お互いに同じ価値観を持つもの同士だと感じていたと思います」と絶賛を贈り、本作では「作品の可能性を狭めてしまわないよう、彼女を想定して脚本を書くのを我慢する必要がありました。でも書き終えたとき『やっぱりジェシーしかいない』と思いました」と言う。
「彼女は人間の感情の全スペクトラムを抱えられる。激しさの隣に深い脆さがあり、理知的で非合理的、セクシーでときに醜い。彼女が女優として突出しているのは、そのすべての要素を作品に落とし込めるところです。花嫁《ブライド》という役は、正しくそのすべての要素を必要としていました」と評している。
「私たちが紡ぎたい物語の中に自分自身を見出し、支援してくれた」パートナーの存在

ジェシー・バックリーを起用するためならばスタジオ側と「闘う」覚悟もあった、と「Entertainment Weekly」のインタビューで語ったこともあるマギー・ギレンホール監督。
「それは(実際に)闘うということではなく、後ろ盾となることについての話です。私が必要としたアーティストへの、決して妥協することのない、たゆまぬ支援ということなのです」と語る。
最終的に彼女たちを支援したのは、『ジョーカー』をはじめ、本年度アカデミー賞で作品賞を競った『ワン・バトル・アフター・アナザー』と『罪人たち』、さらに『WEAPONS/ウェポンズ』でエイミー・マディガンが40年ぶりのノミネートで助演女優賞を受賞するなど話題をさらったワーナー・ブラザース・ピクチャーズだ。
「実は(共同CEOの)パム・アブディとマイク・デ・ルカ、そしてワーナー・ブラザースは驚くほど協力的でした。彼らはマギーのヴィジョンを理解し、それを強く支持してくれました。『私たちはあなたを支持する。この作品を世に出したい。この物語におけるあなたの女性的な視点に共感する』と言ってくれたのです」とジェシー・バックリーは言う。
「それから私に対しても同様に、非常に大きな支援をいただきました。ですから明確にしておきたいのですが、ワーナー・ブラザースは私たち女性アーティストが紡ぐこの物語を、常に非常に力強く支援し擁護してくれたのです」。

さらにマギー・ギレンホール監督は、「特にパム・アブディは、脚本を読んで、『この体験を理解できる。この女性的な視点に共感するので、絶対に製作したい』と言ってくれたのです。私たちに必要なのは、女性アーティスト仲間だけでなく、私たちが紡ぎたい物語の中に自分自身を見出し、『これは観客に届けなければならない』と言ってくれるスタジオを運営する女性たちです」と話し、「素晴らしいパートナーシップ」だったという。
その連帯の意識は作品にも生かされたのか尋ねると、「脚本執筆は、まあ、私1人で部屋に閉じこもっての作業でした。でももちろん、私の頭の中には、自分が感動したり、興奮したり、ワクワクしたり怒ったりした、あらゆる影響やアイデアや物事、つまり私がこの世界で経験したすべてが詰まっています。脚本が完成してから、ようやく共同作業としての経験が始まるんです」とマギー・ギレンホール監督は語る。
マギー・ギレンホールは「私の人生において最も重要な女性の1人」

その共同作業に欠かせなかった絶対的な最重要ピースが、ジェシー・バックリーだ。
彼女はマギー・ギレンホール監督に対し「根っからのアーティスト」と言い、「恐れを知らない。たとえ恐れがあっても、それに向かって歩いていく人。生きるとはどういうことか、その“すべて”を求めている。女性として、それを求めるだけではなく、作品の中でそれを実行する監督に出会えたことは、私にとって最大の学びであり、自由であり、特権でした」と称賛とリスペクトを惜しまない。
今回、そんな監督の期待に応えられたという手応えはあるかとジェシー・バックリーに尋ねてみると、「応えられましたよ(笑)」と代わりに答えるマギー・ギレンホール監督。
ジェシー・バックリー自身は「それには、どう答えていいかわからない」としながらも、「私のことを応援してくれた人たちに、心から感謝しています。だってチャンスを得るというのは難しいことですからね」と続ける。

「人生のさまざまな段階で、たくさんの人が『君のこと分かるよ』とか、『育てたいと思うものを持っている。未知なる領域へ少し踏み込んでみようじゃないか』などと言ってくれました。私にとってマギーは人生で最も大切な女性の1人です。これまで議論されたことのないこと、あるいは注目されなかったことに対して、危険を顧みず、勇敢に立ち向かう人なんです」と力を込める。
「『ザ・ブライド』を創る過程で、私の中にマギーの存在なしに成り立つ部分はなかったと思います。私には彼女が必要でした。クリスチャン(・ベール)も必要でしたし、すべてが必要だったのです。とてつもなく大きな挑戦で、私はこの役のために1年かけて準備しました。いままでで最も大きな役作りでしたからね」とジェシー・バックリー。公開時期は前後するが、本作での挑戦があったことで『ハムネット』の演技が引き出されたのかもしれない。

「絶対的な愛と尊敬と興奮と好奇心を持って、『さあ、飛び込もう。この女性が本当に誰なのか、探りに行きたい』と思ったのです。花嫁《ブライド》とは一体何者なのでしょう? フランケンシュタインと同じように愛と世界への繋がりを渇望するこの女性は、一体何者なのでしょうか?」とキャラクターを探求していったという。
驚異の一人三役、ジェシー・バックリー「人生が様変わりするような経験だった」

また、ジェシー・バックリーは「この映画は、これまで声を与えられたことのなかったブライドに、声を与える物語です。彼女はただ“伴侶として蘇らされる”だけでは満足せず、自立を求める。そして、この世界で自分自身を探す旅に出る。そうすることで初めて、フランクと本当の意味で対等に関係を結ぶことができるのです」と、花嫁《ブライド》について語っている。
本作で彼女が演じたのは、そんな花嫁《ブライド》と、若くして殺され声を上げることを奪われたアイダという女性、そしてアイダの肉体を借りて内なる声を叫び続ける「フランケンシュタイン」の原作者メアリー・シェリー。一人三役を見事に演じ分けている。
「ありがとうございます。(役作りにあたり)自分自身との対話は本当に興味深いものでした。なぜなら、自己を発見するためには、マギーの素晴らしい頭脳から、自分自身という幾つもの影の間で、非常に骨の折れる徹底的な対話を繰り広げる必要があったからです」とジェシー・バックリーは打ち明ける。
「つまり、メアリー・シェリーは新たな創造のために、アイダの存在を絶対的に必要とし、要求しているのです。彼女はまさにリアルタイムで、自身が紡ぎ出す物語を発見しています。そして花嫁《ブライド》が蘇生した後も、『この世界で私たちはどこで自らを解放するのか?』という電流のような思いがあり続けます。まだ昇華しきれていない自分の断片とは何なのか、自らが投影するものは何か? 人との関係の外へ踏み出す自分なりの方法とは? そしてありのままの自分すべてを、どれだけ愛し愛されることができるのか? 長い旅に出て、私の中のあらゆる女性たちとの対話に真に向き合うことは、人生が様変わりするような経験だったと思います」とふり返っている。

「それはまるで夢のようであり、老婆、乙女、花嫁《ブライド》などが登場するおとぎ話、寓話、のようなものでした。花嫁《ブライド》は原型(アーキタイプ)でありながら、その原型を排除し、誰かの花嫁ではなく、単に花嫁《ブライド》であるという彼女自身のアイデンティティの本質へと自らを凝縮させるのです。それは胸躍る体験で、最高に楽しかったですね」と、その旅路の手応えを語る。
そしてマギー・ギレンホール監督が、「ある意味、彼女らは皆ひとつだと言えるでしょう。メアリー・シェリーは花嫁《ブライド》の心の中に存在し、もちろんアイダも花嫁《ブライド》の中にいて、彼女たちはすべて1人の人間でありながら、この独特な方法で表現されているのです」と補うように続けた。

多面的で幾層もの姿を持つ、“誰かの花嫁”ではない、唯一無二の花嫁《ブライド》。怒りの声を上げながら“怪物”フランクと2人で織りなす、パンクで型破りなロマンスは見逃せない。
『ザ・ブライド!』は4月3日(金)より全国にて公開。


