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【次第に不穏に…】80年代LA版「ゴシップガール」×シリアルキラー!? ライアン・マーフィー製作総指揮「いくつもの鋭い破片」1~2話レビュー

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「いくつもの鋭い破片」 © 2026 Disney and its related entities
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ブレット・イーストン・エリスのベストセラー小説を、ライアン・マーフィー製作総指揮でドラマ化する「いくつもの鋭い破片」。現代アメリカを代表する人気作家とドラマ界のトップクリエイターの顔合わせが不穏な魅力を醸し出し、興味をかき立てられずにはいられない今夏の注目作が、8月6日よりディズニープラスで独占配信される。

ブレット・イーストン・エリスと言えば、読書家だけでなく映画ファンにも馴染み深い作家。若き日のロバート・ダウニー・Jr.が主演を務める『レス・ザン・ゼロ』をはじめ、のちに舞台ミュージカル化もされた『アメリカン・サイコ』、故ジェームズ・ヴァン・ダー・ビークら当時の若手人気俳優たちが総出演した『ルールズ・オブ・アトラクション』など、ほとんどの著作が映像化されている。

そんな彼の現状の最新作である「いくつもの鋭い破片」は2023年に出版。日本語の翻訳版は今年のはじめに発売された。

※以下、一部物語の展開に言及する表現がございます。ご注意ください。

リッチな若者たちのゴージャスな青春ドラマと思いきや、次第に不穏な空気が…

物語の舞台は、80年代のロサンゼルス。主人公のブレット(イグビー・リグニー)は名門校に通う裕福な高校生で、ガールフレンドのデビー(ヘイズ・ワーナー)や幼馴染みのスーザン(カイア・ガーバー)ら学校の仲間たちとともに富と若さを享受し、パーティーとセックスとドラッグに明け暮れた青春を謳歌している。

一方、作家の卵でもあるブレットには、豪邸でひとり静かに小説を書く時間も。ちなみに、原作によると劇中でブレットが書いている小説こそが「レス・ザン・ゼロ」であり、主人公のブレットはブレット・イーストン・エリス自身を思わせるキャラクターであることが分かる。「レス・ザン・ゼロ」も「いくつもの鋭い破片」同様、裕福な若者たちを主人公にした物語だった。


となるとリッチな若者たちのゴージャスな青春ドラマのように思えるし、第1話冒頭で高級車を乗り回し、クールに振る舞うブレットの姿は80年代LA版「ゴシップガール」と言ったところ。だが、物語には次第に不穏な空気が立ち込め始める。

随所に差し込まれるブレットのモノローグにあるように、ロサンゼルスの街にはカルト集団が暗い影を落とし、何人ものシリアルキラーが徘徊。ブレットと仲間たちも、若者を標的にする連続殺人犯の脅威にさらされていく。そんな中、ブレットたちの学校に突然、妖しいほど魅力的なロバート(ホーマー・ギア)が転入。危険を察知したブレットはロバートを警戒し、「もしかしたら彼が殺人犯なのでは?」と疑惑の目を向けるようになる。

ブレット(イグビー・リグニー)は作家の卵でもある

第1話は、ブレットたちが高校の最終学年を迎える1981年の新学期から。80年代LA版「ゴシップガール」と言った通り、リッチな高校生たちの満ち足りているようで満ち足りていない青春が描かれていく。ブレットとデビーの交際は傍から見れば羨むものだが、ブレットは男性に惹かれていて、秘密の肉体関係を結んでいる男子同級生の存在も。そうとは知らないデビーは映画プロデューサーの父(ウェス・ベントリー)を持つお嬢様で、美しく不安定な母(エヴァン・レイチェル・ウッド)との関係はゆがんでおり、自身も美しくあることに取り憑かれている。

また、彼らと仲良しのスーザンと恋人のトム(グラハム・キャンベル)はキング&クイーンとして学園に君臨し、ブレットは完璧なスーザンとハンサムなトムにもそれぞれ魅力を感じているよう。華やかな青春の裏には、アイデンティティーの問題や10代ならではの心のひずみ、崩壊しかねない人間関係の脆さが潜んでいる。

そうした青春の危うきドラマに並行し、物語の軸になってくるのがシリアルキラーの猛威だ。世間を賑わせるシリアルキラーの魔の手はブレットのごく身近にもおよび、第2話は囚われの身らしき友人の音声入りカセットテープがブレット宛に送られてくる展開で幕を閉じる。それに前後し、学校のグリフィン像が鯉の死骸でいたずらされる事件も。不可解な事態の連続を受け、ロバートに対するブレットの疑念はパラノイアにも似たものになっていく。

思い浮かぶ、「アメリカン・サイコ」の存在

ここで思い浮かぶのが、ブレット・イーストン・エリスの代表作にも数えられる「アメリカン・サイコ」の存在。

「いくつもの鋭い破片」から少し後の80年代を舞台にした同作は、ウォール街のエリートビジネスマンが殺人衝動に駆られ、次々と殺人を犯す物語だった。「いくつもの鋭い破片」は物語の内容から「レス・ザン・ゼロ」とも「アメリカン・サイコ」とも関連づけられており、劇中のサスペンス部分はブレットと「アメリカン・サイコ」の主人公パトリック・ベイトマンの対決にも見える。

ただし、気をつけておきたいのは、事件の渦中にいるブレットが多感な作家であり、物語自体も彼の目線で進んでいるということ。果たして、ブレットが抱く印象はすべて正しいのか? ロバートは本当に怪しいのか? このあたりがシリーズ全9話の中でどう着地するのか、注視していく必要がありそうだ。

ロバートは本当に怪しいのか…?

ちなみに、ブレットとロバートが初めて遭遇するのは『シャイニング』(80年公開)が上映される映画館でのこと。その原作者であり、ホラーの巨匠として知られるスティーヴン・キングを敬愛するブレットが、映画版への期待を胸に映画館へ足を運ぶ描写が第1話開始直後にある。それ以外にも、劇中には当時のポップカルチャーに言及したシーンが満載。デビーの父親がアカデミー賞に輝く映画プロデューサーであることもあり、『サタデー・ナイト・フィーバー』(77年)や『グリース』(78年)など、ヒット映画のタイトルがセリフにしばしば登場する。

また、劇中音楽にも当時のヒットソングがふんだんに使われ、第1話でブレットが高級車を走らせながら流す曲はずばりトーキング・ヘッズの「Psycho Killer」(77年)。ヒューマン・リーグの「Don’t You Want Me」(81年)を耳にしたスーザンが「この曲大好き!」と言って踊り出すシーンや、ブレットがバグルスの「Video Killed the Radio Star」(79年)のMV(MTVで初めて流れたMVとしても有名)を見て目をキラキラ輝かせるシーンもある。

また、80年代初頭を表現するのは映画や音楽だけでなく、登場人物たちのファッションや映像のレトロな質感も。時代をリッチに堪能するブレットらがとにかくおしゃれで、こだわり抜かれた世界観にウキウキさせられる。

製作総指揮のライアン・マーフィーは、第1話を自ら監督。時代を切り取る手腕は特に、O・J・シンプソン裁判やジャンニ・ヴェルサーチの暗殺など、現実の事件をシーズンごとの題材にした「アメリカン・クライム・ストーリー」シリーズで証明済みだと言える。彼が抜擢したキャストたちも80年代世界の中で輝きを放ち、Netflixの「ミッドナイト・クラブ」も印象深いイグビー・リグニーがブレット役を好演。リチャード・ギアの息子であるホーマー・ギアがミステリアスなロバートを、シンディ・クロフォードの娘であるカイア・ガーバーがスーザンを演じている。

余談だが、ギアとクロフォードは90年代に夫婦だった。ライアン・マーフィーと言えば現スーパーマンのデヴィッド・コレンスウェットをいち早く見出して「ザ・ポリティシャン」や「ハリウッド」に起用するなど、スター俳優を生み出す能力に長けた一面も。このドラマから、次なるデヴィッド・コレンスウェットが誕生するかにも注目だ。

「いくつもの鋭い破片」視聴ページへ
「いくつもの鋭い破片」<字幕版・吹替版>はディズニープラス スターにて独占配信中(全9話/初回と第2週は2話ずつ配信、以降は1話、2話、1話、1話ずつ配信)。

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《渡邉ひかる》

映画&海外ドラマライター 渡邉ひかる

ビデオ業界誌編集を経て、フリーランスの映画&海外ドラマライターに。映画誌、ファッション誌、テレビ誌などで執筆中。毎日が映画&海外ドラマ漬け。人見知りなのにインタビュー好き。

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