主人公の安田松太郎(緒形拳)は名古屋のとある高校の校長を勤め上げ、定年退職した。しかし教育者としての厳格さが裏目にでたのか、アルコール依存症の妻は亡くなり、一人娘は父親を憎んでいる。妻の葬式を済ませたあと、松太郎は家を引き払い、なにかを精算するかのように質素なアパートに移り住む。その部屋の壁一つ隔てたところに、母親に虐待されている少女、幸(杉浦花菜)の世界があった。そんな幸を松太郎は救いだし、心を閉ざした彼女の手を取り旅に出る。松太郎にとってそれは亡き妻と自分の人生に対する贖罪の旅でもあった。しかし同時に松太郎は少女誘拐犯として指名手配されていた…。奥田瑛二監督の長編3作目。第30回モントリオール世界映画祭にて最高賞となるグランプリをはじめ国際批評家連盟賞、エキュメニック賞の三冠を受賞した、映画作家としての確かな実力を示す涙と感動の名作。
奥田瑛二