獄中から無実を訴え続けている死刑囚がます。奥西勝、86歳。昭和36年、三重県名張市の小さな村の懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡しました。「名張毒事件」です。奥西 は一度は犯行を自白しますが、逮捕後、一貫して「警察に自白を強要された」と主張、1審は無罪。しかし、2審で死刑判決。昭和47年、最高裁で死刑が確定しました。戦後唯一、無罪からの逆転死刑判決です。事件から51年―際限なく繰り返される再審請求と取り消し。その間、奥西は2桁を越える囚人が死刑台に行くのを見送りました。いつ自分に訪れるか分からない処刑に怯えながら―。
齋藤潤一