大都市モスクワ。道路工事ラッシュの中、市内各所で振動の影響により地下水が漏れ始めていた。家庭での断水も相次ぎ、店で水を買い漁る人々が続出している。そんな中、地下鉄のトンネル内のひびから水が染みだしているのを見つけたベテラン地下鉄職員のセルゲイは、長年の勘からその水の匂いに不吉なものを感じ、上司に点検を促す。しかし、コンピューター管理された情報のみを信じる上司は、アルコールで問題を起こしがちなセルゲイの発言を、全く相手にしようとしなかった。ただひとり、地下壕マニアの若い運転手のみが、文化公園駅の周囲には軍が昔作った塹壕が張り巡らされており、それを下水道に偽装して行った杜撰な工事の影響を危惧してセルゲイに耳を傾けるだけだった。
アントン・メゲルディチェフ