土佐浪士の志戸原兼作は、吉岡寅之助らと手を組み、佐幕派の暗殺を企てていた。ある夜、彼ら暗殺隊は佐平の家を襲い、妻子まで斬り殺した。引きあげる際、戸の隙間から幼女が異様な眼差しで覗いているのがやけに兼作の胸に残った。数日後、役人の手によって不覚にも傷を負った兼作は、祇園の裏小路で町娘お鶴の手当をうける。その家には先日佐平の家で見かけた同じ幼女が私を睨んでいた。恐怖にかられた兼作は、殺した人々の供養にと寂光院で仏像の模写にかかったが、筆は思うに進まない。ついに人斬り稼業に愛想がつきた兼作だったが...。
内出好吉