祖先の勲功によって代々高官を輩出する名家、賈家一族の貴公子・賈宝玉(か ほうぎょく)は、立身出世のための勉学を嫌い、詩を愛する自由奔放な青年。家長である賈母・史太君の寵愛を受け、壮麗な邸宅で若い才女たちに囲まれながら、何不自由なく遊び暮らしていた。しかし、華やかな暮らしを続ける一方で、宮廷からこれまでの債務を取り立てられた賈家一族は、その返済方法に頭を抱えていた。ある時、江南の塩政大臣であった林如海が、莫大な財産と一人娘の林黛玉(りん たいぎょく)を残し、この世を去る。一人残された黛玉は、母方の祖母である賈母を頼り、栄国府での暮らしを続けることに。神経質で嫉妬深く病弱ながらも、聡明で詩才に恵まれた黛玉こそが、宝玉の心を最も惹きつける存在だった。魂で結ばれたかのように引かれ合う2人だが、時に素直になれず、すれ違いを繰り返していた。一方で、宝玉の叔母である薛夫人一家も、訳あって賈家を頼り、栄国府を訪れていた。その一人娘の薛宝釵(せつ ほうさ)は、優雅で品行方正であったため、邸内の者からも慕われていた。宝釵が身に着ける金鎖には、宝玉の持つ〈通霊宝玉〉と対になる句が刻まれていた。しきたりに縛られ、嫉妬や欲望が渦巻く大邸宅での暮らし。ある時、宝玉の姉・賈元春(か げんしゅん)が貴妃となり、里帰りのための別院が造営されることになった。その膨大な資金には、秘密裏に林如海の遺産が費やされる。そんなある日、宝玉は自身の命のお守りとも言える大切な〈通霊宝玉〉を失くしてしまう。邸内を隈なく探しても一向に〈通霊宝玉〉は見つからず、宝玉はせん妄状態となってしまう。医師もなす術がなく、次第に生命力が弱っていく宝玉の命を救うため、賈家の財政を切り盛りする王熙鳳は、金玉の縁で結ばれる運命にある宝玉と宝釵の結婚を提案する。それは、裕福な皇商である薛家と結びつくことで、賈家の財政危機を脱するためでもあった。図らずも宝玉と宝釵の結婚計画を知ってしまった黛玉は、失意と絶望の中で病に倒れ、息を引き取る。そして、愛する黛玉がこの世を去ったことを知った宝玉は、世俗を捨て出家の道を選ぶのだった…。
フー・メイ