セレブ中のセレブ、ソフィア・コッポラが描く“父娘”

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フランシス・フォード・コッポラとソフィア・コッポラ -(C) Titti Fabi/Camera Press/AFLO
  • フランシス・フォード・コッポラとソフィア・コッポラ -(C) Titti Fabi/Camera Press/AFLO
  • 『SOMEWHERE』 -(C) 2010 - Somewhere LLC
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  • ソフィア・コッポラ -(C) Kazuko WAKAYAMA
世界的に著名な親を持つということは、どんな気持ちなのでしょうか。誇らしいのか、楽しいのか、それとも苦労の連続なのか。親と子にも相性というのがありますが、親が有名であるがゆえに、関係を築くのが難しくなるということは実際にありそうです。忙しすぎてかまってもらえなかったり、普通の人よりも誘惑が多いせいか、親が恋多き人物だったり、同じ道に進もうとしたら親と才能を比べられたり。

でも、彼女の場合は、すべてをしっかり乗り越えている様子です。彼女、とはソフィア・コッポラ。映画界の巨人、フランシス・フォード・コッポラを父に持つ、セレブの中のセレブ。しかも、臆せず父と同じ道を選び、きちんと評価もされている。なかなかこうはいきません。

新作『SOMEWHERE』では、ハリウッドの映画スターで、すさんだセレブ生活をおくるジョニー・マルコと、11歳の娘・クレオが過ごす、かけがえのない日々を描いています。彼らはいわば、私たちがパパラッチの仕事を通して、その生活を覗き見る人々。まさに、コッポラ親子もそうでした。つまりこの作品は、巨匠の父と過ごしたソフィア自身の実体験や、自らが2人の子供たちと過ごす日々を随所に投影した、極めてパーソナルな物語。多感な少女たちの姿を映し出した、“ガーリー”な映画を得意とするソフィアが、自らも親となった経験を経て、“親子”という新たなテーマを得て、新境地を開いたことでも話題に。第67回のヴェネチア国際映画祭では、コンペ部門のグランプリである金獅子賞を受賞したのですから、天晴れです。

では、高評価を受けた、そのパーソナルな物語をちょっと覗いてみると…。主人公のジョニーはハリウッドの伝説的なホテル“シャトー・マーモント”で暮らしています。誰もが憧れる華やかな生活を送っているように見えますが、実は彼の生活は時間つぶしの連続です。部屋にポールダンサーを呼んでみても、それほど楽しんでいる様子はないし、友達がパーティを開いても、それほど気乗りしている風でもない。エージェントから、「ここに行って、あの仕事をこなして来て!」と言われれば、言われたままに動くものの、それ以外の時間は無気力さが支配していて、壮大な暇つぶしであるかのように見えるのです。そんな生活に、クレオが飛び込んできます。前妻の都合で、ジョニーと一時的に同居するためにやってきたのです。ホテルの部屋で2人は、Wiiのギターゲームに興じたり、プールサイドで過ごしたり、一緒に音楽を聴いてみたりと、友達のように楽しく過ごします。それは、孤独で空虚なそれまでの時間とは全く違った、かけがえのない時間なのです。そんなかけがえのないものに気づいてしまえば、もう後戻りなどできません。果たしてジョニーは、どうするのでしょうか。

実は、ソフィアも、父であるフランシス・フォード・コッポラと“シャトー・マーモント”で過ごした経験があるのだとか。「子供の頃、父がいろいろな場所で撮影するとき、一緒に行ってよくホテルに泊まっていたんです」と話しています。そんな思い出の場所で撮影された作品ですが、すべてがハッピーな思い出ばかりだったわけではなさそう。

仲の良い映画一家に育ち、父と母の離婚も経験せず、父の仕事にもよくついていったというソフィア。でも、この作品を観ていると、そんな彼女にも、劇中でクレオが寂しげで不安げな表情を見せるときのように、不安定だったことがあるのかもしれないと思うのです。著名な父を持つことは、やはりどこか切なさと隣り合わせなのでしょう。自分の父親なのにその存在があまりに大きすぎて、遠く感じてしまったり、他人のように思えたりすることもあったはず。11歳だというのに、どこか大人びた視線と距離感で父を眺めるクレオは、常に冷静なソフィアと印象が重なります。劇中に登場するジョニーは、自分であって、父・コッポラの投影でもあり、娘・クレオは、やはり自分でもあり、自分の子供たちの姿の投影なのかもしれません。

ソフィア自身、「クレオは、ショービズ界のある夫婦の子供にインスパイアされたキャラクターです。でも、人を惹きつけるパワフルな父親を持った、私自身の記憶にもインスパイアされています。すべてが私のことではありませんが、私の子供時代に由来する要素もいくつかあります」と話しています。どこの部分が実体験なのか、興味をそそられるところですが、イタリアのホテルでの朝食シーンだったらどうしよう…と下世話な想像をしたりして。(気になる方は、映画をチェック!)

いずれにしろ、いつも多くの人々に囲まれて、華やかな生活を送ってきたように見えて、ソフィアは案外、孤独に詳しいということも、本作を含むこれまでの作品を観ていればよくわかります。やはり、私たちにはわからない、セレブ親子ならではの寂しさというのはあるのでしょう。

でも、その分、私たちには思いもよらないゴージャスな経験もしてきたはず。“パパ”コッポラが、娘をはじめ家族に、深い愛情を注いでいることは有名です。特に自分のワイナリーで、愛娘ソフィアのためにワインを造ってしまったなどという話を聞けば、愛情表現もケタ違いだなとしみじみ。自分の仕事ゆえに、家族に寂しい思いや、不便をかけさせたことも少なくないことを承知しているから、穴埋めをするときは、しっかりと抜かりなくやっているのかもしれませんね。そのためか、セレブ一家にありがちな「みんな、バラバラ…」という事態にも陥ることなく、コッポラファミリーの絆の強さはことに有名。むしろ、危うい世界にいるからこそ、なのかもしれません。

実際に、本作でも製作総指揮はパパの役目。製作は兄・ロマンの仕事。2人とも、自分のキャリア、これまでのコネクションを最大限に駆使して、ソフィアをサポートしたわけです。美しい家族愛、お見事。

それにしても、娘が作ったセレブ親子の物語を、パパはどんな思いで観たのでしょうか。娘は昔、こんな風に思っていたのかとちょっと切なくなったりして。かなり気になるところです。でも、間違いないのは、ここまで立派に育った娘を見て、誇らしい気持ちでいっぱいだろうということですね。



特集「ソフィア・コッポラ's セレブ・ワールド」
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© Titti Fabi/Camera Press/AFLO
© Kazuko WAKAYAMA
《text:June Makiguchi》

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