『マシニスト』ブラッド・アンダーソン監督来日インタビュー
すでに1年間365日眠っていない——この衝撃的なキャッチフレーズを冠する映画のタイトルは『マシニスト』。斬新な構成と独特の映像センスでサンダンス映画祭を賑わせた本作の監督、ブラッド・アンダーソンがプロモーションのために来日。作品の秘密を探るべく、アンダーソン監督にインタビューを行った。
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まず何よりも観客の目を奪うのは、主人公である不眠症の機械工・トレバーを演じたクリスチャン・ベイルの異様に痩せ衰えた身体だろう。これはベイルが自主的につくりあげたものらしい。「もともとシナリオに“歩く骸骨”という表現があったんだ。クリスチャン・ベイルは書かれていることを忠実に体現しようとする俳優なので、こちらが言うまでもなく体重を落としてきた。結果的にとてもいい画が撮れたし、あそこまでやってくれた心意気には本当に感謝している」とアンダーソン監督も満足な様子。
『マシニスト』を作るにあたってアンダーソン監督は、不吉な雰囲気をビジュアル化できる素材を求めていたところ、本作のシナリオと出会い、その奇妙で風変わりな世界観に惚れ込んだという。ところがアメリカでは「エンディングがダークすぎる」との理由で出資を受けられず、3年後にスペインの製作会社によって撮影出来ることになった。そのため、舞台はロサンゼルスという設定だが、実際の撮影はバルセロナで行われた。バルセロナはアンダーソン監督によると「面白いことに、どこの街でも文化的中心部を離れて少し郊外へ行くと、驚くほどアメリカに似ている」のだそうだ。その成果はぜひとも本編でお確かめいただきたい。
そして本作のキーとなるのが“ハングマンゲーム”だ。日本ではなじみが薄いが、アメリカでは子供が単語を覚える方法としてポピュラーに用いられている。ここではネタばれになるので詳しくは言えないが、人生のパズルを解いていく過程を表わす重要なメタファー(隠喩)として効果的に使われているとのこと。そのほかにも空港や遊園地などが印象的なメタファーとなっており、そちらにも注目して観ると面白いだろう。
ちなみにアンダーソン監督は9か月前に娘が生まれたばかりだそうで、それからというもの常に寝不足が続いているらしい。子供には自分の映画を観てもらいたいか? との質問に「もちろん! でも17歳になってからね」と答えたその笑顔はまさに父親だった。
主演のクリスチャン・ベイルは渡辺謙も出演する2005年公開の『バットマン ビギンズ』で、見事バットマン役を射止めている。作品ごとにがらりと雰囲気を変えるベイルの変幻自在ぶりには今後も目が離せない。そんな彼をここまでダイエットさせた、アンダーソン監督の『マシニスト』を、見逃すわけにはいかないだろう。