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「あとは観客が好きに解釈してくれればいい」フランソワ・オゾンが語る『エンジェル』

『まぼろし』や『8人の女たち』、『スイミング・プール』といった作品で、女性の美しさばかりか業の深さまでも、誰も思いつかないような形で活写してみせたフランソワ・オゾン。前作『ぼくを葬る』は、彼の分身とも思える青年の死生観の物語だったが、最新作『エンジェル』は、再び女性が主人公。その波瀾万丈な半生を思いきりドラマティックに描く。貧しい家庭に生まれ、上流階級に強い憧れを抱いて育った少女・エンジェルが、やがて人気小説家となり、夢見た人生──富も名声も愛する男性も手に入れる。だが、過去やつらい現実とは向き合わず、自ら作り上げた虚構の世界に逃避することで、彼女の人生には、取り返しのつかない歪みが生じていく。往年のハリウッド映画を意識したカラフルな映像と、新たに見出したミューズ、ロモーラ・ガライの怪演が、ヒロインの悲哀をヴィヴィッドに訴えかけてくる。

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『エンジェル』 フランソワ・オゾン監督
『エンジェル』 フランソワ・オゾン監督
  • 『エンジェル』 フランソワ・オゾン監督
  • 『エンジェル』 -(C) 2006 - Fidelite Films - Headforce 2 - Scope Pictures - FOZ - Virtual films - Wild Bunch - France 2 Cinema
  • 『エンジェル』 フランソワ・オゾン監督
『まぼろし』や『8人の女たち』、『スイミング・プール』といった作品で、女性の美しさばかりか業の深さまでも、誰も思いつかないような形で活写してみせたフランソワ・オゾン。前作『ぼくを葬る』は、彼の分身とも思える青年の死生観の物語だったが、最新作『エンジェル』は、再び女性が主人公。その波瀾万丈な半生を思いきりドラマティックに描く。貧しい家庭に生まれ、上流階級に強い憧れを抱いて育った少女・エンジェルが、やがて人気小説家となり、夢見た人生──富も名声も愛する男性も手に入れる。だが、過去やつらい現実とは向き合わず、自ら作り上げた虚構の世界に逃避することで、彼女の人生には、取り返しのつかない歪みが生じていく。往年のハリウッド映画を意識したカラフルな映像と、新たに見出したミューズ、ロモーラ・ガライの怪演が、ヒロインの悲哀をヴィヴィッドに訴えかけてくる。

「僕は、男性の方が実は女性を描けるメリットがあると思う。男性の目で少し距離をおいて、女性を客観的に理解できるから」とオゾンは語る。「感性で物事をとらえる、女性ならではの思考が好きなんだ。映画では、男性はどうしてもアクション主体になりがちだけど、女性の方が豊かに描けると思う」。

オゾンにとって、初の英語作品となる本作は、イギリスの女流作家、エリザベス・テイラーの小説が原作。「友達から『このヒロインを気に入ると思うよ』と薦められたんだ。彼の言う通りで、僕はエンジェルに夢中になった」。

「映画を撮り終えたから、彼女との恋はもう終わり」と笑って前置きした後で、エンジェルというキャラクターの魅力をこう語った。
「自分に嘘をついている彼女の脆さに惹かれた。現実逃避したいという思いは僕自身も感じたことがある。子どもの頃は誰だって空想をするものだけど、エンジェルは大人になっても変わらず、生涯嘘をつき通した。そこに、切なさを感じたんだ」。

実際のロモーラ・ガライは金髪だが、『エンジェル』では黒髪のヒロインを演じている。
「原作に従ったわけだけど、とても良かったと思う。白い肌と青い瞳に黒髪という白雪姫みたいなビジュアルで、ヒロインの強い個性が表現できる。ちなみに、あれは日本製のウィッグなんだよ」。

『まぼろし』『エンジェル』を比較して、「どちらも現実を受け入れず、妄想の中に生きている女性の物語」と言い、「形を変えても、僕は結局同じことを描いているのかもしれない」と分析するオゾン。
「自分が感動した物語を、観客にも伝えたいと思って作ってる。だから、映画を作ったら、あとは観客が好きなように解釈してくれればいい」と言う。

「とても知的に自分の映画を解説する監督はフランスには大勢いる。『すごいインテリだ』と感心して、その監督の作った映画を観に行くと、駄作だったりしてね(笑)。僕自身はそういうギャップはなるべく作りたくない。くだらないことばっかり言ってるけど、映画は良かった、と思われるようにしてるよ」。

『エンジェル』は12月8日より日比谷シャンテシネ、新宿武蔵野館ほか全国にて公開。

『エンジェル』公式サイト
http://www.angel-movie.jp/

《冨永由紀》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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