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ファッション小噺vol.81 日本ファッション史を塗り替えた時代を描く『丘を越えて』

髪を切る、染める。あるいはパーマをかける。スーツを脱いで、デニムに足を通す。日常的にあるこんな“変化”は、その人のイメージをガラリと変えるものですが、この時代に起きた変化の数々に比べれば、さほど大きなものではないに違いありません。日本髪をボブに切りそろえ、和服から洋装へと着替え始めた人々の、心の変化はいったいどんなものだったのでしょう。

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『丘を越えて』 -(C) 「丘を越えて」製作委員会2008
『丘を越えて』 -(C) 「丘を越えて」製作委員会2008
  • 『丘を越えて』 -(C) 「丘を越えて」製作委員会2008
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髪を切る、染める。あるいはパーマをかける。スーツを脱いで、デニムに足を通す。日常的にあるこんな“変化”は、その人のイメージをガラリと変えるものですが、この時代に起きた変化の数々に比べれば、さほど大きなものではないに違いありません。日本髪をボブに切りそろえ、和服から洋装へと着替え始めた人々の、心の変化はいったいどんなものだったのでしょう。

文明開化が起こり、明治の日本には西洋の文明が大量に流れ込み、江戸情緒を残したまま首都はモダンへと変わっていく──。さらに時代が進み、そんな急激な変化を精力的に受け入れていた昭和初期の日本を描い映画が『丘を越えて』。地下鉄が走り、飛行機が飛び、ダンスホールで人が踊り、モボ、モガが闊歩する、そんな時代の躍動感、興奮、落ち着きのなさなど、当時の世相と雰囲気を切り取った作品です。

時代をリードした菊池寛と、彼の秘書として働き始めた葉子が織り成す人間ドラマですが、正直言ってストーリーよりも、周辺ネタに興味津々。まだ、蒸かし芋屋や納豆売りがいる風景や、和洋折衷のレトロなインテリアなどを見ていると、江戸東京博物館にでも行ったような楽しさがあります。

なかでも、一番興味深いのは当時の女性の格好。まだ、着物姿の女性がしとしと街中を歩く時代の中、菊池寛の側で働き始めた葉子が見せる変化や服装は、当時の典型的なものだったのでしょう。ロールカラーやちょうちん袖+スクエアネックのワンピース。ローウエストのドレス、大きな襟のコートなど、いまでも欲しいデザインばかり。七分袖、別珍の襟+くるみボタン、かっちりとしたハンドバッグなど、ディテールも抜群なのです。

主人公の一人、葉子は、冒頭は和装なのですが、入社面接を受ける際、社長が新しいモノ好きだということで、頭のてっぺんからつま先まで洋装に着替えます。それを見た顔見知りたちは大笑いするのですが、がんばってモガを装っても、中身はいつまでも江戸気質の抜ける様子がない葉子が、菊地寛をはじめ、その教え子、運転手などに想いを寄せられるあたりにも、なんだか時代を感じるのです。

《牧口じゅん》

映画、だけではありません。 牧口じゅん

通信社勤務、映画祭事務局スタッフを経て、映画ライターに。映画専門サイト、女性誌男性誌などでコラムやインタビュー記事を執筆。旅、グルメなどカルチャー系取材多数。ドッグマッサージセラピストの資格を持ち、動物をこよなく愛する。趣味はクラシック音楽鑑賞。

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