幸せな結婚生活への希望の間で、真実を知ったとき女は…『ゼロの焦点』

社会派推理小説の大家、松本清張の生誕100年を記念し、同名の代表作を映画化したミステリー大作『ゼロの焦点』。戦後から新時代への転換期とされる昭和30年代を舞台に、ひとりの男の失踪劇と不可解な連続殺人事件の謎が絡み合っていく。

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『ゼロの焦点』 -(C) 2009「ゼロの焦点」製作委員会
  • 『ゼロの焦点』 -(C) 2009「ゼロの焦点」製作委員会
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社会派推理小説の大家、松本清張の生誕100年を記念し、同名の代表作を映画化したミステリー大作『ゼロの焦点』。戦後から新時代への転換期とされる昭和30年代を舞台に、ひとりの男の失踪劇と不可解な連続殺人事件の謎が絡み合っていく。

失踪した男の新妻であり、一連の事件の謎を追うことになるヒロイン、鵜原禎子(うはらていこ)を演じたのは広末涼子。結婚後まもなく姿を消した夫を追い、その足跡をたどって冬の金沢に赴いた禎子が夫の秘密に迫るにつれ、想像を絶する事態に巻き込まれていく展開が物語の軸となっている。そんななか、物語の語り手でもある禎子の心情が、愛らしい声の広末涼子によって淡々と語られていくのがポイント。結婚前の夫の姿を何も知らず、ただひたすら無垢に結婚生活を望んだ女性としての意識と、真実に直面することで芽生えた彼女の変化と成長が、昭和30年代という時代を物語っている。

ヒロインとして時代性を象徴するのは禎子だけでなく、事件に関わってくる女性運動家の名士夫人、室田佐知子や貧しい出身のミステリアスな女性、田沼久子も同様。謎深き背景を持ち、抑圧された時代の香りを内包するそれぞれの女性を中谷美紀と木村多江が演じ、広末を含めての豪華女優競演が実現している。

ミステリーとしての衝撃性よりも、時代を映した人間ドラマとしての重厚さこそがこの作品の焦点。こだわりの衣裳や美術、ロケ地も活きている。

《text:Hikaru Watanabe》

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