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【MOVIEブログ】27日/ロッテルダム

27日、日曜日。9時に外に出てみると、今日は雨。昨日は雪だったのに、気温が上がったのだろうか?どんなに寒かろうが、大雪が降ろうが構わないのだけど、雨だけはイヤだなあ。

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『Noche』
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27日、日曜日。9時に外に出てみると、今日は雨。昨日は雪だったのに、気温が上がったのだろうか?どんなに寒かろうが、大雪が降ろうが構わないのだけど、雨だけはイヤだなあ。

1本目は「Bright Future」部門で、『Dog Flesh』というチリの作品。ラテン系の作品はどうしても優先して見てしまう。本作は昨年のサンセバスチャン映画祭に出品されており、新人監督賞を受賞したとのこと。でも、僕はダメだった…。

精神的なストレスを抱えたように見える中年の男の日常を追っていく内容で、表面的には大きなドラマは起こらない。男は、チリのピノチェト独裁政権時代に、拷問が横行した刑務所に勤務していた過去があり、独裁政権崩壊後の社会に馴染むことが出来ず苦しんでいる、らしい。「らしい」というのも、それはパンフレットの解説を読んで初めて分かることで、映画の中では全くそのような背景は説明されない。

こちとら、そんなことが分かるはずもなく、ずっと不機嫌な中年男の面に付き合うだけで、いくらなんでもこれは観客に甘え過ぎなのじゃないかい?

映画のルックは悪くないのに、完全に消化不良の思いを抱えながら劇場を出て、映画祭が業界向けに設置しているビデオ・ライブラリーへ。スケジュール的にスクリーンで見ることが出来ない作品を2本ほどチラ見してから、次の上映へ。

12時から、オーストリアの作品。8mmで撮影された、旅のエッセイ風ドキュメンタリー・アート映画。狙いは分かるし、それなりに見せる力はあるのだけど、やはりプライベート旅行記の域を出ていないかな。

んー、雨だし、今日は最高の日ではなさそうだな。

続けて、14時から、『On Mother’s Head』というインドネシアのドキュメンタリー映画。これはなかなか悪くない。バリ島に暮らす家族の生活を追ったもので、観光地としてのバリではなく、厳しい生活を送る人々のリアルな日常が描かれる。ブタの飼育に明け暮れ、長男は反抗期、末の息子はダウン症、父親は失業中、必然的に母親が一家を支えることになる。タイトルからも伺えるように、貧しい中での「母性」がテーマのひとつ。

しんどい現実を捉える監督の視線はとても暖かく、実際に上映後のQ&Aに登壇した監督は、とても好感が持てる好青年。対象に対するキャメラの距離もとても近く、盛り上がったQ&Aとも合わせ、なかなか充実の上映でした。

少しホッとして、外に出ると、雨は止んでいて、晴れている。気温が妙に高くて、少し気持ち悪い。やはり骨の髄まで冷えないと、この春の出張は調子が狂うなあ。

次は16時半からコンペ部門の作品で、『Silent Ones』というオランダ映画。ワールドプレミア。暗い。少女のささやくような、追い詰められたような独白が全編を覆い、一体彼女に何が起こったのかを観客は注視することになる。どうやら、愛する弟と生き別れたらしいのだが…?

いや、暗い映画でも全然構わない。だけれど、徹底して覇気の無い陰鬱な雰囲気を、審美的な価値だけで映画として成立させようとするような監督のスタンスが、全く肌に合わない。いくらなんでもこんなシナリオで映画を作ってはいけないよ!

やはり今日はダメな日か…。

続けて18時半から、またコンペ部門で、『Noche(Night)』(写真)というアルゼンチンの作品。これもワールドプレミア。そして、こちらはなかなか良かった!

山中の森で合宿のような生活を送っている複数の若者たちがいて、どうやらそのリーダー的存在の青年が最近姿を消したらしいことが分かる。その青年は、あらゆる音を録音するのが仕事(か趣味かは不明)であり、映画は若者たちの愛憎の展開を追う一方で、「音」がもう一方の主役となる。不在の青年が残した音源が、必ずしも映像とはリンクしないまま大音量で流され、映像と音響の組み合わせがもたらす様々な効果が、大胆な形で実験されていく。

んー、とても文字にしづらいな。大画面と大音響で体験するタイプの野心溢れる作品で、こういう挑戦なら大歓迎。先ほどのオランダ映画も挑戦的な作品であるのだけれど、歓迎と非歓迎の境はどこにあるのだろう。綺麗にまとめようとして映画のダイナミズムが決定的に失われていたオランダ映画に対し、『Noche』はダイナミズムそのものを映画化しようとしているからかもしれない。

さて、本日の最大の悩みは、22時にワールドプレミア上映される中田秀夫監督の新作を見るかどうか。僕は怖がりなので、中田ホラーが本当に怖い。『呪怨』を見てしまった時は(あまりにも予告編が怖かったので、本編はどれほどのものなのだろうという好奇心に負けて見てしまった)、1週間トラウマに悩まされた(寝る時に電気を消せなかった)。未だ、『リング』は見ていない…。

結論として、見ず。まだまだ出張は先が長いし、支障を来たしたら困るから…。表向きの理由は、22時からの映画祭マーケットのパーティーに出席するため。いやあ、ともかくめちゃくちゃ怖いらしいので、これは賢明な選択だったと思いたい!ハハハ、何というヘタレ。

パーティーで色々な人と話し、これで良かったのだと自己正当化し、1時に宿に帰り、ブログ書いて、おやすみなさい。
《text:Yoshihiko Yatabe》

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