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『藁の楯』大沢たかおインタビュー【前編】 引きの演技で魅せた“心”

まっすぐな人だ。相手の言葉に耳を傾け、まどろっこしい表現なしで率直に語る。大沢たかおには、積み重ねたキャリアやスターとしての地位に安住せず、前進し続ける彼ならではの瑞々しさがある。

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『藁の楯 わらのたて』大沢たかお
『藁の楯 わらのたて』大沢たかお
  • 『藁の楯 わらのたて』大沢たかお
  • 『藁の楯 わらのたて』大沢たかお
  • 『藁の楯』 -(C) 木内一裕/講談社 -(C) 2013映画「藁の楯」製作委員会
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  • 『藁の楯 わらのたて』 -(C) 木内一裕/講談社 -(C) 2013映画「藁の楯」製作委員会
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  • 『藁の楯 わらのたて』 -(C) 木内一裕/講談社 -(C) 2013映画「藁の楯」製作委員会
  • 『藁の楯 わらのたて』 -(C) 木内一裕/講談社 -(C)  2013映画「藁の楯」製作委員会
まっすぐな人だ。相手の言葉に耳を傾け、まどろっこしい表現なしで率直に語る。大沢たかおには、積み重ねたキャリアやスターとしての地位に安住せず、前進し続ける彼ならではの瑞々しさがある。

最新主演作は、三池崇史監督の『藁の楯 わらのたて』。逃亡中の幼女誘拐殺人犯・清丸に、被害者の祖父で財界の大物・蜷川が10億円の懸賞金をかけ、日本国民に「この男を殺してください」と呼びかける。大沢さんが演じるのは、福岡で出頭した清丸を東京の警視庁に移送するチームを率いるSPの銘苅だ。

以前に木内一裕の原作を読んでいた大沢さんは「映画化するにしても、ハリウッドが原作権を取って、ニューヨークからどこかへ移送みたいなのが一番スムーズかな、という認識でした」と語る。故に、銘苅役のオファーが来たとき、まず頭に浮かんだのは「難しい作品が来たな」という感覚。「日本でやるとなると、できることの限界もあるし。日本の人たちがいまエンターテイメントに求めてるものと、この突出したプロジェクトの世界がどうぶつかり合うのか。その難しさは最初にすごく感じました」。

もう一つ感じたのは、銘苅という主人公のあり方だ。原作を読んだ時点で、数年後に自分が演じることになるとは「思わない、思わない(笑)!」と当時をふり返り、銘苅について「基本的に引いている存在」と物語における立ち位置を語る。「主人公なら前にガンガン行くところを、いつも引かなきゃいけない。これをやる役者さんは結構大変だろうなあ、と漠然と思ってました」。

今回、まさにその当事者となった。
「主人公なのに全く表現しないで、一歩下がっているのは演じる上ではすごいストレスです。無意識につい前へ出てリードしたくなる。他人に合わせて動いてるだけなのは変な感じがするんですよ。過去に自分で作っちゃってる演技の回路というか、クセが影響してるのかもしれない。だから、現場ではすごい葛藤する。“オレ、ずっとここで黙ってんだよな…大丈夫かな”って(笑)。そこを一か八か、監督と一緒に構築していきました」。

細かい演技指導をしない三池監督が今回唯一望んだのは、リアルなSP像。身のこなしなど、撮影現場でもSP経験者が常駐し、監修にあたったという。こう動く、だけではなく、メンタルな部分についてもアドバイスを受けた。
「身のこなしって、メンタルから来てるし、トレーニングの内面から出て来ることです。その形になるには理由があるし、心があるから、その形になっていることを理解しないと。形だけでは限界があります」。

SPが登場する作品は邦画・洋画を問わず数多くあるが、本作の銘苅や、松嶋菜々子が演じる部下の白岩はこれまでにないSP像を見せる。感情的といっても言いような、彼らの心の中が見えるような瞬間が垣間見える印象がある。任務を全うしながらも、ロボットのように無表情ではない。

「現実的にいないですからね、そんなSP。ピストルも、まず片手では構えちゃいけない。そう訓練を受けてるし、そんな簡単に人に銃を向けたことないから、日本の警察は。ハリウッドじゃないんで、そういうことはできないんです。絶対に躊躇する。拳銃をホルダーから出した時点で、それはもう抜いたことになって、その人は始末書を書かなきゃいけない。責任が出てくるから恐くて、抜くのもできれば避けたいし、仮に抜くにしたって、そのまま振り回したりしない。ドラマじゃないから。実際の日本にいるSPだったら? とお話を聞いたら、『できないです、そんなこと』って。『震えちゃって、肩上がっちゃうし。そんなカッコよくなんか…それは嘘ですから』って」。

納得がいった。銘苅たちの感情が見える気がしたのは、まさに“心があるから、その形になる”状態が作り出されていたということだろう。監督の望んだ、日本のSPの実像に限りなく近い姿なのだ。日本のSPは実際まだ一人も拳銃を抜いたことがないという。「それでも守らなきゃいけない。そういう非日常性というか、等身大な人たちが等身大じゃないものに巻き込まれるのが、たぶん三池さんのやりたかった世界なのかなと思います」。

『藁の楯』大沢たかおインタビュー【後編】 「守りに入ったら終わり…壊し続ける」
http://www.cinemacafe.net/article/2013/04/26/16754.html
《冨永由紀》

好きな場所は映画館 冨永由紀

東京都生まれ。幼稚園の頃に映画館で「ロバと王女」やバスター・キートンを見て、映画が好きになり、学生時代に映画祭で通訳アルバイトをきっかけに映画雑誌編集部に入り、その後フリーランスでライター業に。雑誌やウェブ媒体で作品紹介、インタビュー、コラムを執筆。/ 執筆協力「日本映画作品大事典」三省堂 など。

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