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【MOVIE BLOG】コンペ作品紹介(3/5)

コンペティション紹介の第3弾は、実績豊富な実力派監督による3本、というくくりで行ってみます…

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ハッピー・イヤーズ
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コンペティション紹介の第3弾は、実績豊富な実力派監督による3本、というくくりで行ってみます。

まずは、イタリアの『ハッピー・イヤーズ』。ダニエレ・ルケッティ監督は現在のイタリアを代表する監督のひとりと呼んでも過言ではないでしょう。スケール感と瑞々しさ溢れる『マイ・ブラザー』(07)、リアリズムに支えられた『我らの生活』(10)、いずれも現実感に根差した骨太のドラマであり、深い充実感を鑑賞後に与えてくれました。後者は、主演のエリオ・ジェルマーノに同年のカンヌ映画祭主演男優賞をもたらしていますね。

家族の物語を描いてきたルケッティが、満を持して自分の家族を描いたのが、この『ハッピー・イヤーズ』です。舞台は1974年で、まずはこの時代背景の再現が見事で、ファッションや自動車といった美術から、サイケデリック・アートやウーマン・リブなどのカルチャーや時代の潮流の吸い上げ方に至るまで、とてもリアルな肌触りでうまい。

軸になるのは、父母の関係をめぐる物語。前衛美術家の父と、父の浮気を疑って悩む母。そして、ふたりに挟まれるふたりの息子。シンプルな設定に時代の土台を与え、スケールの大きい物語へと発展させるルケッティ監督の技量がここでも冴えます。各登場人物の感情を追っているうちに我々も70年代を生き、そして自分の家族にも思いを至らせる…。ああ、映画を観たなあ、という思いに浸れる1本です。

さらに付け加えるならば! 父親役のキム・ロッシ・スチュワートは、イタリアを代表する美形スターのひとりです。若い頃もカッコ良かったですが、少し年を重ねて、いやあもう、本当に素敵ですね。とにかくイケメン俳優が見たい! という女性の方(男性でもいいけど)には、絶対に見逃さないように! とおすすめしておきます。

さて、ルケッティが70年代なら、ムーディソンは80年代。ということで、スウェーデンのルーカス・ムーディソン監督が80年代初頭を舞台にして作った思春期ドラマが『ウィ・アー・ザ・ベスト!』

ムーディソン監督は98年の長編デビュー作『ショー・ミー・ラヴ』で世界的に注目されて、僕も同作を見たときの鮮やかな興奮を今でも思い出します。スウェーデンのアマルという冴えない地方都市でくすぶる少女たちの行き詰った心境を描く内容で、誰も知らない街で誰もが共感できる物語を語る技術に舌を巻いたものです。

内気な少女が、親に促されて誕生日パーティーを家で開くのだけれど、当日、誰も来ない。この悲痛な設定には、どんな残虐ホラーも適うまい、と見ながら胸を痛めたシーンが忘れられません。以来、ムーディソン監督を意識し続けていましたが、前作でガエル・ガルシア・ベルナルとミシェル・ウィリアムスを迎えてベルリン映画祭のコンペ入りするなど(『Mammoth』)、ヨーロッパでは順調に名前を上げていっています。

そんなムーディソン監督の新作を、東京のコンペでお迎えできる! これは本当に嬉しいです。しかも、題材は、監督が得意とする思春期もの。ルーツに戻ったかのように見えるけど、原作は奥さんの自伝的マンガだとのことで、奥さんの少女時代をダンナが映画化するなんて、いいなあ。

13歳の少女3人が、パンク・バンドを結成して、日頃のうっぷんをぶつける。楽器なんてろくに出来ないけど、そして家でも学校でも問題山積みだけど、とにかく3人揃って音を出せば何とかなる! 周りと波長が合わないトンガリ系の少女に新しい友だちが出来たときのワクワクとか、もう堪らないです。堪らなくて、泣いちゃいそうです。

そして、思春期少女の切ない展開も描かれ、ああ、やっぱりムーディソンは上手い。見どころとしては、80年代の空気を再現したルック、監督の演出、とかいろいろあるけれど、それはそれとして、ともかく3人の少女の、パンキッシュなスピリットが溢れる、あまりにも瑞々しい魅力に胸を熱くしてもらいたい!

そして、フランスからは、ジャン=マリーとアルノーのラリユー兄弟による『ラヴ・イズ・パーフェクト・クライム』。主演はもちろん、マチュー・アマルリック!

僕がラリユー兄弟の存在を知ったのは『運命のつくりかた』(03)からで、とにかくその突拍子もない設定に度肝を抜かれたものです。基本的に、山を中心にした自然の中に人間を放り出すのが好きな兄弟監督で、野生な人間、あるいは人間の野生を追求している作家であると言えるかもしれません(自分で書いていて、なんのこっちゃ、ですが、たぶんそんなに外れていないはず)。

新作は、今までの奇天烈なドラマ世界とは少し距離を置き、雄大なスケールのエロティック・ロマン・スリラーとも呼ぶべき内容です。とはいっても、「大自然の中で展開する人間の愛のドラマ」という意味では、確実に従来のラリユー兄弟の系譜に連なっており、「山の中のマチュー・アマルリックの受難」という設定は、『運命のつくりかた』以来、律儀に引き継がれてきているとも言えます。

もっとも、ラリユー兄弟など知らない、という日本の映画ファンも多いでしょう。心配ご無用。女子大生失踪事件に巻き込まれる、女好きの大学教授の受難の物語は、監督の来歴など知らなくても観客を十分に楽しませますし、スイスのアヌシーを舞台にした自然の美しさも大画面に映え、劇場で映画を観る醍醐味を与えてくれるはずです。

堪能すべきは、フランスを代表する芸達者な役者たちが見せてくれる、人間関係の妙でしょう。本作は、究極的には「愛とは何だ?」を追求するラブ・ストーリーであり、様々な人間模様を通じて、愛の真実への手がかりを掴もうとするロマンティックなドラマです。「愛は完全犯罪だ」とは、原題の直訳ですが、いかにして愛は完全犯罪に至るのか(あるいは至らないのか)? 是非直接ご確認を!
《矢田部吉彦》

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