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【MOVIEブログ】24日/ロッテルダム

24日、金曜日。昨夜23時に寝たら、4時に目が覚めてしまった…。仕方がないので本を少し読み(無謀にもスティーヴン・キングの大著「11/22/63」上下巻を持参した)…

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24日、金曜日。昨夜23時に寝たら、4時に目が覚めてしまった…。仕方がないので本を少し読み(無謀にもスティーヴン・キングの大著「11/22/63」上下巻を持参した)、ぐずぐずしてからパソコン叩いて朝食へ。たらふく食べて8時半に外へ。

昨夜は結構強い雨が降ったようで、歩道が濡れているけど、今朝は少し青空が見える予感? 気温は2~3度くらいかな。

本日1本目は9時から、関係者向け試写でタイ映画。どうにも馴染めなかったので、早々に退場し、隣のスクリーンで『The Reunion』というスウェーデン映画へ。学生時代にいじめにあっていた女性監督が、同窓会に招待されなかったことをきっかけに、「もし同窓会に行っていたらこうなった」という想定の映画を撮り、それを同級生に見せていくという内容。おそらく実話。これをドキュドラマスタイルにせず、あくまでフィクションの体裁で3重くらいの入れ子構造で見せる作り方が、新鮮といえば新鮮、か。

続いて、「Bright Future」部門の『Love Steaks』というドイツの作品。題名から、カサヴェテスを意識しているのかなと想像していたら、当たらずとも遠からず。内気な青年と、アルコール依存症的な女性との、荒れた恋の物語。若いカップルの幼児的な振る舞いにイライラしてしまい、あまり感情移入が出来ない。が、野心的で誠実な作りには好感が持てないこともなく、決して嫌いではない。

間髪入れず、13時からアイ・ウェイウェイ監督新作(ロッテルダムがワールドプレミア)の『Ai Weiwei’s Appeal』へ。数年間に渡る当局との闘いを記録したドキュメンタリーで、ずしりと重い…。

そして15時半から、去年から観たくて身悶えしていたメキシコのフェルナンド・エインビッケ監督による、『ダック・シーズン』(04)と『レイク・タホ』(08)に続く3本目の長編、『Club Sandwich』へ。メキシコで僕が最も好きな監督の一人であるエインビッケは、本作で昨年のサンセバスチャン映画祭で監督賞を受賞してますね。

結論から言えば、素晴らしい。15歳の少年と、愛する母親とのリゾートホテルでの季節外れの夏休み。最初は母子ふたりで親友どうしのように楽しく過ごしているものの、そこに滞在客の16歳の少女が現われると、少年の心は少女に移り、母親は気が気でなくなる…。

とても小さな物語ながら、感情の機微を実に丁寧に描き、徹底して計算された緩急のテンポが独自のスタイルを作り、そして世界共通のユーモアと、ほのかなエロティシズムを匂わせる。もう、上手すぎる。

日本の若い監督の多くが世界に出ていけないのは、狭い身辺のネタで映画を作っているからだ、と指摘されることがあるけれど、僕は必ずしもその意見に与しない。半径3メートルの物語でも立派な映画になるのだ。『Club Sandwich』はその好例。日本の若手監督が見たらどう思うだろうか? 日本での公開を切に望む!

続けて、映画祭事務局が関係者向けに開催した小規模のカクテルパーティーを覗いてみたものの、あまり知っている顔も無かったので早々に退散し、ビデオ・ライブラリーへ。

見たのは、タイの農村地帯で稲作に従事する人々の、米に対する信仰に近い日常を美しく切り取った映像詩ドキュメンタリー。スローモーションを多用した演出過多のショットに評価が分かれるところからもしれないけれど、いや、これは大スクリーンで見るべきだった。反省。

19時15分から、いよいよ今年のロッテルダム映画祭のコンペティション部門の1本目で、『Riverrun(英題)』というブラジル映画の一般上映へ。

これがなかなかの力作!サンパウロを舞台に、2人の男と1人の女性の関係を軸にした、都会の孤独と絶望と少しの希望の物語…、と簡単にまとめてしまうわけにはいかない作品。インテリ男と車泥棒男に二股をかける自由な女、といういささか類型的な都会の三角関係を描く前半から、映画は後半になって突然デビッド・リンチ的転換を果たし、主人公たちそれぞれの心の闇に踏み込み、メタファーが溢れる混沌としたイメージと爆音に満ちた、観る者の想像力を喚起する自由な映像詩になっていく…。

物語でなく、感情で繋いでいく演出はとても刺激的で、全く飽きることがない。んー、これはなかなかだ! 上映後のQ&Aで登場した監督は、安易な解釈を拒む歯ごたえのある作品を撮った人とは思えない普通の佇まいで、余計に興味を惹かれる。今度会ったら話しかけてみよう。

最後、22時から、これまたコンペティションで、『Concrete Clouds』というタイの作品。本作は去年のブサン映画祭がワールドプレミアで、ロッテルダムはヨーロッパプレミア。監督は本職が編集マンの新人で、プロデューサーにアピチャッポンが参加していることでも見逃せない。

90年代後半のアジア通貨危機の時代を背景にした、父親の自殺を機に久しぶりに再会した兄と弟の、それぞれの愛を巡る物語。随所に挿入される歌謡曲とカラオケの映像が物語を補足する役割を果たし、独自の効果を上げている…。

と、感想をもっと書きたいところだけれど、宿に戻って0時半、現在1時半に差し掛かり、今宵も限界が見えてきた…。今日は7本半を見たことになるのか。合宿2日目にして、早くもエンジン全開だ。ダウン!
《矢田部吉彦》

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