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【MOVIEブログ】28日/ロッテルダム

28日、火曜日。曇り時々雨。いくらほとんど外にいないとはいえ、連日天気が悪いと気分も上がらない…。が、今日もスッキリと6時半に起き、とにかく朝食をたくさん食べて…

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When Evening Falls on Bucharest or Metabolism
When Evening Falls on Bucharest or Metabolism
  • When Evening Falls on Bucharest or Metabolism
28日、火曜日。曇り時々雨。いくらほとんど外にいないとはいえ、連日天気が悪いと気分も上がらない…。が、今日もスッキリと6時半に起き、とにかく朝食をたくさん食べて、今日も9時からの上映へ。

まずは業務試写で、コンペ部門の『Casa Grande』というブラジルの作品へ。豪邸で暮らす家族の没落の物語。貧富の差の激しいブラジル社会の現状を描くと同時に、高校生の長男の青春ものにもなっている。様々なテーマを巧みに取り込んだ脚本が秀逸で、これはなかなか良い! 受賞候補の1本になるのではないかな?

朝イチからの好スタートに気を良くしつつ、既に名を成した監督たちの新作を上映する「Spectrum」部門に出品されているルーマニアのコルネイユ・ポルンボイユ監督の新作、『When Evening Falls on Bucharest or Metabolism』(写真)へ。

ゼロ年代中盤にクリスティアン・ムンジウ監督やクリスティアン・ネメスク監督などが颯爽と登場して、世界中の国際映画祭で一時期「ルーマニア・ブーム」が起こったけれども、本作のポロンブイユ監督もその波に乗って紹介されたひとり。実績も積んで、今や主要国際映画祭の常連と呼んでいいかな。

ところで、ルーマニア・ブームには「ルーマニア・スタイル」(僕の造語)が伴っていて、これはどうしてなのか今もって謎なのだけど、かなり極端なミニマリズムというか、淡々系の長廻しを多くの監督が採用していた。ポロンブイユ監督もその一人で、今作もワンシーン・ワンショットの長廻しを徹底したスタイル。そして、そのスタイルはいよいよ洗練され、もはや名人芸の域に近づいていた!

映画監督と女優の関係をめぐる内容で、二人の芝居が中心。黙々と映画作りや演技構成を語り合ったり、レストランで雑談にふけったり、全ての会話がとても良いのに加え、構図を含めてひとつひとつのシーンの完成度が高くて目が離せない。生活の断面がリアルに切り取られている実感が得られて、確実に映画に引きこまれる。上手い。さすが。

続けて、時間が中途半端に空いたので、ビデオ・ライブラリーへ。見たのは去年のローマ映画祭でプレミア上映された『Trespassing Bergman』。タイトルから分かる通り、映画史上最も重要な監督のひとり、イングマール・ベルイマンを紹介するドキュメンタリー。

先日見た『Mr. X』と同様に、現役の映画人がベルイマンに対する愛を告白しまくる内容で、登場するメンバーがすごい。ベルイマンを史上最高の監督と呼んでやまないウディ・アレンを筆頭に、スコセッシ、イニャリトゥ、ハネケ、ジョン・ランディス、ウェス・クレイヴン、クレール・ドゥニ、リドリー・スコット、アレクサンダー・ペイン、ウェス・アンダーソン、ロバート・デ・ニーロ、タケシ・キタノ、アン・リー、チャン・イーモウ、などなど。

中でも最高なのが、ラース・フォン・トリアー。トリアーのベルイマンに対する想いは強烈で、最も本音で話しているし、愛憎が入り混じったコメントは痛快で、そして極めて感動的。正直、このようなトーキング・ヘッズ形式のドキュメンタリーで、こんなに感動するとは思わなかった…。そして、上記映画人のコメントだけでなくて、ベルイマンの歩みとともに代表作も丁寧に紹介されるので、ベルイマンを知らない人にも勧めたい。というか、ベルイマンの偉業を後世に伝えるために作られた作品なのだろうな。是非日本での上映も希望したい!

上映にもどり、16時からコンペ部門で『War Story』というアメリカ映画へ。ウルトラ・ナイスガイのアメリカ人の友人が経営する会社がセールスを担当しているので、あまり言いたくはないのだけれど、これがかなりひどかった…。キャサリン・キーナー主演で、彼女が演じる戦場カメラマンが深刻なトラウマを抱えて苦しむ様を、延々と見させられる。

苦しみに共感できるならまだしも、傲慢な態度で自己中心的に苦しむだけなので、感情移入が一切できない。ひどいトラウマ状態なのだから人好きする態度など取れないのがリアリズムだと言われたら、それはそうなのかもしれないけれど、付き合わされる観客はたまったものではない…。

続けて18時45分から、「Spectrum」部門でロシアの『Another Year』という作品へ。若い夫婦の関係が、幸せの絶頂からゆるやかに崩壊していく様を描くドラマ。少しだけ長さを感じてしまうものの、役者がいいし、とても丁寧な映画なので好感度大。

最後は22時から、コンペ部門で『Arwad』というカナダ映画。これも広い意味で夫婦仲の崩壊の物語なのだけれど、身内の死が絡んでくることで、冒頭から最後までみんなメソメソしてばかりで、生気の無いことこの上ない。一日の最後に見るにはしんどい…(一日の最初でもイヤだけど)。

というわけで、本日はアップダウンの激しい一日だった! 宿に戻って0時半。気づいたら、ロッテルダム滞在もあっという間に終盤。映画に溺れていると時間の感覚が狂うけれど、疲れは驚くほど全くない…、ってこんな好き放題な日々を過ごしていて当たり前だよ!
《矢田部吉彦》

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