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【インタビュー】声優・梅原裕一郎 吹替の魅力と難しさを再確認した『僕のワンダフル・ライフ』

「たぶん、“声をあてる”ということに関しては、同じはずなんですよね。ただ、僕もなにかが違う気はしていて、それがなんなのか…まだ掴みきれてはいないんです」──アニメと吹き替えの違いを尋ねると、少し困ったように笑いながら、声優・梅原裕一郎はそう答えた。

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梅原裕一郎&ゼウス君/『僕のワンダフル・ライフ』インタビュー
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「たぶん、“声をあてる”ということに関しては、同じはずなんですよね。ただ、僕もなにかが違う気はしていて、それがなんなのか…まだ掴みきれてはいないんです」──アニメと吹き替えの違いを尋ねると、少し困ったように笑いながら、声優・梅原裕一郎はそう答えた。

■ 快活な主人公の“影”にリアルを感じた


飼い主・イーサンに会いたい一心で何度も生まれ変わる犬・ベイリーを主人公に描いた、ラッセ・ハルストレム監督の最新作『僕のワンダフル・ライフ』。日本語吹き替え版において、K・J・アパ演じる“10代”のイーサンの声を担当した梅原さんだが、実はこれまで、動物とのふれあいを描いた映画を観たことがなかったという。

梅原裕一郎&ゼウス君/『僕のワンダフル・ライフ』インタビュー
「僕が観た映画で、動物が出てくるものって…『アナコンダ』とか『ジョーズ』とかのパニック系になっちゃうんです(笑)。だから、“感動する動物のお話”ということでいえば、今回この『僕のワンダフル・ライフ』を観たのが初めてですね。以前は“動物が喋る”ことにも違和感がありましたが、今作に携わらせていただいたなかで、そういった違和感は全くなかったので、『純粋に感動するものだったんだなあ』と思ったんですよね。だから、いままでこういった作品を観てこなかったのって、損していたんじゃないかな? って思いました」。

梅原さんが演じる“10代”のイーサンは、高校のアメフト部で将来有望な選手として活躍し、かわいらしいガールフレンドもいる、明るく優しい青年だ。そんな、表向きには完璧に見えるイーサンだが、家庭では両親の不和に悩み心を痛める様子がベイリーの視点を通して描かれる。

『僕のワンダフル・ライフ』 (C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC
「イーサンはスポーツもできるし、友だちも多いし、ペットは大事にするし、本当に完璧なんですが…お父さんとの確執みたいなものがたぶん彼の弱点であり、いちばん触れてほしくないところなんだろうなあと思いました。そういった…表面上は明るいけれど、若干の影があるっていうのがすごいリアルで、共感できましたね」。

梅原さんの言うイーサンの“影”の部分は、物語を通して徐々に色濃くなっていき、それでも変わらず愛を注ぎ続けるベイリーとのやり取りが本作の見どころのひとつとなるのだが、そういった感情のグラデーションを梅原さんはどのように表現していったのだろうか。

「最初のアフレコのときに僕はその“影”の部分を考えすぎてしまったようで、『ちょっと暗い』とディレクションをいただいたんですね。最初は明るくてスポーツ万能な青年を演じてほしいということで、暗さを隠して…お父さんとの会話のシーンになったら少しだけ出して。その後、怪我をして殻に閉じこもってしまったところから、イーサンの暗い部分を爆発させるように意識しました」。

■ 役者になって画面に入ったつもりで声の芝居をする


そもそも、“洋画に日本語のセリフを吹き替える”というのは、なかなか無理のある作業のように思える。たとえば今回の場合、26歳で日本人の梅原さんが、10代のリアルなアメリカ人の“声だけ”を担当している。一体その作業を、声優たちはどのように構築していくのだろうか? 「吹き替えの世界が不思議で仕方ない」と梅原さんに伝えると、「僕もいまだに不思議です」と笑い、丁寧に説明してくれた。

「わかりやすいところで言えば、声のトーンですよね。年齢にあわせて変えていかないといけませんが、声のトーンだけじゃダメで…呼吸感だったり、若いからこその勢いみたいなものを意識しています。イーサンを演じるときも、外からの反応に対して落ち着かなかったり、10代特有の冷静じゃない部分を出せたらいいなと思いました。ハンナとの会話も、最初はぎこちなさや初々しさを出すように…そういったことが、イーサンの若さに繋がるんじゃないかなと思います。英語の口パクに日本語をあてることについては…あんまり意識してないかな? 台本の時点でもう、翻訳家さんが口に合わせて翻訳してくださっているので、それを信じて演じるだけですね」。

梅原裕一郎/『僕のワンダフル・ライフ』インタビュー
これまでもいくつかの吹き替え作品に出演してきた梅原さんだが、今回改めて、「映像を見る」ことの重要性を再認識したという。

「アニメ以上に、吹き替えは映像を見なきゃいけないんだなって再確認しました。表情を見て…セリフはもちろんですが、セリフ以外のところでも、この人はいまどんな表情をしているんだろうとか、目の動きはどうだろうとか。イーサンだったら、お父さんと接するときは表情がこわばっていたり、目が泳いだりしていたので、『こういうとき、人間ってどんな喋り方になるんだろう?』って…そういったヒントをセリフ以外のところから拾えるのが吹き替えかなあって思います」。

梅原裕一郎/『僕のワンダフル・ライフ』インタビュー
そこで冒頭の言葉に戻る。普段アニメのキャラクターに声をあてる機会の多い梅原さんが思う、アニメと吹き替えの違いとは? という質問に、「まだ掴みきれてはいないんですが…」と前置きしてから言葉を続けた。

「なんていうのかな…“生きてる感”というか、生身の人間がそこで動いて喋っていることを、より意識するのが吹き替えなんじゃないかなって思います。たとえば…遠くにいる相手に話す場合、アニメだとボソボソ喋ったとしても演出次第で成立するんですよね。でも吹き替えは実際に役者さんがその距離で演じているので、役者さんの動きを忠実に再現して、声で表現しないといけない…細かさが求められるなあと感じました。尺もすごい難しかったですね。アニメだと後から調整することも多いので、少しこぼしても大丈夫なんですが、吹き替えは画ができていて、口がパクパクしている状態にあてるので、こぼれちゃうとおかしなことになってしまう…かなり苦労しましたね」。

梅原裕一郎/『僕のワンダフル・ライフ』インタビュー
そういった細かい技巧のうえに、先述したような感情のグラデーションを乗せていかなければならない。しかも驚くことに、それらは声のみの表現としてアウトプットされるのだ。

「難しかったですねえ。役者さんの心の動きにうまく合わせていかないといけないので、自分だけが先走ってもダメだし、役者さんに引っ張られすぎても声が遅れるので…アフレコではありますが、イーサン役の役者さんになって画面に入ったつもりでやらなきゃ、どんどんズレてきちゃうんだなあって思いました。だから、違和感なく演じられている先輩方のお芝居を見ると…もう、すごいとしか言いようがなくて。『役者さんが喋っているようにしか聴こえないんだけど、どうやったらこんなお芝居ができるんだろう?』って思いますね」。

■ ベイリーを通して、人と人との巡り合わせを感じてほしい


声優という職業を知る前から、洋画を吹き替え版で観ることが多かったという梅原さん。吹き替え版の魅力について尋ねると、それまで淡々と語っていた彼の声がわずかに大きくなった。


「吹き替え版を観た後に字幕で観ると…『あれ? こんな声なんだ』って思うことが多かったんです。もちろん、字幕で観るとまた違った魅力があって楽しいんですが、吹き替え版って…顔が整った海外の役者さんに、すごい整った声が乗っかることで…なんかもう、ものっすごいものになってるんですよね(笑)。顔も良ければ芝居も良くて、声もいいっていう。観ていて迫力がありますよね」。

「たしかに、トム・クルーズに森川(智之)さんの声とお芝居が乗ったら最強ですよね」と言うと、「いやほんと、そうなんですよ!(笑)」と、この日いちばんの笑顔を見せた梅原さん。「僕は吹き替えの経験があまりないので、今後も吹き替えのお仕事を増やしていけるように勉強していきたい」と語った。

そんな、吹き替えの魅力と難しさを再確認することになった『僕のワンダフル・ライフ』。最後に見どころを教えてもらった。

「ベイリー役のワンちゃんのお芝居がすごい良くて、本当にベイリーという犬がそこに生きているかのように、リアルな感情を覚えるんですよね。特に…ベイリーは生まれ変わっていろんな人と出会いますが、人と人との巡り合わせみたいなものを感じていただけるんじゃないかなあと思います。僕もこの映画を見て、『周りの人って本当に大切なんだな』って気付けたので、ぜひ観てくださる方にも感じていただければと思います。いちおしは…農業学校へ行くために車で家を出たイーサンを、ベイリーが追いかけてくるシーンが僕はいちばん好きですね。感動のシーンなので、ぜひ楽しみにしていただきたいです」。

『僕のワンダフル・ライフ』 (C) 2017 Storyteller Distribution Co., LLC and Walden Media, LLC
ベイリーのお芝居を思い出したのか、嬉しそうに笑う梅原さん。これまであまり犬と触れ合う機会がなかったとのことだが、この日撮影に協力してくれたゴールデンレトリバーのゼウスくんとの息もピッタリ。優しく声をかけ、頭を撫でる様子はまるでイーサンとベイリーそのものだった。

「犬と触れ合った機会があまりなかった僕でも感情移入できて…感情移入を超えて、『犬飼いたいな』って思っちゃうぐらいの(笑)、魅力が詰まった作品だと思います。これまで僕は、『確実に自分より早く亡くなってしまう存在に対して、きちんと向き合えるのかな?』って思って、ペットを飼うことを躊躇していましたが、この作品を通して…亡くなったペットも転生して、自分のところに会いに来てくれたりするんじゃないかって、希望みたいなものが感じられて、ペットって…いいなあって思いました」。

梅原裕一郎&ゼウス君/『僕のワンダフル・ライフ』インタビュー
この秋は、健気でかわいい犬が人間たちと織りなす感動の物語『僕のワンダフル・ライフ』で、心をホッコリ温めてはいかがだろうか。
《text:とみた まい/photo:You Ishii.》

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