【MOVIEブログ】2018ベルリン映画祭 Day1

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『リバーズ・エッジ』
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15日、木曜日。昨夜は無事にベルリンに到着し、同僚と合流して打ち合わせと食事を済ませて早々に就寝。本日は6時起床でいよいよベルリンスタート!

ベルリンの朝はいつも慌ただしく、ペースをつかむのに時間がかかる。朝メールをチェックして、当日と翌日分を予約できる一般上映の確保すべき作品を確認し、朝食を食べながら同僚と当日のミーティングの予定を確認し、8時半にオープンするマーケット登録者用のチケット引換所に少し早めに出かけ、9時からの上映に移動する、というのがルーティーン。

僕はベルリン映画祭に併設されているフィルム・マーケット(映画の権利を売買する業界関係者向けの映画見本市)に登録しているので、そのマーケットパスの提示だけで入れる上映もあれば、チケットを取らないと見られない上映もある。マスコミ試写には基本的には入れないのだけど(僕はプレスパスを持っていないので)、状況次第では入れることもあり、とりあえず並んでみることもある。どのパスで何が見られるかは(ベルリンに限らず)結構複雑で、初めての人が映画祭に慣れるには数日はかかるはず。毎年来ている僕でも最初はどうしてもバタバタしてしまう。

ということで、あたふたと朝をこなして、9時からフランスの映画会社の予告編集の上映へ。4本の新作のプロモクリップが繋げられて上映される。そのうちの1本に『Gaston Lagaffe』という作品があり、ひとりで大興奮する! というのも、これは70年代のフランスで一世を風靡した国民的ギャグマンガの実写映画化で、僕も熱中して愛読していたから。日本でいったら何かなあ、サザエさんというか、ちびまる子ちゃんというか、んー、全然テイストは違うのだけどそのくらい有名なのだ。でも、サザエさんの実写化をフランスで上映しても反応がないように(いや、あるのか?)、このGastonはあまりにも日本で知られていないので日本公開はまず無いだろう。ああ、見たい。

続けて10時から別のフランス映画会社(とはいえ仏映画だけを扱うのではない)のプロモ集で、ここでは12本が紹介される。中でも抜群に興味を惹かれるのは『キリクと魔女』のミシェル・オスロ監督新作『Dilili in Paris』で、身震いするくらい美しいアニメーションが大画面に広がり、思わず息を飲む。見られるのはもう少し先になりそうだけど、これは日本公開が期待できるのではないかな。

11時からオープニング作品の『犬ヶ島』のマスコミ上映があるのでダメモトで行ってみると、やはり門前払いで入れず。まあ予想はしていたのでショックもなし。

気を取り直して向かったのは、「フォーラム」部門に出品されているホン・サンス監督新作『Grass』。驚異的なペースで作品を発表し続けるホン・サンス監督だけれども、ある程度の規模のものはもちろん、小規模低予算のものも一定のクオリティーを保ち続けていることが驚異的だ。

今作はかなり予算を絞って数日で撮ったような作品で、それでも優れた短編小説を読んだ味わいを残してくれる。キム・ミニ嬢が今回も主演で、カフェでパソコンに向かう彼女は、他の客の会話に聞き耳を立てる。愛の会話もあれば、死を巡る会話もあり、様々な人間模様が浮かび上がってくる…。軽妙に見せながら要所で深いところを突いてくる、まさにホン・サンスの名人芸。代表作になるような佇まいではないけれど、密かに愛される小品になりそう。

続けて13時半から同じく「フォーラム」部門で『Classical Period』というアメリカの作品。3名の男女が文学談義を続ける中でお互いの友情を確かめ合う…、という内容ではあるのだけど、物語よりは語り口のスタイルが重要で、作家性を味わうタイプの作品だった。ダンテや中世の哲学を巡る議論が延々と続くので、英語ネイティブでないとさすがについていくのが辛い。それでも、16ミリで撮影された粒子の荒いカラー映像が郷愁を誘う美しさで、若者たちの議論に勤しむ姿は往年のフランス映画を見ているかのような錯覚にも陥る。とても不思議で美しい作品だ。

15時に上映が行われていたシネコンから、フィルム・マーケット会場に移動し、まずはぐるぐると企業ブースを眺めて回ってみる。初日にしてはなかなかの活気ではないかな? 明日の金曜日から週明け月曜日までが最も賑わうはず。顔見知りの人たちに挨拶したり、その場でミーティングをブッキングしたりしつつ、予定のミーティングを4件こなす。

ミーティングでは主にその映画会社が扱っている新作の情報を聞くことが目的なのだけど、3件目のミーティングでとても興味深い作品の話を聞かせてもらった。そして、その瞬間に僕の中でパン! とスイッチが入った気がした。昨年の東京国際映画祭が11月3日に閉幕してから3カ月と少し。なんとなくダラダラとオフシーズンを過ごしてしまっていたけれど、ああこの作品をトーキョーで上映したい、と強く思った瞬間に本気モードになった…。シーズンインしたというか。ともかく、今年も始まった! という感じ。

ミーティングを終えて、18時半からマーケット上映へ。ベルリン出品作でなく、1月開催のアメリカのサンダンス映画祭に出品された作品を見たのだけど、少し期待を下回ってしまい、残念。

20時に上映が終わり、朝食から何も食べていなかったので、ショッピング・モールに行って立ち食いスタンドのハンバーガーを急いで飲み込む。いや、ちゃんと美味しい。

21時から上映に戻り、「パノラマ」部門のオープニング作品である行定勲監督新作『リバーズ・エッジ』へ。一般上映なので、今朝チケットを確保していたのだ。やはりベルリンのお客さんと一緒に見てみたい。ゲスト席の近くに座ったので、上映前に入場した行定監督に一瞬だけどご挨拶ができてよかった。

上映前の舞台挨拶に監督が登壇し、本作は絶大な影響力を誇った岡崎京子という人のマンガの映画化であること、そして舞台となる94年とは日本にどういう意味を持つ年だったのかを解説する。簡潔にしてとても大事な事前説明だ。ベルリンの観客が作品に入りやすくなったことは間違いない。

上映中、観客が集中しているのが分かるし、時折笑い声も上がる(必ずしも笑いを意図しているシーンでないとしても、そういうことが感じられるのが海外の映画祭で上映する醍醐味であるはず)。僕はといえば、あまり冷静に見られない。94年は僕も20代で岡崎京子は好きだったし(そうでなかった人などいない)、どうしても当時の自分を考えながら見てしまうし、隣の席の欧米系女性がウケていると喜んでしまうし、スタンダードサイズの画面の魅力を現代日本映画で再確認する喜びに震えてしまうし、音楽の世武裕子さんはやっぱりとてもいいし、思考が千々に乱れて感想をきちんとまとめられない(これを書いているのが午前2時だということもある)。本年最も重要な日本映画の1本であることは間違いないことを確認しつつ、帰国したら劇場でもう1度見よう。

上映が終わり、行定監督とともに二階堂ふみさんと吉沢亮さんも登壇。二階堂さんは堂々と英語で挨拶されて、少し緊張はされていたようだけれども発音もしっかりしていて頼もしかった。こちらもとても嬉しくなる!

ホテルに戻ってから、ブログを書いてみるものの、ここでもペースがまだつかめていないのか、乱暴な殴り書きになってしまった…。『リバーズ・エッジ』の感想をもっとちゃんとまとめたかった。ごめんなさい。そろそろ2時半、寝ないとやばい。ライブ感が大事という言い訳を理由に、このまま見直しもせずにアップします!
《矢田部吉彦》

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