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【インタビュー】『カメラを止めるな!』上田監督が明かす“カメラを止められない”理由

超異例の映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督が、いまだかつてない“感染拡大中”の本作について、たっぷりと語ってくれた。

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上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』
上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』
  • 上田慎一郎監督『カメラを止めるな!』
  • 『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』 (C)ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
  • 『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
「ここまでの状態になることは本当に想像できませんでした。世界中で誰一人として想像もできなかったんじゃないかなと思います(笑)」と言うのは、たった都内2館から全国47都道府県・累計上映館数200館以上の拡大公開(8月21日現在)となった超異例の映画『カメラを止めるな!』の上田慎一郎監督。

邦画・洋画とも夏休みの大作映画が軒並み揃った8月18日~19日の週末映画ランキングでは、拡大公開を受け8位にランクイン! 観た者はみな褒めちぎり、リピーターが続出、なのにネタバレ禁止が徹底されている。いまだかつてない“感染拡大中”の本作について、上田監督がたっぷりと語ってくれた。

「女子高生が『カメ止め』の話をしていた」


『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナールパンデミック(広範囲の感染拡大)と劇中の重要ワード「ポンッ」を掛け合わせ、この拡大ヒットぶりが“ポンデミック”と称されている本作。上田監督がまず、その“予兆”を感じたのは「関係者試写会のとき」だったという。「関係者だけにも関わらず、上映中に笑い声が沢山起きて、上映後は力強い拍手が長く続いた。その後の打ち上げは12時間続いたんです(笑)。『この作品とならちょっと遠くまで行けるかも』と思いました」と打ち明ける。

そうはいっても、作品としての手応えとヒットするか否かはまた別の話。「公開館が日に日に増えたり、動員○万人! みたいな数字って、すごい! とは思うものの実感は掴みづらい」と正直なところを明かしつつも、「公開2週目ぐらいかな、『女子トイレで女子高生がカメ止めの話をしていた』『電車の中でカメ止めTシャツを着ている人がいた』というツイートが見かけたんですね。生活の中にまでこの映画が感染しはじめている。これはすごいことになるかも…と思いましたね」と日常の些細な瞬間から“蔓延”を実感したという。

『カメラを止めるな!』 (C)ENBUゼミナール

「二度と撮れないワンカット」を激白


『カメラを止めるな!』は、“37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”と、それを撮った“裏方”の人々を描く物語。そもそもなぜ、ゾンビサバイバルだったのだろう?

「ずばり『ゾンビが好きだからだ!』ということが1つめ。『仕掛けが沢山あるゾンビものだといろんな面白い展開が作れるから』というのが2つめ。『ゾンビものというジャンルが持つ手作り感が好き』ということが3つめです。もっと、ほかにもあるかも。ひとまずいま思い浮かぶのはこの3つです」と上田監督。

確かに、かつて神木隆之介らが演じた『桐島、部活やめるってよ』の映画部といい、サイモン・ペッグがエドガー・ライト監督と手がけ、注目されるきっかけになった『ショーン・オブ・ザ・デッド』といい、映画マニアはまずゾンビ映画を撮るもの!? 昨年亡くなった巨匠ジョージ・A・ロメロによる『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(原題:Night of the Living Dead)、『ゾンビ』(原題:Dawn of the Dead)などはホラー映画の金字塔であり、『バイオハザード』をはじめ世界中の映画やゲーム、ポップカルチャーに大きな影響を与えている。ちなみに、本作の海外タイトルは『One Cut of the Dead』だ。

『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
冒頭からの37分間は一度もカットなし、予期せぬトラブルも交えつつのワンカット、ノンストップ。本当に、“カメラは止まらない”! その撮影をふり返り、「37分ワンカットで一番心を砕いたことは…沢山ありますが、1つ絞るとすると『二度と撮れないワンカットになったか』ということですかね」と監督。

「何かトラブル起きて」と思いながら…


「もちろん失敗しちゃったらダメなんですが、成功しすぎるのもダメというか。そつなく問題なく撮れちゃいました、というカットにはしたくないなと」と明かす。「カメラが止められない中で、予期せぬトラブルをも巻き込みながら『二度と撮れないワンカット』にしたいと思っていました。頭の半分では『失敗しないで』と思いながら、もう半分では『何かトラブル起きて』と思いながら撮っていました」。

そのワンカットを繰り返すこと、実に6回。いま劇場で流れているのは、ハプニングがおそらく奇跡のようなバランスで盛り込まれた“二度と撮れない”6テイク目となる。

『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール

監督が感じる「本当にありがたいこと」


しかも、これだけSNSで口コミされ、リピート鑑賞もされている中で、鑑賞者は絶妙な感想コメントでネタバレ厳禁を徹底している。ハリウッド大作でもネタバレ合戦が盛大に行われるいま、この映画について“肝心な部分”を明かす人はほぼいない。「できるなら記憶を消して、また観たい」という人もいるほどだ。

「本当にこの現象には驚いています」と上田監督。「正直に言うと、公開前は公式の宣伝でも、少しだけこの映画が持つ構造的なことは書いちゃってたんです。公式予告編でも構造的なことはうっすら伝えてる。少しは伝えないと『ゾンビものだと思って足を運ばないお客さんもいるだろう』と思ったから」。

『カメラを止めるな!』(C)ENBUゼミナール
「ところが観たお客さんたちが、『何も予備知識を入れずに見て!』『予告編も見るな! あらすじも読むな!』と叫んでくれています。それはこの映画のことを本当に大事にしてくれているからなのかなと思います。自分の友達や知り合いに“一番いい状態で観て欲しい”という想いを持って勧めてくれているんです。これは本当にありがたいことですよね」。

「映画のキャスト・スタッフなどのチームは家族」


また、先日は上田監督の父親のSNSも「泣ける」と話題を呼んだばかり。映画の大ヒットを受けた親としての思いが、「毎日お母さんのライン(LINE)が止まらない」という言葉から始まり、Facebookにユーモアたっぷりに綴られているのだ。そんな今日も、LINEは止まらない?

「お母さんのLINEの状態は…聞いてないのでわかりません(笑)。でもきっとまだ止まっていないんじゃないでしょうか」と上田監督。さらに家族について尋ねると、「『家族とは?』と聞かれた時はいつも『チームだ』と答えています。家族=チーム。チーム=家族」と断言する。

『カメラを止めるな!』感染拡大御礼舞台挨拶にて中央が上田慎一郎監督
映画の中には上田監督の実の息子も出演しており、「妻のふくだみゆきが衣装や宣伝ビジュアルを担当しています。妻には一番はじめに脚本を見せています。自分の自宅もロケ地として使っています」と、家族総動員で作られたことにも触れる。

「家族はチームであり、映画のキャストスタッフなどのチームは家族だなと思います」と続けるように、全国各地での舞台挨拶やSNSでのやりとり、劇中の家族が揃って「ほんとにあった怖い話」や「痛快TVスカッとジャパン」(ともにフジテレビ系)などに出演している姿などを見ると、まさにキャスト・スタッフが一丸となった“1つの家族”であることが伺える。これこそ、“上田組”の一番の強みかもしれない。

最後に、「こんな作品を作ってみたい!」という構想はあるか尋ねてみると、「『ミッション・インポッシブル』のようなスパイ映画、『ゴッドファーザー』のようなマフィア映画、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のようなタイムスリップもの、『オーシャンズ11』みたいなチーム強奪もの…」と言いつつ、「を、そのまま日本でやったら痛くなっちゃうと思うので、それらの王道ジャンルを日本ならでは、自分ならではに仕上げて、それぞれのジャンルのマスターピースを創っていきたい、という果てしない野望があります。あと、潜水艦ものもやりたいです」と、語る上田監督。

「つまり中学二年生の男子が大好きな映画を作っていきたいんです」。
《上原礼子》

「好き」が増え続けるライター 上原礼子

出版社、編集プロダクションにて情報誌・女性誌ほか、看護専門誌の映画欄を長年担当。海外ドラマ・韓国ドラマ・K-POPなどにもハマり、ご縁あって「好き」を書くことに。ポン・ジュノ監督の言葉どおり「字幕の1インチ」を超えていくことが楽しい。保護猫の執事。LGBTQ+ Ally。レイア姫は永遠の心のヒーロー。

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