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【インタビュー】稲垣吾郎、環境の変化で見える新たな景色「しっかり進んでいける」

たとえ大勢の記者に囲まれていたとしても、目の前にいる1人との対話に、その時間とその相手に集中する。質疑応答というより会話だ。1つの質問から、問わず語りのように豊かに広がっていく。稲垣吾郎のインタビューはそういう風に進んでいった。

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稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii
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  • 『半世界』(C)2018「半世界」FILM PARTNERS
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こういう時間、いままで取材をしてきた中であっただろうか? たとえ大勢の記者に囲まれていたとしても、目の前にいる1人との対話に、その時間とその相手に集中する。質疑応答というより会話だ。1つの質問から、問わず語りのように豊かに広がっていく。稲垣吾郎のインタビューはそういう風に進んでいった。

木を切り、焼いて炭にしてそれを売る。生まれたときからずっと同じ場所で過ごして、40歳を目前に控えた男。阪本順治監督の『半世界』で、主演の稲垣さんが演じる紘はそんな人物だ。彼は同じく地元暮らしの同級生・光彦と、仕事を辞めて離婚して故郷に戻ってきた同級生・瑛介を迎える。

『半世界』(C)2018「半世界」FILM PARTNERS

いままでにない役「新しい環境で踏み出した第一歩」


「最初に阪本監督とお会いしてプロットを見せていただいたときは2人の男の話だったんです。長谷川博己さん演じる瑛介と幼なじみで地元にいる紘の話で、僕は瑛介を演じるのか思ったんですけど、監督から『土の匂いのする男の役を』と言われて。びっくりしました」とふり返る。
「自分がいままで求められてきた役とは全く真逆の役でした。僕は、弁護士とか医者とか刑事とか、バッジを付けたような役が多かったので。個人での仕事として、新しい環境で踏み出した第一歩の、今の自分がやらせてもらえる作品としては、これ以上のものはないんじゃないかという素晴らしい作品に巡り会えました」。

稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii
10代からアイドルとして活躍してきた稲垣さんは、紘を演じて「こういう人生もあるんだな」と思ったという。「僕が見てきたことない人生だったので。やっぱり僕は相当特殊な世界にいるんだな、と。これが普通なんですよね。東京生まれ、東京育ちで子どもの頃から芸能界にいて、僕はそういう中心の景色しか、あまり見てなかったのかな。中心と言ってはいけないけど」。

自分とは真逆の役でも「共感できる部分」に気づく


紘と瑛介、そして渋川清彦が演じる光彦の友情については「すごく素敵だなと思いました。僕はこういう仲間がいないので。地元の友達とか全くいないですし、幼なじみもいないです」と語る。「香取君や草なぎ君はある意味、子どもの頃から一緒にいるから、この3人みたいなのかなと思ったりはしますけど、彼らは仕事でのパートナーなので、ちょっとまた違うんです」。

稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii
プライベートではそういう密な関係を敢えて避けていたのか? と尋ねてみると、「でも、避けてきたかもしれないですね」という答えが返ってきた。
「あんまり、べたべたした人とのつながりというのは、僕は好きじゃなくて。同調圧力じゃないですけど、『俺たち、仲間だろ』みたいな暑苦しさはあんまり好きじゃなかったので、避けてきたのかもしれないですね。わりと1人を好き好んでやってきた。仕事で毎日新しい人と出会って、番組でいろんなゲストの方を迎えたり、共演をしたり、すごく刺激的なので。プライベートでは、もうほんとにひっそりと静かに1人で生きていきたい。いまでもそう思ってるんです。あんまり人に干渉されずに。それが僕の中での切り替えなのかもしれないので。だから、地元の友達と集まるとか、そういうものに憧れはありますけど、そこに引っ張られたくないです」。

稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii
大勢の人たちと仕事をする稲垣さんに対して、紘はたった1人で仕事と向き合う。だからこそ、彼は瑛介や光彦との友情を大切にする。まるでコインの表と裏のようだ。
「面白いですね。だから僕にこれを演じさせるのは、監督の確信犯というか。もちろん、僕がそういう人間じゃないのは、監督も分かってる。でも、どこかで僕の中に、さっき土の話もしましたけど、そういったものを感じ取り、くみ取ってくださったんでしょうね。いまの自分も、この世界にいて作られた人格なので、もしこの世界に入らなかったら、紘みたいになってたかもしれない。どこか近いところもあるんでしょうね。表面的には全てが真逆だけど、どこか魂のレベルというか、引かれ合う、共感できる部分があったのかもしれないです。もし家庭があったりすると、僕も、こうなっていただろうなとも思いました。子どもとどう接していいか分かんなくて、息子に対して下手な感じとか。僕と父の関係もそうでしたから。うちの父親も比較的そうだったんです。僕に対して、なんというか不思議な距離がずっとあるっていうか。似てるんでしょうね。親子ですから」。

稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii

環境が変化して見える新たな景色


印象的なのは、華やかな世界にずっと身を置き続けているのに、ごく普通の男性を、ごく自然に演じていることだ。だが、役とどう向き合うのかというと、「演じるって、特別なことはしないんです」と言う。「自然と溶け込んでいくというか。何かのきっかけで憑依するとかではなくて、だんだん馴染んでいく。溶け込んでいくというイメージで、はっきりとしたスイッチも自分の中にはないです。演じるのは1人ではできないので、特に今回は撮影した土地に誘われたのは大きいです。三重県の伊勢志摩の方で1か月間ロケをして、その土地に引っ張られて、そこの人間になっていく。デフォルメして作ろうとしても、どんどんうそになってしまうので」。

稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii
紘を「自分に対して興味がない人間」と語る稲垣さん。一方、自分については「他人の目を意識するのが仕事なので、やっぱり僕は山奥で備長炭を作っている職人とは違う」と言う。「でも、彼らも炭という商品を買って使ってくれる人のことを意識して考えている。僕も、僕の仕事を受け取る側のことをすごく意識します」。その一例が、昨年から始めたSNSだ。
「いままでやってなかったでしょ。それがSNSのコメントとかでファンの方や、1人1人とつながるじゃないですか。交換日記じゃないけど、いろいろとのぞかせてもらい、僕らも発信するようになった。そういうキャッチボールをすることによって、いろんな世界が見えてきた。同世代のファンの方について、何となく僕の中では出会った頃のままだったんです。当時はまだ彼女たちもティーンで、僕らもそうで。気づけば僕も40代ですし、ファンの皆さまもそれぞれの人生があって、いろんなステージを経てきて。それを見ることができるようになったのも大きいかもしれない。いろいろと気づかされることも多いです」。

稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii
「僕は14歳の頃からこの世界にいますが、最近は環境が変わったのもあって、いままで見えてなかったものが見えてきたり、もしかしたら、もっとちゃんと地に足がついてきたのかもしれない。毎日いろんな人と出会って忙しく過ごしてきたこともいまの自分を作ってきたものだから、否定するつもりはないんです。それはそれですごく鍛えられたと思うし。ただ、やっぱり慌ただしい毎日の中で見えなくなってたものも絶対あると思う。いまはちゃんと左右も後ろも360度、いろいろ見ながら、しっかり一歩一歩進んでいけてるなと思います」。

会話から垣間見える仲間への敬意


インタビュー後の写真撮影中、合間のわずかな時間に個人的にとても好きだった絋の衣装の話をしてみた。奇抜なデザインではない普段着や作業着だが、その何気なさや微妙な色使いが心に残る。そう伝えると、「これは衣装さんが喜びますよ」と優しい笑顔を見せた。

『半世界』(C)2018「半世界」FILM PARTNERS
「阪本監督や北野武さんの映画をやってらっしゃるベテランの方です。リアリティを持たせながら、映像のことも考えている。今回も古着をちょっとリメイクして作ったり、すごいこだわり持ってらっしゃいました。衣装合わせも全ポーズ着たら、3時間ぐらいかかりましたよ。3か月にわたる物語なので。映画芸術の中ではそういう細部ってすごく大切なので。僕も結構、映画衣装って見ちゃうんです。『これ、着ないだろ』と思ったりとか(笑)。絋の衣装は、市井の人に見えるし、職人にも見える。ちょうどいい具合の衣装でしたよね」。

スタッフの尽力が話題になるのを、自分のことのように喜ぶ人。べったりはしない。でも仲間を大切に思う。プロフェッショナルとしての美しい距離感と尊敬の表し方が、とても彼らしいと思った。

稲垣吾郎『半世界』/photo:You Ishii
◆ヘアメイク:金田順子
◆スタイリスト:細見佳代(ZEN creative)
◆衣装クレジット:LAD MUSICIAN(ラッド ミュージシャン)
《text:Yuki Tominaga/photo:You Ishii》

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