【MOVIEブログ】2019東京国際映画祭 Day4

10月31日、木曜日。8時45分起床、4時間半睡眠で、まずまずスッキリ起きられる(けれどずっと映画祭現場の夢を見ていた気もする)。外に出ると本日も好天!

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『チャクトゥとサルラ』(c)2019 TIFF
  • 『チャクトゥとサルラ』(c)2019 TIFF
10月31日、木曜日。8時45分起床、4時間半睡眠で、まずまずスッキリ起きられる(けれどずっと映画祭現場の夢を見ていた気もする)。外に出ると本日も好天!

9時半に本日の予定をおさらいし、10時に劇場へ。

『ミセス・ノイズィ』舞台挨拶。天野千尋監督、篠原ゆき子さん、大高洋子さん、長尾卓磨さん、宮崎太一さん、風祭ゆきさん、三輪隆さん、阿部隼也さんのみなさま。全員から一言ご挨拶を頂いて、そして天野監督のケンカをする人の心理に興味を抱いて作った物語です、といった説明を受けて、上映開始。

事務局に戻り、「TIFF Studio」関連のミーティング。そして予定の再確認をしたり、パソコンに向かったりしているうちにお弁当が到着したので、11時半にオムライスデミグラスソースをチンしてペロリと頂く。とても美味ししい。

劇場に戻り、12時25分から『ミセス・ノイズィ』Q&A。天野監督と、松枝佳紀プロデューサー。ワークショップを活用して企画を立ち上げ、それから本日に至るまで3年を費やした経緯がとても興味深い。客席で口火を切ったのは、東京国際映画祭の常連、滋賀県からのお客さんの絶賛コメント。伊丹十三監督が存命であったらこの映画を作るのでないかと思います、という最大限の賛辞に客席も大いに盛り上がる。

そしてキャスティングのプロセスや、キャラクター間の関係の構築の仕方などについて監督に語ってもらう。僕は監督のコメントの行間から、大変であったであろう3年を乗り越えて、ついに作品が完成した安堵感がにじみ出るのを感じる。もっとも、天野監督はどちらかと言えばポーカーフェイスなので、内面では大いに高揚感もあったかも。

監督がさらりと放った、これは反戦映画であると言っていいかもしれない、というコメントが刺さる。そして、僕がおそるおそる、「創作のスランプに悩み、仕事と子育てとの両立に悩むヒロインは監督自身を投影しているでしょうか?」と尋ねると、恥ずかしそうに微笑みながら、やはりそれはあります、と答える姿がとても印象的。深いところまで届く、大人の社会派コメディー・ドラマである『ミセス・ノイズィ』、大いに飛躍しますように!

とてもよいQ&Aだったのだけど、僕がミソを付けてしまった…。次の登壇が迫っており、オンタイムで終了すれば間に合うスケジュールだったのだけど、最後の質問者がとても長い(しかしとても有意義な)質問を英語でされたため、その通訳と監督のコメントに立ち会っていたら間に合わないのは確実となり、意を決して「とても重要なコメントなので、時間をかけて通訳して、時間をかけて回答して下さいね!」と監督と会場に告げて、僕は途中退場することにする。ああ、今年もやってしまった。司会の途中退場…。本当に申し訳ありません!(監督には夜のパーティで深くお詫び)。

そして飛び込んだのが、コンペ部門のグァテマラ映画『ラ・ヨローナ伝説』Q&A。ハイロ・ブスタマンテ監督が冒頭に長く話して、Q&A時間の半分以上がそれで過ぎてしまったのだけど、その内容がとても重要で映画の理解を深めるものだったので、僕を含めて会場は納得だったはず。ジェノサイドを指揮した将軍を裁く裁判に怪談伝説を絡ませる内容だけれども、監督が意図しているところはそこよりさらに深いところにあり、僕も客席も集中マックスで聞き入る。

根底にあるのは、差別。さまざまな形の差別がグァテマラには存在し、その実態を物語とメタファーとを駆使して露わにするのがブスタマンテ監督の意図のひとつであり、「差別三部作」の三作目にあたる『ラ・ヨローナ伝説』では(少し乱暴な言い換えをすると)リベラル差別を扱っている。そして、果てることのない女性差別への抵抗も監督作品に通底しており、創作の原動力になっている。実体験に裏付けされた社会派のストーリーテリングのレベルは相当な高さだ。そして、グァテマラの物語ではあるけれど、高度の普遍性を備えていることは、作品が世界中の映画祭から招待されていることからも自明だ。ああ、もっと時間があったなら。次は映像面についても聞いてみたい。

司会が終わって13時半。13時35分から、『マニャニータ』のポール・ソリアーノ監督にカフェで30分間、個人的にインタビュー。映画監督に至る道程や、フィリピン映画の現状、そしてソリアーノ監督の映画作りにかける思いを語ってもらう。若くして製作会社を興し、自分の作りたい作品を作るために商業映画もきっちり手掛ける環境を自ら構築する能力に、ソリアーノ監督の末永い活躍が期待できる。

さらに、15時半からはハイロ・ブスタマンテ監督にも時間をもらい、45分ほど個人インタビュー。いかにして映画監督を志すようになったかというところから、現時点に至るキャリアの話と映画に対する考え方について話してもらった。これがもう実に刺激的で面白い内容であり、ソリアーノ監督へのインタビューも合わせて今度落ち着いたら文字に起こして何らかの形で公表するつもり。

16時半から、『マニャニータ』のQ&A。ソリアーノ監督と、ベラ・パディーリャさん。女性スナイパーの魂の行方を描く本作は、ドラッグ中毒者やディーラーたちが巣くう隠れ家を包囲した警官隊が、なんと歌を歌うことでジャンキーたちの心を動かし無血投降させたという驚くべきニュースをソリアーノ監督が知ったことが出発点になっている。そこから女性スナイパーの物語を構築するのに力を貸したのがラヴ・ディアスであり、もうしびれずにはいられない。

上記に加え、今回は撮影面や、ベラさんが苦心したシーンなどにも触れてもらう。前回のQ&Aより少しライトな雰囲気になっただろうか? 好き嫌い、というか、合う合わないはある作品かもしれないけれど、合う人には徹底的に合うはずで、刺さった観客もかなり多かったみたいでとても嬉しくなる。

17時半に、東京国際映画祭のウェブ情報配信番組「TIFF Studio」に初の海外ゲストをお迎えする! という試み。『ディスコ』のヨールン監督をお迎えして、僕が簡単にインタビューする、という内容で、約15分間の生配信。僕はひとりで進行と聞き役と英語通訳をするのはおそらく初めてで、やはりこれは難しい! もう少し慣れなければ。

でも『ディスコ』は今夜に上映があるので、その数時間前に監督が出演してアピールすることが出来るのはかなり貴重な機会でもあり、「TIFF Studio」も精進してがんばろう。

急いでとんかつ弁当を頂いて、あ、今日は『カツベン!』上映の日だからカツ弁なのかな? などと考えたりしながらシネマズに向かう。

18時半から、スプラッシュ部門で渡辺紘文監督『叫び声』のQ&A司会へ。また純度の高い作品を送り込んできた渡辺監督、新作は、3年前に撮った映像を寝かせ、熟成させ、新たに撮影した映像を加えて作品として生みなおしたものだという。養豚所を舞台にした本作、監督は豚という動物に強い関心を持っているものの、その理由は自分でも説明できないという。もう真面目なのか、とぼけているのか分からない渡辺監督、僕は真面目だと思っているのだけど、どうだろう。

客席からも多く手が挙がり、渡辺監督の世界への興味が広がっていることが感じられる。モノクロ映像は渡辺作品の常であるけれど、本作は陰影が濃く、それは監督の心情を代弁していることや、雨について、音へのこだわり、そして弟の雄司さんの音楽について、など。人間の生活を描き、いろんなものが叫んでいる『叫び声』、奥が深すぎて30分があっという間に経過する。充実の上映だ!

EXシアターに移動して、19時50分からコンペの中国映画『チャクトゥとサルラ』(写真)のQ&A司会。ワン・ルイ監督、ジリムトゥさん、タナさん、撮影監督のリー・ウェイさんの4名が登壇。監督は気難しそうだけど実は優しそうでもある風格のある方、そしてタナさんはもう、とんでもなくチャーミング。さらに、壇上でようやく会うことができたジリムトゥさんは、笑顔のとびっきり素敵なナイスな方でたちまちファンになってしまう。リー・ウェイさんもあか抜けた感じの愛想の良さそうな方で、なんだかとってもよいチームだ!

最初の質問者の方がとても長く話してしまい(まあ、これは避けようがないのだけど、僕のリード不足でもあるので申し訳ない)、しかも現在の中国映画の状況についてという、映画の内容と直接関係の無い話題が長引いてしまい、あっという間に予定時間が来てしまった。

しかし、どうしてもここで終わるわけにはいかないと思い、あとから叱られるのを承知で、15分ほど(僕の勝手な判断で)延長する。すると次から質問した方々が僕の心を読んでくれたかのようなタイムリーな質問を撮影監督とタナさんにしてくれて、最後に僕からジリムトゥさんに質問を振って、最終的にはとてもよい雰囲気でQ&Aを終えることが出来た気がする。観客の方々と、無言の連携を取りながらQ&Aをちゃんとした形に持って行けた気がして、何だか達成感!

それにしても、『チャクトゥとサルラ』、とても素敵なゲストたちなので、次回の上映で多くの方に出会って頂きたい!

上映終わり、映画祭に出品されている日本映画関係者と海外の映画祭プログラマーたちとの交流パーティに寄る。かなり混みあっていて、あまりグイグイ入っていく気力が足りず、入り口近辺で幾人かの人とお話しをして、退場。

そこからフィリピンの映画機関の方が主催するフィリピンパーティが行われているバーに行き(今年は映画祭に8本フィリピン映画が上映されている)、ここでもご挨拶。常に次の予定が気になっているので、話し込んで時間を忘れてしまうのが何よりも怖い。なので、どうしても軽い挨拶が中心になってしまうのがもどかしい。もっときちんとパーティに出ないといけないのだけど、体が足りない。というか、何でもやりたがり過ぎ、ということか。

23時にEXシアターに移動して、『ディスコ』の2度目のQ&A。今日のジョセフィーヌさんは、真っ白なロングのワンピースをまとい、もう眩い光を放っていて、またまた直視が出来ない美しさ。23時半を回っても多くの観客が残り、話に聞き入ってくれる。

監督はちょっと疲れていたのか、信仰問題というヘヴィーな話題への回答に言葉を見つけるのを苦心する場面が見られて気の毒だったけれど、それでも何とか真摯に返答しようとする姿勢はかなり響いたはず。カルト宗教と「モダン教会」の違いなど、現代社会における重要な事象が語られる貴重な場となり、通訳の今井さんも監督のコメントを絶妙に補いながら完璧に訳し、これまたとても刺激的な時間。

Q&A後のサイン会に終わりまで立ち会って、事務局にもどって0時半。そこから「TIFF Studio」の生配信で本日の出来事と明日以降のおススメをご報告。ちょっと話すトーンが一本調子になってしまい、反省。明日はちょっと話すペースを変えてみよう。

配信終わって1時。チキン弁当と豚シャブ弁当を2個頂いて、ブログ書いていると、4時が近づいてきた。あがります!
《矢田部吉彦》

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