“アイルランド版ハリー・ポッター”、もしくは“悪のハリー・ポッター”と呼ばれるベストセラー児童小説(もちろん大人も夢中になれる!)「アルテミス・ファウル」シリーズを、実写版『シンデレラ』を手掛け、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』にも出演していたケネス・ブラナー監督をはじめとする豪華スタッフ&キャストで映画化。『アルテミスと妖精の身代金』は、父親と引き離された12歳の少年の成長物語をファンタジー・アクションとして描き出す。舞台となるのは、それこそ「ハリー・ポッター」や「指輪物語」など現存のファンタジーに大きな影響を与えてきた神話や伝承の宝庫・アイルランド。今作では、妖精たち、エルフやドワーフ、ゴブリン、ケンタウルスなどは人間の横行によって地底に追いやられ、地上よりもはるかに進んだ科学力に魔法を融合させたテクノロジーによって独自の世界を構築している点が大きな特徴となっている。その地底世界は『スター・ウォーズ』に登場する、どこかの惑星の宇宙ステーションのように独創的で多様。さらに彼らのハイテクノロジーは、ケネス監督出演の『TENET テネット』さながらに時間さえも操ることができる。そんな世界の住人たちも実にユニーク。原作では男性のLEP(地底警察)ルート司令官をベテランのジュディ・デンチが威厳たっぷりに演じ、きっちりと場を締める。一番のお気に入りは、今作の語り部となるドワーフの異端児、マルチ・ディガムズを演じるジョシュ・ギャッド。彼が演じるマルチの特技、穴掘りと“ガス攻撃”は一度観たら忘れられないほどインパクト大。ジョシュ本人も言うように、誇りを持ちユーモアのスパイスを利かせる点はハグリッドのようで、アウトローを気取るところはハン・ソロかも!?大胆な活躍を見せるのが、エルフの女性警官ホリー・ショート役のララ・マクドネル。勇敢で少々向こう見ずなところのある行動派のホリーを好演しており、1,200人の中から選ばれた主人公アルテミス・ファウル役の映画初出演フェルディア・ショウとともにこれからが楽しみな存在だ。コリン・ファレル演じる大好きな父アルテミス・ファウル・シニアといるときにだけ見せる素直さを、サングラスの下に覆い隠しているアルテミス。だが、“誘拐した妖精”ホリーとのやりとりの中で彼の心に芽生えたものと、マルチたちとの新しい出会いが孤独でひねた少年だった彼を変えていく。コロナ禍の混乱の中でも広がる一方の、排外主義に対する示唆も感じさせている。
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