【MOVIEブログ】2020東京国際映画祭 Day2

11月1日、日曜日。8時15分起床、外に出ると曇り。昨日のオープニングであれだけ好天だったので、もうこれ以上は天気に注文を付けられない。

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『カム・アンド・ゴー』(c)2020 TIFF
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11月1日、日曜日。8時15分起床、外に出ると曇り。昨日のオープニングであれだけ好天だったので、もうこれ以上は天気に注文を付けられない。

スターバックスに寄ってコーヒーを買うと、本日から「クリスマス・ブレンド」。マジか。ハロウィンが終わり、11月1日からクリスマスモードということらしい。今更驚くことではないのだろうけれど、やはり驚く。

9時に職場で本日の予定を確認。司会がたくさん入っているけれど、登壇時間の間隔が詰まっているケースが少しある。入念にシミュレーションする。

10時15分に劇場に行き、「ティーンズ」部門内の「チルドレン」セグメントで「山崎バニラの活弁小絵巻2020」にスタンバイ。バニラさんのカツベン付き上映も今年が3回目。すっかり好例になってきたかな。バニラさんとお会いすることが個人的にもTIFFの風物詩になってきた気がする。リアルでお会い出来て嬉しい。

上映開始前に登壇し、バニラさんを招き入れ、あとはお任せ。というか、壇上はバニラさんの独壇場だ。大正琴とピアノを演奏しながらの活弁は、バニラさんだけに可能な芸。ああ、このまま上映を見たいなあ(なんといっても『キートンの探偵学入門』をやるのだ)と後ろ髪を引かれながら、事務局に戻る。

11時半から「TIFF Studio」の会期中特別版。『カム・アンド・ゴー』のリム・カーワイ監督と、『海辺の彼女たち』の藤元明緒監督のクロストークを企画したのだ。11時45分から約一時間、藤元監督が10年ほど前にカーワイ監督の現場に入ったことがあるという縁や、それぞれの作品へのアプローチの共通点や相違点などについて話してもらう。

日本で暮らすアジアの人々の状況を描くという点で2人は共通点があるものの、カーワイ監督は群像劇の形で様々な状況を描き、藤元監督はむしろ個々の内面を掘り下げる。このアプローチの違いは興味深い。2人とも今晩上映があるので、こういうタイミングでクロストークが出来るのは貴重だ。

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終了して13時。本日昼は「利久の牛タン弁当」。チンして頂く。ああ美味しい。しかし幸せな時間は早食いの僕には10分足らずで終わってしまう。

14時45分から『君は永遠にそいつらより若い』の上映前舞台挨拶の司会へ。吉野竜平監督、佐久間由衣さん、奈緒さん。佐久間さんには演じたヒロインの内面を語ってもらい(「表面上はお調子者のように振る舞っているが、内面ではよからぬ物事が自分のせいだと考えて悶々としてしまう人物」)、奈緒さんも役の解釈を「過去の傷を抱えて生きているが、人との出会いに救われていく人物」と話してもらう。

監督は「コロナ前に書かれた映画だが、喪失に触れる物語は今こそ訴えかける内容かもしれない」と締めくくり、上映開始へ。才能溢れる2人の若い俳優が演じる魂の物語に、世界で初めて接する観客はどのように反応するだろうか? Q&Aが楽しみだ。

いったん事務局に戻る道中で、映画祭の学生応援団のOGOBに出会う。今夜見る映画を迷っていたので、時間が合うなら『親愛なる同志たちへ』を是非、と勧めてみる。さらに別のOBOGにも会うと、『皮膚を売った男』を見たということで「想像と違ったけれど面白かった」との感想で、特にMさんは「昨日『リトル・ガール』見たのですが、初めてマスクがぐしょぐしょになるほど冒頭から泣いた」とのこと。おお。

事務局でパソコンに戻り、短いミーティングを一件。あっという間に上映終了時間が近づいてきたので、EXシアターに戻る。

というわけで17時から『君は永遠にそいつらより若い』の上映後Q&A。吉野竜平監督に加え、佐久間由衣さんがQ&Aに参加して下さった!

観客が前のめりになっている空気が伝わる。佐久間さんの役作りに関する質問がやはり多い。しかし、まだ上映があるし、あまり書けないかな…。かなり佐久間さんのアイディアがヒロインのキャラクター作りに取り入れられているとのことで、例えば赤い髪について。淡い赤色のイメージが、作品の裏テーマになっていたりするので、これからご覧になる方は注目してもらったら面白いはず。

監督からのアドバイスとしては、あまり良い人間になってもらう必要はないということだったとのこと。佐久間さん演じるヒロイン、そして奈緒さん演じるヒロインの友人は、だらしない時もあるし、ズルすることだってある。善人になる必要はないと監督は告げたそうで、なるほどそれはよく分かると僕は納得。なんだか、映画のトーンを決めているような気もする。

原作との比較の質問も面白く、ヒロインの卒論のテーマが原作と映画とでは異なっている理由が映画ファンには面白い。そして、佐久間さんは、高所が苦手でなく、その理由とは…。回答に僕はのけぞって笑ってしまったのだけど、これは内緒にしようかな(ネタバレではないのだけど、なんとなく!)。

会場の空気が暖かいQ&Aだったなあ。しかし、もっともっと聞きたいことがあった! 時間が足りないのは映画祭の常だけれど、んー、次の機会がありますように。公開は2021年。楽しみに待つことにしよう。後ろ髪を引かれつつ、事務局へ戻る。

18時、お弁当が届いているコーナーに行き、迷わず「ソースとんかつ弁当」を選択。食べた直後から力が付く感じがする。実際にどうかはともかくとして、気持ちが盛り上がるのが大事なのだ。

18時半にシネマズに戻り、『海辺の彼女たち』の上映後Q&A司会へ。打ち合わせを経て、18時48分から藤元明緒監督、撮影監督の岸健太郎さん、プロデューサーの渡邉一考さんをお迎えしてQ&A開始。コンパクトな中にも、映画を理解し、楽しむためのポイントがたくさん詰まった充実のQ&Aだった。

まずは来日の叶わなかったベトナムの女優たちからのメッセージを渡邉さんが代読してくれる(女優さんたちは「TIFFトークサロン」に登場してもらう予定!)。

そして、実は東南アジアの他の国でもオーディションを実施したのだけれど、結果的にベトナムで大勢の女優をオーディションし、本作の3名が決定した経緯を語ってもらう。そして、実際にベトナムから労働研修に来日する人が多いという事実も、映画にリアリティを与えることとなったという。

客席からは、映画は女性たちが研修先の企業を脱出するところから始まるけれど、どうしてその企業の悪行を描かなかったのか、という質問。それに対する答えが、映画の構造をくっきりと浮かび上がらせるものだったのだけど、ちょっとこれはネタバレに繋がるかもしれないので、まだ控えることにしよう。

また、少ないテイクで一気に撮ったように見えながら、実はワンシーンに数日かけるくらい数10テイクを撮って粘ったシーンもあったことや、雪国での撮影にまつわる苦労話、そしてラストシーンを巡る考察など、興味が尽きない。まだ上映が複数回あるので、その時に追加で書けたらいいかな。ともかく残り2回の上映があるこの重要作を、多くの人に見てもらいたい!

フォトセッションに入るところで僕は場を中座し、EXシアターへダッシュ。スタッフや出演者のみなさんに迷惑と心配をかけてはいけないので(十分にかけているけれど)、落ち着きを失わないように走る。

19時25分にEXシアターに到着し、19時30分から『カム・アンド・ゴー』の上映前舞台挨拶スタート。息を整え、リム・カーワイ監督、渡辺真起子さん、桂雀々さん、兎丸愛美さん、尚玄さん、望月オーソンさんを壇上に招き入れる。登壇者6名、英語の逐次通訳が入り、全員にコメントをもらい、爆笑が何度も起き、フォトセッションも実施し、そして全てが15分以内で完了するという奇跡のオンタイム! これはちょっといわゆる神回だ。

それは、出演者のみなさまの抜群に機転の利いたコメントがあったから。挨拶の言葉とともに作品の見どころを語ってもらおうとしたところ、まだ誰も作品を見ていないのはおろか、自分がどのような形で出演しているのか検討もつかないとのことで、全員のコメントが最高に面白い、桂雀々師匠に至っては「自分がどこに出ているのか、『自分探し』に来ました」とのコメントで、もう大爆笑。素晴らしい雰囲気の中で上映開始!

シネマズに戻ると階下で藤元監督に会えたので、フォトセッション中に外さざるを得なかったことをお詫びし、それでも短時間ながら充実したトークだったことを語り合う。そして『海辺の彼女たち』の撮影監督の岸健太郎さんは『鈴木さん』のキャメラマンでもあるということで、2作の撮影スタイルの違いもその場で伺うことができた。こういうさりげない場でのさりげない会話がたまらなく楽しい。これぞ映画祭。

藤元監督と岸さんと別れ、事務局に向かうと、お客さんから声を掛けられ「『老人スパイ』を見たところなのです、もう胸がいっぱいで…」と感動を伝えてくれる。ああ、とても嬉しい。「親を大事にしましょうね…!」と僕も応える。

事務局に戻り、パソコンに向かってメールを少し読んで、今日のブログを少し書く。一瞬睡魔に襲われるものの、大事に至らず。

21時半から「ワールドフォーカス」部門出品の『トゥルーノース』のQ&A司会へ。登壇ゲストは清水ハン栄治監督と、アドヴァイザーであり「ノーフェンス」事務局長のソン・ユンボクさん。清水監督が北朝鮮の強制収容所の実態をアニメーションで描こうとした経緯と、意図を語ってもらう。そして北朝鮮や収容所を脱出した人々の経験談を紹介してくれるソンさんのコメントが、やはり突き刺さる。

しかし超ヘヴィーな主題をアニメーションで語ることで、伝わりやすくしようという監督の意図は明解で爽やかですらあり、エンターテイメント色も盛り込むセンスを持つ清水監督の存在が場をポジティブで明るいものにしている。こういう雰囲気は本当に映画祭ならではだと思うし、とても貴重なQ&Aだ。

が、監督の話をもう少し聞くべきだと思い、少し時間をオーバーして進行したのだけれど、結果自分の首は締めてしまい、次の登壇に間に合わなくなるギリギリになってしまった。それでも無理矢理Q&Aを終了させるよりも監督の話を聞いてもらう方が重要だと思い、監督にお詫びしつつ、中座する。司会者がQ&A終盤でいなくなるという恥ずかしい事態を、映画祭2日目にして犯してしまった…。座の空気を悪くしてしまっていないことを祈るばかり…。それにしても2日目でやらかすとは、先が思いやられる…。

そして急いでEXシアターに向かう。22時半から『カム・アンド・ゴー』のQ&A司会。客席から再登壇したのは、リム・カーワイ監督、渡辺真起子さん、桂雀々さん、兎丸愛美さん。

役者のみなさんに初鑑賞の感想を伺っていき、最初から笑いの連続で気持ちがいい。そしてロケ地である大阪の梅田周辺について、監督の愛着を語ってもらうなど、和やかな雰囲気で進行していく。

そして、「本作は日本人であれば目をそむけたくなるような現実のダークサイドを描いているが、監督の製作意図はどこにあるでしょうか?」という客席からの素晴らしい直球質問で、一気にQ&Aは核心を突いていく。

リム・カーワイ監督は長く答えてくれて、それが見事に映画の本質を言い表していた。ネタバレではないと思うので、思い出しながら書いてみる。

「大阪ではかつて2本作品を撮っており、本作は大阪3部作の3本目と位置付けている。過去2作は日本と東アジアの関係を描いたが、今回は東南アジアを含めた広いアジアと日本の関係を描こうと決めていた。インバウンド政策が導入されて以来、日本を訪れる外国人の数は(過去の2作を撮っていた時期に比べて)各段に増えた。自分が大阪に留学していた時期に比べても、ビザの取得が容易になったし、不要になったケースもある。状況はここ数年で大幅に変わった。それが描きたかった。大変な思いをしている外国人はたくさんいる。しかし、外国人たちは確かに大変だけれども、日本で生きることに必死で、自国人のことしか考えていない。日本で起きていることに関心がないし、他の外国人がどういう暮らしをしているかにも関心がない。日本の生きにくさを描くだけではなくて、例えば、貧しい外国人がネットカフェに泊まったり、危ない職業に手を出さざるを得なかったりする状況にあることを、日本人だけでなく他の外国人も関心を向けないことを描きたかった。その環境を描くには、日本のダークサイドも含まれるかもしれない。しかし批判するわけではなく、状況を描きたかった。状況そのものを描きたったのです」。

マレーシア出身のカーワイ監督は、見事に日本語で説明しきった。この状況を描くために用意されたのが、無数の人物が登場し、交差する、『カム・アンド・ゴー』の大阪アジア曼荼羅なのだ。本当に、リム・カーワイにしか獲得できない視点であるし、描くことの出来ない作品だ。とても腑に落ちる説明で、明快にして、的確。完璧な答えだなと、僕は唸ってしまった。

映画の核心を語ってもらったと思ったので、役者のみなさんに僕から問いかけるスタイルに切り替え、渡辺真起子さんにカーワイ監督の即興演出について尋ねてみる。真起子さん自身は、即興は過去にも経験があるので対応が難しかったわけではないと答えてくれる。カーワイ監督の特徴としては、大阪の土地を知り尽くし、とても準備が丁寧であるから、あとは任せてもらえて安心できたとのこと。

雀々師匠には、大阪人の先輩としてのアドバイスをカーワイ監督にしてもらえますか?と尋ねる、大阪の人間のディープな姿をカーワイ監督には伝え続けてもらいたいとエールを送ってくれる。兎丸さんに、カーワイ監督の現場で学んだことは?と尋ねると、うーん、と悩んだので、「ないんかい!」と雀々師匠が突っ込んで場内爆笑。しかし兎丸さんが言うには、ギャラのことから集合時間のことまで、ありとあらゆる細かい事まで全てカーワイ監督から直接連絡が来るのでびっくりしたとのこと。しかも、全キャストに対してそうであったらしい。

「自分でやった方が速いし決定できるし、そもそもスタッフ少ないから」とカーワイ監督は笑っていたけれど、真起子さんは、「頼むからやめてほしい。撮影前に既に顔が死神みたいだったし、頼むから演出に集中してくれと思った」と言って、またまた爆笑。

素晴らしく有意義で、楽しく、笑えて、熱く盛り上がったQ&A。遅くまで残って下さったたくさんの観客にも感謝! そして『カム・アンド・ゴー』チームに、ひたすら感謝です。これまた映画祭の醍醐味が詰まった時間となった!

あ、最後に僕が監督に「『カム・アンド・ゴー』のお披露目の場として大阪アジアン映画祭でなく、東京国際映画祭を選んでくれてありがとうございます」とお礼を言うと、場内から爆笑が。ディープな映画祭ファンもいらっしゃったのかな。嬉しい。

Q&A終わり、名残り惜しいけれどもみなさんとお別れし、事務局へ戻る。今年は公式のパーティーや食事会や飲み会がひとつもないので、ゲストの方々との交流が壇上以外でほとんど出来ないのだ。でもまあ、こればっかりはしょうがない。今年は壇上の盛り上がりに全てを注ごう。

0時過ぎに戻り、シャケ弁当にハンバーグを乗せて、深夜弁当を頂く。パソコンに向かい、未読メールが100通近くあるので気を失いそうになり、そしてブログを書いて、さらに再見が必要だった作品を見直していたら猛烈に感動してしまい、茫然とした時間を少し過ごし、本日は3時に業務終了!
《矢田部吉彦》

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