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【劇場の声を訊く:後編】私たちの声が政府にきちんと届くまで…「SAVE the CINEMA」映画という文化を守るために必要なこと

シネマカフェ2月の特集は「ミニシアターの魅力」。

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シネマカフェ2月の特集は「ミニシアターの魅力」。【劇場の声を訊く】前編では新宿武蔵野館とシネクイントの方にお話を伺いましたが、後編はコロナ禍で閉館を余儀なくされる映画館、とりわけ存続の危機に直面している小規模映画館(ミニシアター)を救うべく始動した「SAVE the CINEMA」のメンバーでコミュニティシネマセンター事務局の小川茉侑さんにミニシアターの現状と課題、映画という文化を守るために必要なことを語っていただきました。

ミニシアターを救うため立ち上がった「SAVE the CINEMA」



――SAVE the CINEMAの取り組みについて教えてください。

昨年4月に緊急事態宣言が全国で発令され、日本中の映画館が休館することになりました。再開の目途が立たないなか、ミニシアターは閉館の瀬戸際に立たされました。

日本は、世界中の多様な映画を見ることができる、世界でも有数の映画(上映)大国です。

そして、全国のスクリーン数のほぼ9割をシネマコンプレックスが占めるという日本の状況の中で、この映画文化の多様性を支えているのは残り1割のミニシアターのスクリーンなのです。

このままではミニシアターは閉館してしまうのではないかと危機感を持った人たちが、所属や分野を超えて集まり、ミニシアターを救うため、SAVE the CINEMA(以下、STC)を立ち上げました。

政府に対しては、緊急支援を求める要望書を作成し、賛同を求める署名活動も行いました。最終的に、91,659筆もの署名が集まりました。

同じ時期にスタートしたミニシアター・エイド基金は、大規模なクラウドファンディングを行い、約1か月で3.3億円という寄付を得ることができました。

しかし、緊急事態宣言解除後もコロナの影響の長期化は避けられないと判断し、同じように活動を始めていた演劇関係者(演劇緊急支援プロジェクト)や、ライブハウス/クラブ関係者(SaveOurSpace)と三者共同で、昨年5月に「We Need Culture-文化芸術復興基金をつくろう-」(以下、WNC)というプロジェクトを立ち上げました。現在に至るまで、一緒に活動を行っています。

今年1月、2度目の緊急事態宣言が発令されました。STCやWNCでは、映画館を含む文化芸術団体が存続するために、政府や関係省庁に支援の陳情を行うなど、現在も活動を続けています。


コロナ禍でのミニシアターの現状と課題


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――緊急事態宣言が延長されましたが、コロナ禍のミニシアターの現状と課題を教えてください。

今回の緊急事態宣言では、昨年とは違い、全国のミニシアターは営業しています。ただ、緊急事態宣言が出ている地域では、政府の「働きかけ」により、1月から緊急事態宣言が解除されるまで、夜8時までの時短営業を余儀なくされています。

これまで、全国のミニシアターの多くは、持続化給付金、雇用調整助成金といった国の支援制度に加えて、ミニシアター・エイド基金や、独自のクラウドファンディングや物販、また借入などで何とか乗り越えてきていましたが、このままコロナによる影響が長期化すると、近いうちにそれらも枯渇してしまうのではないかと懸念しています。

文化庁による「文化芸術活動の継続支援事業」などの緊急支援策では、STCやWNCの活動により、ミニシアターやライブハウスも申請の対象となりました。ただ、これらの支援策の多くは、新たに企画されたイベントに対し一部を支援するものです。イベントを企画・実施できるような余裕がない団体は、支援すら受けられないという矛盾があります。

このような問題点もありますが、実際、公的支援(「収益力強化事業」)のおかげでできたこともあります。例えばユーロスペースを拠点に全国18のミニシアターで実施された「現代アートハウス入門」のように、オンラインのシステム利用したイベントが、文化庁の支援を得て全国のミニシアターで実施されています。

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私は普段、全国のミニシアターや映画祭、自主上映団体等のネットワーク事業を行うコミュニティシネマセンターというところで働いているのですが、この支援によって、全国の上映イベント情報を紹介するサイト「Arthouse Press/藝術電影館通信」を立ち上げました。各地のミニシアターで行われたイベントを後日オンラインで配信するなど、様々な事情で出かけることが困難な人が映画館を「訪れる」可能性を広げるために、日々試行錯誤しています。

今回を機に、ネット回線やオンライン中継のシステムを新しく整備したり、ポッドキャストなど新たな取り組みを始めたりしたミニシアターもいくつかあります。ミニシアターにとっても、オンライン環境をアップデートするいい機会になりました。


ミニシアター存続のためこれから必要なこと


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――映画という文化を守るためにいま必要なこと・すべきことは何でしょうか?

緊急的な支援という意味では、持続化給付金のような直接的な給付が必要です。今後の文化のあり方を考えると、単発のイベント助成だけでなく、ミニシアターなど地域の文化芸術を担う団体に対する継続的な活動支援が絶対に必要となります。韓国やEU加盟国など海外では既に実施されていますし、日本でも実現できないはずはありません。

文化庁に対してはコロナよりずっと前から、映画館への継続的な活動支援の必要性を訴えてきました。中には理解を示す方もいますが、実現するには既存の枠組みを超える必要があり、まだまだハードルは高そうです。

STCによる署名で9万筆、ミニシアター・エイド基金では3.3億円が集まり、ミニシアターという存在が、どれほど多くの人に必要とされているのか、相対的な数値として可視化されました。また、STCの活動を通じて、ミニシアター地域における役割や重要性は、広く知られるようになってきている実感はあります。

しかし、1年も続けていると、「まだ言っているのか」といったような、飽きられているような印象も、一方であります。より多くの人に活動を理解してもらえるよう、ミニシアターなどの文化芸術団体が、いま具体的にどういった状況で、どのような支援が必要なのか、データがグラフを用いてわかりやすく伝えてみる試みももっとやっていきたいなと考えています。

私たちの声が政府にきちんと届くまで、引き続き様々なかたちで活動を発信していきたいと思います。

――思い出のミニシアター・作品があれば教えてください。

浪人生だった夏のある日、突然予備校の授業をサボりたくなり、ちょうどいい時間に上映していた『画家と庭師のカンパーニュ』(@ル・シネマ)と『海辺のポーリーヌ』(@ユーロスペース)を観に行きました。ル・シネマで見た『画家と庭師のカンパーニュ』は、内容はともかく号泣したことだけは覚えています。

そのあと急いですぐ近くのユーロスペースへ行き、ロメールの『海辺のポーリーヌ』を見ました。その日の私の服装がたまたま主人公の少女と同じようなボーダーシャツとショートパンツで、小麦色の肌や髪型までほぼ同じだったので、他の観客の人から熱狂的なファンだと思われているんじゃないかと自意識過剰になり、上映終了後、そそくさと下を向いて劇場を出ました。これが私の初めてのミニシアター体験です。

いま私が働いているコミュニティシネマセンターの事務所はユーロスペースと同じビルにあるんですが、将来自分が同じビルで働くようになるとは夢にも思ってもいなかったので、不思議な縁を感じます。
《シネマカフェ編集部》

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