『銀河ヒッチハイク・ガイド』『ギャラクシー・クエスト』… 驚きが詰まった宝箱のようなSF映画

映画とは、人間の想像力と、想像世界を具現化する技術、個性的な表現を楽しむ総合芸術。なかでも、SFというジャンルは、映像文化の発展に大きく貢献してきた。

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『銀河ヒッチハイク・ガイド』(C) APOLLO
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  • 『ギャラクシー・クエスト』(C) APOLLO
  • 『アイアン・ジャイアント』(C) APOLLO
  • 『アイアン・ジャイアント』(C) APOLLO
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  • 『ギャラクシー・クエスト』(C) APOLLO
《text:June Makiguchi》

映画とは、人間の想像力と、想像世界を具現化する技術、個性的な表現を楽しむ総合芸術。なかでも、SFというジャンルは、映像文化の発展に大きく貢献してきた。ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』や『海底2万マイル』が生まれた1900年代初頭、それを観た人々は、どれほど腰を抜かし、驚きに目を輝かせ、胸をワクワクさせたことだろう。知られざる未来のワールドや、実際には存在しない世界をリアルに写し出したいと、映像作家たちは新しい表現方法や撮影技術を用いて、映画を進化させてきたのだ。

『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』『ブレードランナー』『スター・ウォーズ』シリーズなど、映像の斬新さに定評のあったSFを初めて観た時の驚きは、宝物だ。だが、発表当時、多くの映像ファンが度肝を抜かれた後に抱いた「どうやって撮ったの?」という感想は、ある意味無粋だ。名作SFは、最新技術や表現方法だけに囚われていない。それらは物語を理想的に語るためのツールでしかないのだ。興業成績だけで名を残すのではなく、名作として観客の心に残る作品には、必ずストーリーの面白さがある。

『未知との遭遇』(C) APOLLO

SF映画特集を組まれても、なかなか筆頭には上がらない作品の中にも、面白い映画は数多い。科学的な視点から、現代とは違う非現実世界を描くということがSFの定義であるならば、そこで描かれるストーリーは多岐にわたるのだ。宇宙人の襲来、地球滅亡、タイムマシンでの時間旅行、ロボットのいる世界だけでなく、人類が遺伝子操作される未来を描いた『ガタカ』や、人の潜在意識に入り込む『インセプション』、AIとの恋を描いた『her/世界でひとつの彼女』など、すぐにやって来そうな未来で展開する究極の人間ドラマも魅力的だ。作品の幅が広いだけに、人によって好きな作品がかなり異なるのも、このジャンルの面白いところだろう。

私のお気に入りはといえば、SFコメディ『ギャラクシー・クエスト』だ。主人公は、打ち切りとなって20年近く経っていても、カルト的な人気を誇る人気TVシリーズ「ギャラクシー・クエスト」の出演俳優たち。毎年開催されるコンベンションには、コスプレした熱狂的な“クエスタリアン”が集う。一方で、出演者たちは、いつまでも役のイメージに囚われ続けることに不満を持っている。そこへ、クラトゥ星雲から来たというサーミアンと名乗るグループが会場にやって来る。宇宙で受信した“歴史的ドキュメンタリー”「ギャラクシー・クエスト」の英雄たちに、悪者エイリアンと戦うため力を貸して欲しいと訴えてきたのだ。

始めは、思い込みの激しい“ファン”に困惑気味の俳優たちも、やがて彼らの話を信じざるを得なくなり、戦闘に巻き込まれていく。本作の大きな魅力は、SF作品へのオマージュを込めた傑作パロディであること。そこにひねりが加わり、冒険と感動が見事に織り混ざっていること。そして、サーミアンたちからの純粋な信頼を受けて、自尊心を失っていた落ち目の俳優たちが、自尊心を再び取り戻していくという良質な人間ドラマでもあることだ。

ありえない設定の数々、とんでもない急展開の波に飲まれながら、「そんなバカな」と大笑いしているうちに出演者たちに感情移入し、涙まで流してしまう始末だ。見始めた時と、中盤、終盤での感情の振れ幅がとにかく大きく、終演後の満足感も極上だ。アラン・リックマンのありし日の勇姿が観られるのも魅力のひとつとなっている。

意外な名作という意味では、『アイアン・ジャイアント』も紹介しておきたい。手書きのタッチが可愛らしいアニメーション作品なので、子供向けと思いきや、大人が観れば物語の深さを味わうことが出来るだろう。舞台は1957年のアメリカ。メイン州の田舎町で母親と暮らす少年ホーガースと、流星とともに森に突然現れた巨大なロボット、アイアン・ジャイアントとの友情物語だ。ホーガースは、心優しいジャイアントを大人の目から匿っていたのだが、政府の捜査官に見つかってしまう。やがて、攻撃を受けることで豹変するジャイアントの悲しい秘密が明らかとなり…。

偏見なく素直な心で物事を見つめる子供と、すべてを厄介事だと判断する大人との違いが、色濃く描かれているこの作品。シンプルでエモーショナルな物語だが、それは観る者の年代によって、違った感動を呼ぶ多層的な映画でもある。監督が『レミーのおいしいレストラン』のブラッド・バードだと聞けばなるほどと思う人も多いだろう。「原子爆弾」がモチーフとして登場するが、それは短絡的かつ攻撃的な大人社会の欠陥、大きな過ちの象徴として描かれているあたりに、平和への祈りを感じさせる。米ソ冷戦時代という背景を意識しておくと、本作の根底にある、愚かな争いへの警鐘のようなものも感じ取れることだろう。

最後におすすめしておきたいのが、『銀河ヒッチハイク・ガイド』だ。英国の作家ダグラス・アダムスによる原作は、あのイーロン・マスクの愛読書でもあったという。宇宙で銀河ハイウェイのバイパスを造るにあたり、その計画地上にあった地球が破壊されるところからストーリーは始まる。英国に暮らすアーサーは、間一髪で、実は宇宙人だったという友人に助けられ、宇宙をヒッチハイクで放浪することになり…。

実に英国的な、詩や紅茶、哲学にまつわるエピソードやギャグ満載で、楽しいのだが、ほとんどがばかばかしい。ある意味、最新技術の大いなる無駄遣いでできている。(失礼!) でも、これは本作を愛する私からの最大限の賛辞だ。SFにつきものの特撮では、ブルーバックやグリーンバックで、何もなく、誰も居ないのに真剣に戦ったり、笑ったりする。実にばかばかしい。でも、それでいいのだ。ばかばかしいことを本気でやる。これは創作における原点であり必要なことなのだと感じさせるのが本作なのだ。お気に入りのパートは、イギリス・ジョークにさんざんお付き合いした後の、1時間20分あたりからのくだり。惑星を制作する会社で、地球の制作を担当したビル・ナイ演じる案内役が登場するエピソードが実に独創的で楽しい。冒頭のイルカの歌は、人類の変わらぬ愚かさをおちょくっている感じがして、実はけっこう胸に刺さる。

今後も、過去の作品に影響を受けた名作が、数え切れないほど登場することだろう。2021年の新作では、話の複雑さから映像化困難とされ、何度も作家たちに挑まれてきた『DUNE/デューン 砂の惑星』が気になるところだ。個人的には、デヴィッド・リンチ版、スティング出演作がなじみ深いが、新作ではティモシー・シャラメの演技に注目したい。マーベルの最強ヒーローチームの活躍を描く『エターナルズ』も、絶対に楽しめるはずという安心感と、期待を上回ってくれるはずというワクワク感で待ちきれない。監督は、マンガをはじめ日本文化をこよなく愛するクロエ・ジャオ。『ノマドランド』で米アカデミー賞監督賞を受賞した、クロエ・ジャオ監督がどう撮るかに注目が集まっている。

映画好きがSF作品から目が離せないのは、人間の想像力、夢、希望がたっぷり詰まっているから。SF映画は、今も昔も驚きが詰まった宝箱なのだ。

《text:June Makiguchi》

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