圧倒的オーラで世界を魅了する香港映画のスターたち

『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で世界の映画ファンを虜にしたトニー・レオンなど、ハリウッド映画への出演を通して、香港映画のスターが世界に“再発見”されている。ベテランから若手まで、いま注目の俳優たちを紹介。

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『夢の向こうに』(提供=香港映画祭実行委員会)
  • 『夢の向こうに』(提供=香港映画祭実行委員会)
  • 『シャン・チー/ テン・リングスの伝説』 (C)2021 MARVEL
  • ミシェル・ヨー Photo by Mike Coppola/Getty Images for Turner
  • ミシェル・ヨー Photo by Ian Gavan/Getty Images for Disney
  • 『夢の向こうに』のテレンス・ラウとセシリア・チョイ(提供=香港映画祭実行委員会)
  • 『レイジング・ファイア』(C)Emperor Film Production Company Limited Tencent Pictures Culture Media Company Limited Super Bullet Pictures Limited  ALL RIGHTS RESERVED
  • 『レイジング・ファイア』(C)Emperor Film Production Company Limited Tencent Pictures Culture Media Company Limited Super Bullet Pictures Limited  ALL RIGHTS RESERVED
  • 『レイジング・ファイア』(C)Emperor Film Production Company Limited Tencent Pictures Culture Media Company Limited Super Bullet Pictures Limited  ALL RIGHTS RESERVED
《text:Rie Nitta》

ハリウッド映画への出演を通して、香港映画のスターが世界に“再発見”されている。

今年、多くの映画ファンを虜にしたのが『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で魅力的なヴィランを演じたトニー・レオンだ。悪の組織を率いるカリスマ性と、亡き妻への愛に囚われた悲しみ、複雑な感情をたたえた憂いあるその表情に堕ちた人が世界中で続出。若い頃からその色気でファンを魅了してきたトニーなので、年季が入ったファンからは「30年遅いよ!」との声が聞こえてきそうだが、メイクの効果や役柄の魅力を抜きにしても、衰えないスターのオーラと、あふれる現役感に驚かされた。

『シャン・チー/ テン・リングスの伝説』 (C)2021 MARVEL

ハリウッド映画で実績のある香港のスターといえば、同じく『シャン・チー』で主人公の伯母を演じたミシェル・ヨーがその筆頭だろう。ミス・マレーシアから女優の道に入り、香港に渡ってアクション女優として活躍。『ポリス・ストーリー3』(92)や『宋家の三姉妹』(97)など幅広い作品に出演。『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(97)ではボンド・ガールに抜擢された。アジア系のスタッフ・キャストがメインの作品として異例の大ヒットとなった『クレイジー・リッチ!』(18)ではヒロインの恋人の母親を好演。来年公開予定の主演作『Everything Everywhere All at Once(原題)』はA24の製作で、移民の女性が大暴れするSFコメディ。『アバター2』にも出演しており、快進撃が止まらない。

ミシェル・ヨー Photo by Mike Coppola/Getty Images for Turner

ブルース・リーやジャッキー・チェンのような世界的スターを生んだ香港のスターに求められるのは、やはりアクション。ミシェルは前述したようにアクション女優として頭角を現し、トニーもアクションの経験は豊富だ。

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16)で“宇宙最強”の称号を手に入れたのはドニー・イェンだ。計算され尽くされた華麗で力強いアクションに世界が瞠目。今年は人気シリーズ『ジョン・ウィック4』を撮影しており、公開が待たれる。香港アクション映画界を牽引してきたベニー・チャン監督の遺作『レイジング・ファイア』でもド派手な戦いを繰り広げるドニー。12月24日の日本公開に期待してほしい。

香港映画全盛期のスターがいまでも第一線に


そんなドニーを相手に、『レイジング・ファイア』で悪役を好演しているのがニコラス・ツェーだ。1980年生まれ。同作と同じベニー・チャン監督の『ジェネックス・コップ』(99)などで注目され、次世代のアクションスターとして期待されたが、近年は中国の料理バラエティ番組で料理の腕前を披露したり、スイーツ店をプロデュースしたりと、すっかり料理上手なタレントのイメージが定着していた。しかし、『レイジング・ファイア』では善から悪へと墜ちていく男を凄みのある演技で表現。アクションシーンもキレのある動きでこなした。香港や中国で大ヒットした理由の1つは、間違いなく、ニコラスが進化し、久しぶりにスクリーンで輝いていたからだと思う。

ニコラスももう41歳。その下の世代のスターは?と聞かれると、正直なところ答えに困る。

香港映画界で言われ続けている問題が、若手スターの不在だ。

そもそも年間30本程度しか公開作がない香港映画。全盛期にスターだった世代がまだ第一線でギラギラしており、自ら映画製作会社を創立したルイス・クーのように製作から関わるケースも多いため、なかなか上が空かない。

『プロジェクト・グーテンベルク 贋札王』(18)では還暦超えのチョウ・ユンファと、香港四天王の1人でいまではすっかり実力派俳優としての地位を確立したアーロン・クォックが組み、『男たちの挽歌』ばりのアクションをこなして健在ぶりを見せつけた。若手人気俳優が主役の映画が量産され、ベテランになると助演にまわるパターンが多い日本と比べると、凄いことではある。

中国市場の影響もある。ユンファやアンディ・ラウなど、香港のスターは中国の老若男女にも愛されているため、中国・香港合作の大作ともなれば彼らが主役の企画となり、主人公の妻や恋人のポジションには大陸の女優がキャスティングされるパターンが多いのだ。

スターは生まれなくても、いい俳優は育っている


では、香港に期待できる若手俳優はいないのかというと、そんなことは決してない。

かつてのようなスターは生まれていなくても、しっかり演技で見せられる若手俳優は育っている。

たとえば、『時代革命』のキウィ・チョウ監督による昨年のヒット作『夢の向こうに』(香港映画祭2021で上映)で注目され、現在、香港や中国で大ヒット中のアニタ・ムイの伝記映画『梅艷芳』でレスリー・チャンを演じているテレンス・ラウは、芸術大学で演技を学び、舞台で経験を積んだ実力派。『夢の向こうに』で相手役を演じたセシリア・チョイも演技力を高く評価されている注目の女優。台湾の大ヒットホラー映画『返校 言葉が消えた日』(19)の教師役で注目された“逆輸入”パターンで、今年の台湾金馬奨で最多ノミネートされた香港映画『濁水漂流』にも出演している。

『夢の向こうに』のテレンス・ラウとセシリア・チョイ(提供=香港映画祭実行委員会)

『梅艷芳』でアニタを演じて映画デビューしたルイーズ・ウォン、日本・香港合作映画『二人小町』にも出演しているハンナ・チャンのようにモデル出身で雰囲気のある新世代にも期待がかかる。香港映画のDNAは、確実に受け継がれている。


<『シャン・チー/テン・リングスの伝説』リリース情報>
・デジタル配信中
・MovieNEX発売中
『シャン・チー/テン・リングスの伝説 MovieNEX』(税込4,950円)
『シャン・チー/テン・リングスの伝説 4K UHD MovieNEX』(税込8,800円)
《text:Rie Nitta》

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