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黒沢清監督作や日本初上映作など19作品上映「建築映画館2023」開催

建築という視点から映画を考える映画祭「建築映画館2023」が2月23日(木・祝)~26日(日)開催決定。

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「建築映画館2023」
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  • 「建築映画館2023」
  • 『クリーピー』 -(C)2016「クリーピー」製作委員会
  • 『11 × 14』
  • 『Renee's Sweetness』 (映画「1,2,3 Rhapsody」より)
  • 『農村住宅改善』
  • 『ARCHITECTURES JAPONAISES(日本の建築)』
  • 『プロパティ』
  • 『WVLNT (Wavelength For Those Who Don't Have The Time)』Courtesy of Canadian Filmmakers Distribution Centre

建築という視点から映画を考える映画祭「建築映画館2023」が2月23日(木・祝)~26日(日)にアンスティチュ・フランセ東京にて開催決定。建築に関する映画19作品を、《都市》《構造》《図面》《建築と人物》《アーカイブ》の5つのテーマに分けて上映する。


ガス・ヴァン・サントに影響与えた『プロパティ』日本初上映


1970年代のポートランドで地域の再開発から生活を守ろうとする住民たちを描いたインディペンデント映画『プロパティ』は、若き日のガス・ヴァン・サントが録音技師として参加、ケリー・ライカートなどの次世代の独立系映画作家に影響を与えたとして近年再評価されている。

『プロパティ』

また、映画がどのようにロサンゼルスを映してきたかを膨大なフッテージをもとに辿る、壮大な映画エッセイ『ロサンゼルスによるロサンゼルス』(2003-2014)は日本初の字幕付き上映。

さらに、2023年1月5日に急逝した実験映画の大家マイケル・スノウ唯一の劇映画『SSHTOORRTY』など、滅多に上映機会のない貴重な作品が続々。さらには黒沢清や溝口健二といった日本劇映画の巨匠や、ジェリー・ルイスのコメディもラインナップに揃え、製作国、時代、ジャンルまでバラエティに富んだ作品群を「建築」という視座から見直す。

映画祭初日には、「現代建築映像にまつわる対話」と題したオープニングイベントを行い、現代を生きる建築映像作家らの作品上映を交えながら、建築家とのトークショーを実施。そのほかにも、会期中は美術監督、建築家など映画・建築双方の分野からゲストを招待したトークショーを上映と併せて開催するという。


《都市》


人間の認識が及ばないほどに、概念や認識が無数に折り重なった都市の全体像を捉える方法のひとつとして映画がある。映画は自らが生み出した都市像を人びとに伝え、現実の都市へと影響を及ぼすことも。映画をつくる行為を通じて現実の都市へと接続する2作品を選出した。

『ロサンゼルスによるロサンゼルス』courtesy of Cinema Guild

『プロパティ』★日本初上映★
1979年、88分、デジタル 監督・脚本・製作:ペニー・アレン
1970年代のオレゴン州ポートランドで、急激に進むジェントリフィケーション(都市の高級化)から自分たちの生活を守ろうとする住民を描いた地域映画。都市計画に対するマニフェスト的な作品であり、その後のポートランドの変化と併せて考察したい。監督のペニー・アレンは70年代アメリカのインディペンデント映画シーンを先導した女性であり、ガス・ヴァン・サントや次世代のケリー・ライカートといったアメリカ北西部地域の独立系映画監督たちへ与えた影響から、近年その再評価が高まっている。

録音技師として若き日のガス・ヴァン・サントが参加しており、ここでの撮影を通じて彼の初長編映画『マラノーチェ』(1986年)の原作者(本作主演のウォルト・カーティス)との出会いがもたらされたことでも知られている。
上映:2月24日(金)15:40-

『ロサンゼルスによるロサンゼルス』★日本語字幕付き初上映★
2003-2014年、169分、デジタル
監督・調査・テキスト・製作:トム・アンダーセン数々の作品の舞台となってきた都市・ロサンゼルス。これまでロサンゼルスで撮影された200本以上の映画フッテージを用いて、ロサンゼルスという都市が映画の中でどのような背景や被写体であったかを分析した映画エッセイ。

映画のサイレント期から現代まで約100年にわたり、映画と都市が互いに影響を受けながら発展してきたことを明らかにしようとする。2014年に新たにリマスターと再編集、膨大な数の映像引用に対する著作権処理がクリアされ、商業公開とソフト化が可能となった。監督のトム・アンダーセンはロサンゼルス在住の映画監督・映画批評家・教育者であり、カリフォルニア芸術大学で長年にわたり映画分野の教員をつとめている。
上映:2月26日(日)15:50- ※途中休憩5分あり


《構造》


構造映画とは、ショット構成や物質的な支持体であるメディア(フィルムやビデオテープ)など、映画を成立させるための構造それ自体を主題とした映画を指す言葉である。これらの構造への操作によって喚起させられる空間体験が、建築と密接に関わる作品を上映する。

『11×14』

『11×14』
1977年、81分、デジタル、監督:ジェームス・ベニング
「構造映画」の余波の中で製作された、ジェームス・ベニングによる初の長編映画。アメリカ郊外を捉えた65の静的なショットで構成されている。物語を超えて構図・色・テクスチャ・画面の内外の関係を映し出し、映画を見る側の自発的な空間への注視をうながす。
上映:2月23日(木・祝)16:50-

〈短編セレクションA〉マイケル・スノウ作品集(56分)
マイケル・スノウによる2000年以降のビデオ作品群。空間に対して複数の時間が重なり並行していく『WVLNT』『SSHTOORRTY』、配置された物や人物への画像変形処理によって空間性が変化する『The Living Room』、映像的な操作によって空間が顕在化する3作品を上映する。
上映:2月23日(木・祝)19:00-


《図面》


映画を分析・批評する目的で、映像の情報をもとに図面(主に平面図)を描き起こす方法が存在する。図面というフォーマットにより、映画に一人称ではない視点が与えられ、俯瞰的な議論の下地となる平面が生まれる。そうした映画の図面分析を通して、映画と建築の関係性を再考しうる作品を上映する。

『底抜けもててもてて』Images Courtesy of Park Circus/Paramount

『底抜けもててもてて』
1961年、96分、デジタル
監督・製作・脚本・出演:ジェリー・ルイス
ジャン=リュック・ゴダールにも影響を与えたスラップスティックの名手ジェリー・ルイスによるコメディ映画。4階建ての女子寮のセットを断面から捉えた現実の空間では不可能なカメラワークとともに繰り広げられる取り留めのない物語が、セットという建築物によって、ひとつの映画へと繋ぎとめられる。
上映:2月25日(土)14:20-

『雪夫人絵図』
1950年、88分、35mm 監督:溝口健二
熱海の名邸・起雲閣で撮影された、旧華族の夫人、放蕩夫、夫人を慕う男が織りなすメロドラマ。後に『西鶴一代女』(1952年)で国際的評価を高めていく溝口健二の監督作。物語の流れに沿って効果的に建築の部分を映し出す手腕に着目し、再評価を試みる。美術監督・水谷浩が手掛けるセットにも注目。
上映:2月25日(土)12:10-

『クリーピー 偽りの隣人』
2016年、130分、デジタル 監督:黒沢清
建築物の配置がストーリー上の重要な要素として登場するサスペンススリラー。撮影時も現場の俯瞰図のなかに役者の動線を描き込みながら演出をつけていくという黒沢清。その監督作品のなかでも、空間構成と物語の構成が互いを利用しながら展開していく本作を、改めて図面とともに見直す。
上映:2月25日(土)16:40-


《建築と人物》


ある特定の人物がその映画に関わっていることが大きな意味をもつ映画をとりあげる。ここで言う人物は、映像を撮った人物の場合もあれば、映像に映る人物の場合もある。その人物は建築的な言葉でいえば、施主である場合もあれば、利用者である場合も、もしくは設計者である場合もある。こうした人物と建築の関係をめぐって、上映プログラムを選定した。

『Koolhaas Houselife』© BEKA & LEMOINE

『Koolhaas Houselife』
2017年、58分、デジタル 監督:イラ・ベカ、ルイーズ・ルモワンヌ
OMAの設計によって1998年に竣工した「ボルドーの住宅」を、その掃除をする家政婦の所作を追いかけることで描き出した作品。世界で活躍する建築映画作家ベカ&ルモワンヌの処女作にして傑作。
上映:2月24日(金)14:00-

〈短編セレクションB〉近現代建築と運動(上映51分+トークショー)
マン・レイが住宅建築を舞台に製作した映像や、ル・コルビュジェによるモダニズム建築のプロパガンダ的映像作品『今日の建築』、本邦初公開となるOMA設計の「ヴィラ・ダラヴァ」竣工直後の映像作品『Silent Witness』など、建築家の設計による建築物を撮影対象とした映像作品を中心に、「運動」という共通のテーマのもと上映を行う。
上映:2月24日(金)17:50-

『サイコロ城の秘密』1929年、26分、デジタル 監督:マン・レイ
『今日の建築』1930年、10分、デジタル 製作・撮影:ピエール・シュナル
『Silent Witness』★日本初上映★ 1992年、12分、デジタル 撮影・編集:クラウディ・コルナース、編集:ハンス・ヴェールマン
『Renee’s Sweetness』(映画『1,2,3 Rhapsody』より)1965年、3分、デジタル 監督:1,2,3グループ(レネ・ダルダー、レム・コールハース、ヤン・デ・ボン、キース・メイヤーリング、フラン・ブロメット)


《アーカイブ》


映画の保存・継承は、映画フィルムのなかに遺されてきた様々な建築空間を、時間や場所を超えて体験することを可能にしてくれる。スクリーンを通して、映画によって建築を記録/伝達するこれまでの試行をその黎明期から見つめ直す。

『出合いの街 集住体──パサディナ・ハイツ』 画像提供:NPO法人戦後映像芸術アーカイブ

『チセ・アカラ ──われらいえをつくる』[日本語版]
1974年、57分、デジタル 監督:姫田忠義
消えてしまったアイヌの伝統的な家づくりとその文化的背景を伝えるため、アイヌ文化研究者の萱野茂がアイヌの青年たちと2軒の民家をつくる様子をとらえた貴重なドキュメンタリー。宮本常一に師事し日本各地の消えゆく生活文化を記録し続けた姫田忠義が監督を務めた。日本語版にくわえて英語版とアイヌ語版が存在する。
2月26日(日)12:00-

〈短編セレクションC〉建築メディアとしての日本映画 (計65分)
建築が映画の主題として扱われた日本映画4作品を紹介。リサーチ(『農村住宅改善』)や設計・プレゼンテーション(『コミュニティ・ライフ』『出合いの街』)、広報(『ARCHITECTURES JAPONAISES』)といった建築をつくる過程を巡る様々な行為とその映像表現の多彩さに着目する。
2月26日(日)14:00-

『農村住宅改善』1941年、20分、デジタル 監督:野田真吉
『ARCHITECTURES JAPONAISES(日本の建築)』1937年、13分、デジタル 撮影:三村明
『コミュニティ・ライフ』1972年、13分、35mm 監督:松本俊夫、
『出合いの街 集住体──パサディナ・ハイツ』1974年、19分、デジタル 製作・演出・脚本:松本俊夫

「建築映画館2023」は2月23日(木・祝)~26日(日)アンスティチュ・フランセ東京にて上映。

《シネマカフェ編集部》

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