イタリア映画史に異彩を放つ映像作家、ミケランジェロ・フランマルティーノの特集上映「ミケランジェロ・フランマルティーノの驚くべき世界」が6月19日(金)より開催されることが決定。3作品のポスタービジュアルと場面写真、特集上映のティザー予告編が解禁された。
ミケランジェロ・フランマルティーノ(Michelangelo Frammartino)は1968年ミラノ生まれ。ミラノ工科大学建築科にて物理空間と視覚イメージの関係を探求し、インスタレーション作品や短編映画を制作した。
建築家としての視座と現代美術的手法を映画に持ち込み、「スロー・シネマ」の旗手として国際的評価を確立している。対話をほとんど持たない映像言語、固定カメラによる長回し、自然音を主体とした音響設計によって、人間中心主義を超えた独自の映画世界を構築する。
カンヌ、ヴェネチア、ロカルノをはじめとする世界の主要映画祭でも高く評価される現代映画の最重要作家の一人だ。

上映されるのは、2003年のデビュー作で日本初公開の『おくりもの』(4Kレストア版)、2010年公開の『四つのいのち』、そして2021年製作の最新作となる『地底への旅』の3作品。
『おくりもの 4Kレストア版』

『おくりもの』(4Kレストア版)は、監督の実祖父アンジェロ・フランマルティーノを主演に迎え、人口流出によって廃村寸前のカラブリアの小さな村を舞台に、老いた男の最期の日々を独特のユーモアを持って静かに見つめる作品だ。



プロの俳優を一切使わず、土地に生きる人々とともに撮影された本作は、「伝統と現代性」「生と死」「共同体と孤独」という普遍的なテーマを、対話をほとんど持たない80分の映像詩として結晶させた。
2000年代初頭の「スロー・シネマ」ムーブメントの重要な一作として、2025年7月にN.Y.のメトログラフ劇場でリバイバル上映が行われるなど、映画史的再評価が進む傑作でもある。
『四つのいのち』

『四つのいのち』は、老いた羊飼い、一匹の子ヤギ、巨大な樅の木、そして炭──カラブリアの山村で静かに営まれる生の循環を、セリフをほとんど用いずに描き出した比類なき傑作。



第63回カンヌ国際映画祭監督週間でスタンディングオベーションを浴び、ヨーロッパ・シネマ・ラベル賞およびパルム・ドッグ賞(子ヤギのヴクに対して)の2冠に輝くなど世界中の批評家を熱狂させた。
人間を世界の中心に置かない、ラディカルなまでに平等な視点で、羊飼いの臨終から子ヤギの誕生へ、樅の木の伐採から炭焼き窯の煙へと、ピタゴラス派の「四つの転生」の思想に基づく構成の中で、人間、動物、植物、鉱物が同じ重みで映し出される。
『地底への旅』

『地底への旅』は日本初公開の最新作。『四つのいのち』から11年、フランマルティーノが到達した新たな境地だ。
「地上と地下」「進歩と伝統」「光と闇」を対位法的に描き出す壮大な時間のシンフォニーで、第78回ヴェネチア国際映画祭で審査員特別賞、FEDIC(イタリア映画クラブ連盟)賞、La Pellicola d'Oro Award(ラ・ペリッコラ・ドーロ賞)の3冠に輝いた。


イタリアの高度経済成長期という歴史的文脈を背景に、人間が未知の領域へと踏み込む行為の意味を問う作品だ。
撮影監督は、ゴダール、ロメール、シュミット、オリヴェイラなど数々の名監督との協業で知られる名手レナート・ベルタが務めた。
南イタリア・カラブリアの荘厳な風景や、そこに刻まれる時間の神秘を静謐なカメラワークで描き出す。人間、動物、大地、そして闇。すべての存在が等しく尊厳を持ち、調和の中で生きる様子を映し出すその世界には、誰も見たことがない驚きと畏敬が満ちている。
情報が溢れ、膨大な映像が消費される現代において、ミケランジェロ・フランマルティーノの映画は「見る」という行為の根源的な意味を問いかける。消えゆくものへの惜別、生命の循環、そして未知の世界への探求を描く彼の作品は、観る者の心に静かな驚きと深い余韻を残す。
それは、現実を超えた世界の奥行きに触れる映画体験となることだろう。
「ミケランジェロ・フランマルティーノの驚くべき世界」は6月19日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて順次公開。

