近年、韓国ドラマで強く心を掴まれるのは、誰かに守られるのではなく、自分で人生を切り開こうとする女たちである。迷い、嫉妬し、傷つきながら、それでも毎日仕事へ向かい、人と向き合い、生き延びようとする女性たち。そんな“新時代のヒロイン”を、前回に続いて取り上げたい。
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最近、筆者にとってとりわけ忘れられない存在が、『誰だって無価値な自分と闘っている』のコ・ヘジン(演者カン・マルグム)だ。主人公ではない。恋愛でキラキラ輝くタイプでもない。それでも彼女は、圧倒的な大人の女のかっこよさと泥臭さを見せつける。

ヘジンは映画制作会社「コパクフィルム」の代表であり、映画監督パク・ギョンセ(演者オ・ジョンセ)の妻でもある。かつては記者だったが、他人の不幸を追い続ける仕事に耐えきれなくなり、映画業界へ転身した過去を持つ。
そんな彼女が日々向き合っているのは、夢と現実の間で壊れかけた映画人たちだ。20年間デビューできない映画監督志望のファン・ドンマン(演者ク・ギョファン)、劣等感に飲み込まれていく夫ギョンセ、そして口だけで他人を批判し続ける業界人たち。

ヘジンは時に、ドンマンに自身が運営する、映画関係者が集う店への「出入り禁止」を言い渡したり、「リングに上がって叩きのめされてこい」と突き放す。それは冷酷だからではない。現実から逃げ続ける人間が、最後には自分自身をもっと嫌いになることを知っているからだ。
ヘジン自身もまた、理想だけでは生きられない現実の中で、自分の無価値感と闘い続けている。女社長という肩書の裏で、人の才能や人生を引き受けながら、胃が痛くなるほどの責任を背負って踏ん張る“現場の人”なのである。

若さや勢いだけで突き進める年齢でもない。多くの女性が心身の変化を感じ始める年代にありながら、自分の不安や疲れを脇に置き、会社を回し、人を育て、問題ばかり起こす男たちを束ねていく。
圧巻だったのが第8話だ。ヘジンは、いつものように延々と屁理屈を並べるドンマンの話を黙って聞いていたヘジンは、突然ビール瓶を机に叩きつけ、場を凍りつかせる。そしてドンマンのシナリオ『天気をお作りします』を制作すると決めた。
「リングに上がって、一度叩きのめされなさい。逃げられないよ」
このセリフが凄まじかった。ドスがきいていた。ドンマンとヘジンの表情を何度も対比させるカメラワークも秀逸で、ヘジンの迫力をさらに際立たせていた。

さらに彼女はドンマンから夫の悪口を聞かされると、「(ギョンセは)また書いて、また撮る。ボロボロになってもリングに戻る。そのエネルギーは必ず観客に伝わる」と夫の本質を言い当てる。何度傷ついても、自分を見捨てず、もう一度リングに戻れるか。その姿勢こそが人を動かすのだと、ヘジンは知っているのだ。
演じるカン・マルグムの存在感が素晴らしかった。大学卒業後、会社員を経て遅咲きのデビューを果たし、『チャンシルさんには福が多いね』(2020)で高く評価された。本作では、疲れや諦めを抱えながらも、決して立ち止まらない女性像を見事に体現していた。
怒鳴るシーンですら、ただ感情的なのではなく、「この人は何度も傷ついてきたのだ」と伝わってくる。穏やかな微笑みから一転、怒りと軽蔑をにじませ、腹の底から声を張り上げる。その表情の変化も見事だった。
私たちの日常は、誰かと比べては落ち込み、自分の価値がわからなくなる。SNSを開けば、他人の成功ばかりが目に入る。そんな時代に、『誰だって無価値な自分と闘っている』は、“無価値感を抱えること”そのものを否定しない。むしろ、不格好にもがき続ける人間を肯定している。
最近の韓国ドラマには、ヘジンのような「自分を見捨てない女」が増えている。派手な成功よりも、不器用に踏ん張る姿にこそリアリティがある時代なのだろう。彼女の不器用で真っ直ぐな生き方は、今日もまた、自分自身の無価値感と闘う私たちの背中を、力強く押してくれる。
(文=田名部 知子/Xで気ままなソウルの日常を発信中:@t7joshi)
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