『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』で、イ・ジャンヒョンを演じるナムグン・ミン。その存在感は圧倒的で、静かなまなざしひとつ、声のトーンひとつで人物の痛みや愛情を伝えられる俳優であることを改めて印象づけた。
【写真】新ドラマ撮影中のナムグン・ミン、感嘆誘う姿に「この鼻筋は反則」
もともとナムグン・ミンは、作品ごとにまったく違う顔を見せることで知られてきた俳優である。冷徹な悪役も、クセの強い変わり者も、繊細なロマンスの主人公もこなせる。
しかも、どの役でもただ器用に演じるのではなく、その人物を“その作品の中でいちばん生きている人”に見せてしまう強さがある。だからこそ『恋人』の成功も、単なるヒット作出演にとどまらず、ナムグン・ミンという俳優の現在地を示すものとして受け止められたのである。

そんなナムグン・ミンの近況としてまず触れたいのが『ザ・ハズバンド』(原題)である。
韓国では7月からテレビ局KBSで、日本では動画配信サービスのディズニープラスでの配信が決まっているこの作品は、誘拐された妻を救うため、冷酷な犯罪者と向き合わざるを得なくなった男を描くロマンティック・スリラー。
ナムグン・ミンは、脳外科医から病院長へと転身したカン・テジュ役を演じる。愛する人を救うために極限へ追い込まれていく男という設定だけでも、彼の持つ緊張感ある演技と非常に相性がよさそうだ。
相手役にはイ・ソル、監督は『ハイパーナイフ 闇の天才外科医』のキム・ジョンヒョンが名を連ねており、2026年の話題作のひとつとして注目されている。
興味深いのは、『ザ・ハズバンド』で彼が演じるのが、医師としての知性と、夫としての切実な感情をあわせ持つ人物だという点である。
ナムグン・ミンはこれまでにも、頭の切れる人物や冷静さの裏に感情を隠した男を演じるたびに強さを見せてきた。今回もまた、理性と感情のあいだで揺れる複雑な主人公像が期待される。派手なアクションだけではなく、追い詰められた男の内面をどう見せるのか。その一点だけでも、ファンの期待は高まるはずだ。
『恋人』で彼を見て惹かれた人にとって、今のナムグン・ミンは“あの名演の人”で終わる存在ではない。むしろ、作品を重ねるごとに新しい魅力を更新し続ける俳優である。時代劇で深い余韻を残したかと思えば、次はスリラーで張りつめた空気をまとって戻ってくる。その自在さこそが、ナムグン・ミンのいちばんの強みなのだろう。
文=森下 薫


