死んだ妻が掃除機の姿で帰ってくるタイ映画『ユースフル・ゴースト』の公開を記念して、“人間ではない存在との切実な愛の形”を描いた作品を紹介。
『ユースフル・ゴースト』

粉じん公害が深刻化するタイ・バンコク。妻・ナット(ダビカ・ホーン)を呼吸器疾患で亡くしたマーチ(ウィットサルート・ヒンマラート)は悲嘆に暮れる日々を送っていた。ある日、ナットの魂は掃除機に宿るかたちで舞い戻り、再び愛を確かめ合う。そのころ、家族が経営する工場では、死亡した従業員の霊が機械に取り憑き、操業停止に追い込まれていた。霊に悩まされる家族や社会から拒絶されたナットは、工場の除霊に協力することで、夫への真実の愛、そして自らの存在を“役に立つ幽霊”だと証明しようとするが…。

怪談「メー・ナーク・プラカノーン」(死後も現世にとどまり、夫と禁断の愛を深めていった女性“メー・ナーク”にまつわる物語)に着想を得た本作。奇抜な設定の裏側にあるのは、人間社会の価値基準や倫理がいかに恣意的なものであるかを浮かび上がらせると同時に、「記憶すること」がひとつの抵抗ともなり得ることを示唆している。また、様々なジャンルを軽やかに横断しながら、環境問題や労働、政治的抑圧といった現代社会の歪みに鋭く切り込んだ。
そして、2025年カンヌ国際映画祭<批評家週間>にタイ映画として初選出&グランプリ獲得、アカデミー賞(R)国際長編映画賞タイ代表に選出、各国メディアから「ジャンルでは括れない」「驚くほど独創的」と異例の注目を集めた。
『her/世界でひとつの彼女』

舞台は近未来の都市。代筆ライターのセオドアは、声だけで存在する人工知能OS・サマンサの声に惹かれ、恋に落ちていく。彼女は誰よりも優しく、誰よりも自由だった。やがて2人の関係は、単なる人間と機械を超えた深い愛へと変わっていく。しかし、その先に待ち受けるのは――。

『かいじゅうたちのいるところ』のスパイク・ジョーンズが監督した本作は、AIに恋をした男を描き、“愛とは何か”を静かに問いかける傑作。
セオドアはホアキン・フェニックスが演じ、スカーレット・ヨハンソンがサマンサの声を担当している。
『コープスブライド』

19世紀の英国。森で結婚式の誓いを練習していた青年ビクターは、誤って死体の花嫁エミリーにプロポーズしてしまう。その瞬間、彼は死者の世界へと連れ去られ、そこで出会ったのは“結婚相手に騙され、殺された花嫁”だった――。

ストップモーション・アニメーションで撮影された、ティム・バートンとマイク・ジョンソンの共同監督作。パペットアニメーションで生み出すゴシックなおとぎ話の世界は、ユーモアと悲哀が同居する独特の美しさに満ちている。
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』
世界の片隅で静かに暮らす吸血鬼のアダムとイヴ。何世紀にもわたり生き続け、人間社会から距離を置きながら、互いだけを支えに存在してきた。しかし、永遠であるはずの時間の中で、世界はゆっくりと変質し、愛もまた形を変えていく…。

ジム・ジャームッシュ監督が描く、ロマンチックでありながらも退廃的な時間に侵食される愛の物語。
アダムとイヴをトム・ヒドルストン、ティルダ・スウィントンがそれぞれ演じているほか、ミア・ワシコウスカ、アントン・イェルチン、ジョン・ハートも出演している。
『ユースフル・ゴースト』は7月10日(金)より公開。




