明治40年。地図の測量手として、実績を上げていた柴崎は、突然陸軍参謀本部から呼び出される。 「日本地図最後の空白地点、劔岳の頂点を目指せ」 。当時は、陸軍参謀本部に所属している陸地測量部が日本国内の測量を行い、数多の山頂に三角点を設置、地図を作ってきていた。宗教登山の目的以外では、ほとんどの山は陸地測量部によって初登頂されてきたが、未だに登頂されていないのは劔岳だけ。また、創立間もない日本山岳会の会員も剱岳の登頂を計画しており、軍としては、山岳会に先を越されることを許すわけにはいかなかった。 柴崎は、その命を受け、剱岳付近に詳しく、人柄も優れた案内人・宇治長次郎らとともに、未踏峰の劔岳の登頂に挑む――。『八甲田山 死の彷徨』『富士山頂』などで知られる新田次郎の同名小説が原作。
木村大作