1920年代、N.Y.カーネギーホールではひとりの男に惜しみない拍手が送られていた。その男とは、数々の難曲を生み出し、超越的な技巧で自ら演奏をこなす“ピアノの魔術師”と呼ばれた20世紀最大の作曲家、セルゲイ・ラフマニノフである。混乱のロシアから亡命し、アメリカで成功した彼だったが、やがて作曲に行き詰まり日に日に憔悴していく。そんなある日、彼の元に贈り主不明の白いライラックが届く。その甘い香りを嗅いだ瞬間、かつての情熱的な恋の記憶が蘇り、ラフマニノフの中に再び一つの旋律が生まれようとしていた…。
cocoレビューを見るパーヴェル・ルンギン