日本最東端に位置するロシア国境の町、根室。冬枯れの荒野に、第二次世界大戦時に作られ、いまは潮風にさらされるがままの朽ちたトーチカが点在している。そこにひとり佇む男。その光景を偶然目にした女。男から語られるトーチカにまつわる小さな記憶。やがて2人はトーチカのなかに隠された、誰にも知られることのない時間の深みへとゆっくり下りてゆくのだった――。
松村浩行