ベルリンの壁崩壊の9年前の1980年夏、旧東ドイツにひとりの美しい女医・バルバラがやって来た。かつては大病院に勤務していたが、西側への移住申請を政府に撥ねつけられ、秘密警察(シュタージ)の監視付きでこの地に左遷されてきたのだ。西ベルリンにいる恋人・ヨルクとの秘密の逢瀬や、自由を奪われた毎日に神経がすり減っていく。そんなバルバラの心の支えとなるのは患者への献身と、医者としてのプライド。それと同時に、新しい病院の同僚・アンドレの誠実な医師としての姿に、尊敬の念を越えた感情を抱き始めるが、ヨルクの手引きによる西側への“脱出”の日は、刻々と近づいていた――。
クリスティアン・ペツォールト