真冬の長野。小さな鉄道路線の廃止を知って、東京からそれぞれ帰って来る姉と妹。電車の車窓にながれゆく懐かしい故郷の姿を見ながら、姉と妹は父や亡き母などの思い出を胸に、生まれ育った家へと向かう。一方、電鉄会社で車両整備士をしている父は、廃止と時期を同じくして定年を迎え、これまでの人生を振り返り、亡き妻や娘たちへの詫びる気持ちを込めて、家までの道のりを線路沿いに歩いて帰って行く。家が近づくにつれ、父の存在の大きさに気づき、再会をためらう姉と妹。そして父の悔恨。家族が家族であることをつなぎとめたのは、亡き母のあたたかさ、何でもなかった家族の日常、物言わぬ父の愛情だった――。
大谷康之