2008年2月17日、コソボはセルビアからの独立宣言を行い、セルビア政府は強く異議を唱えた―。まだ精神的に大人になりかけで、仮釈放中の身という問題児のルカは、かつては工業地域として栄えながら、いまは荒れてしまった町ムラデノバツ(首都ベオグラードから50kmほどの距離)に住んでいる。閉鎖的な街を毎日うろついてばかりのルカにとって、鬱屈した生活の中で唯一発散できるのは地元のサッカーチームの試合で応援すること。そしてサポーターを仕切るリーダーで親友のフラッシュと、いつも夜中までつるんでは飲んで騒いでいた。ある日、自宅に訪問してきた社会福祉士によって、ルカは家族の秘密を知らされる。それはコソボ紛争で死んだと思われていた父が生きており、ルカを捜しているというのだった。突然の真実に当惑するルカ。何故か母は父の消息について、ひた隠しにしていた―。家族の問題が解決されない中、仮釈放中のプレッシャーや上手くいかない恋の悩みなどでルカは苛立ちを抑えられず、いざこざから地元のサッカーチームでトップクラスの選手の脚を折ってしまう。トップ選手を負傷させたルカを捕まえようと、チームの連中やサポーターたち、さらには友人たちにまで追われるはめとなり、ルカは行き場がなくなってしまう。そんなある日、首都のベオグラードでは、一方的に独立宣言をしたコソボに対する抗議デモが行われ、多くの若者たちもこぞって参加した。ルカも仲間たちとデモに向かうが、信念も無くただ暴れては強奪をして楽しむ仲間たちを見て、ふと我に帰る。「いったい、自分は何者で何がしたいのだ…」と自問自答するルカは、仲間たちから離れ、ベオグラードにいるという父親に会うためバスに飛び乗るのだが―。
イヴァン・イキッチ