害獣駆除会社で働くユクの元に、多額の報酬の仕事の依頼が舞い込む。鉱山として栄えた山間の村で 「白鹿様」と言われる珍しい鹿を秘密裏に撃つこと。普通の鹿と異なる存在が悪い噂になることを危惧し、過疎化した村を切り捨てようとする 町の役人の苦肉の策だった。害のない動物を殺すことに仄かな疑問を抱えつつもユクは村に向かう。山で出会った、故郷に対し複雑な思いを抱 いている村の女性ナギ、その婚約者で木食器職人の羊市、かつて害獣を駆除していたという山小屋に独り住いの男、山の集落で静かに暮らす 人々。連なる山々、生い茂る樹々、ときに赤く色を変える川、白い飛沫をあげる滝壺...圧倒的な自然の中に静かに佇む白鹿がいた。病床の母のために、人々が大切に思っている命を奪うこととは...。
cocoレビューを見る金子雅和