紀伊半島南端に近い、和歌山県太地町。追い込み漁を糾弾した映画『ザ・コーヴ』がアカデミー賞を受賞して以来、この小さな漁師町は世界的論争に巻き込まれた。「くじらの町」として400年の歴史を持つ「誇り」は、シーシェパードを中心とした世界中の活動家たちから集中非難の的となる。ヒートアップする対立が沸点に達しようという 2010年秋、佐々木は太地町を訪れる…。そこでは、マスメディアが報じてきた二項対立――捕鯨を守りたい日本人とそれを許さない外国人という単純な図式ではなく、カメラは賛否に縛られない多種多様な意見を捉えていく。 歴史・宗教・イデオロギー、自分と相容れない他者との共存は果たして可能なのか? いままさに、世界が直面している「ダイバーシティの危機」を克服するヒントがこの映画にはある。
cocoレビューを見る佐々木芽生